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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『契約結婚はじめました~椿屋敷の偽夫婦~』白川 紺子 




寿町四丁目にある通称「椿屋敷」に住む柊一は、若いのに隠居暮らしをしているようだと「若隠居」と呼ばれている。
そんな彼のもとに嫁いできたのは、十九歳の香澄。
新婚で仲睦まじいふたりの間には、しかし秘密が。
ふたりは利害の一致から結婚をした、いわゆる「偽装夫婦」なのである——。

白川紺子さんのオレンジ文庫の新作。
最近白川紺子さんの新刊がハイペースで刊行されている気がして、こんなに贅沢していて良いのでしょうか……(笑)。
ブログに感想を書くには至っていないのですが、コバルト文庫の方の作品もほぼすべて読んでいます。好きです!

今回のこのお話も、とてもとても素敵な一冊でした。読んでいてほこほこと幸せになれる物語。
『下鴨アンティーク』とも通ずるものがある、コバルト文庫よりも上品な少しお姉さん向け少女小説、といった風情。
白川さんが書かれる少女小説と一般文芸の境目のような、ロマンティックさのさじ加減が、私の中で絶妙にぴたりとはまるのです。読んでいてたまらないですよ~きゅんきゅんです。
契約結婚、年の差カップル、伝統のあるおうちの家族の愛の物語、私好みの要素が満載なのも素晴らしい。
椿屋敷というだけあり、椿の花の薀蓄話が各話ごとにふんだんに語られているのも、安定の白川紺子さんタッチでロマンティックで素敵でした。
あと若妻の香澄さんが作るご飯やお菓子の類が全部おいしそうです!(重要)

読みはじめてみると、物語の語り手が「椿屋敷」という「家」だった!という、なかなか衝撃的な出だし(笑)。
今までほぼ読んだことがない設定で、新鮮味があって良かったです。
椿屋敷にとって、柊一は先祖代々見守っている、頭が切れる穏やかでちょっと感情が読めない青年で、香澄さんはそんな彼に嫁いできたばかりの気立てがよく優しい奥さんで、まるで親戚や家族のようなあたたかでちょっととぼけたような感じが読んでいて心地よかった。
表紙の淡いタッチの椿の花々とたたずむ若夫婦の雰囲気がほのぼのあたたかくノスタルジックで、そういうイメージにぴったり。

そんな見守りモードで語られる、柊一さんと香澄さんの偽装夫婦ならではの(?)安定した仲睦まじい生活と距離感、そこからお互い少しずつ気持ちに色がついてゆく様が、読んでいてもう甘酸っぱくてたまらなかったです!
くるくるよく働き柊一さんに尽くす新妻・香澄さんが可愛すぎて、ずっと読み続けて見守っていたい。穏やかで優しくて周囲の人たちにも慕われている柊一さんもいい旦那さんだ。
そんなふたりそれぞれに、偽装結婚に至った複雑な事情の影が、見え隠れしつつなのも、気になりつつ。
こんなに頭が切れるのに女心と自分自身の気持ちには疎い柊一さんが、途中ものすごくじれったくなりつつも!(笑)、おさまりのよいラストで良かったです。

『水曜日の魔女』
茉優ちゃんいじましくていいこだな……。姉妹の関係って、大人になっても、確かにこういうことあるよねっと読んでいて思いました。離れていた方が上手くいくことがあるというのも分かる。
ママレード入りマフィンや鶏の南蛮漬けがおいしそう。「疲れた時にはお酢を使ったものを」と香澄さんの心遣いにきゅんとしました。

『月の光』
在りし日の恋人たちの思い出を高校生のふたりと柊一たち夫婦で紐解いてゆく……という流れが少し切なさ苦さも混じりつつロマンティック。奈穂ちゃんの複雑な想いや後悔がぐっと胸に迫りました。由紀也君もいいこだな。
香澄さんが頑張ったタルトタタンが美味しそうで私も食べたくなってきました。


栗きんとんとモンブランくらい違います、とわかるようなわからないような喩えをする。
「どっちが栗きんとんでどっちがモンブラン?」
「わたしは栗きんとんの方が好きですね」
そういう話ではないような。
「ふうん、僕も栗きんとんが好きだな」

121頁のこの会話がなんだかとってもときめきます……!!


『花いくさ』
香澄さんの婚約者襲来!自体は意外とあっさり解決(?)しましたが、「花いくさ」親友ふたりの結婚騒動は、なかなかシビア。
「仲がよかろうとよくなかろうと、離れられない間柄」というのは、なんか、なんとなく、分かる。
椿がカギになっていた幼い日の想いが明らかになる場面が、表面的な騒動の奥から深く美しい色がじわじわとにじみ出てきたかのような、ぐっとくるものがありました。みんなそれぞれ辛くて苦しくて切ない。
歩美さんが香澄さん達のお鍋に救われた場面も印象的で、分かるわかる。彼女も吹っ切れたようで本当に良かった。
あと絢さんがいろいろ格好良すぎました。エッグノッグもおいしそうだなあ。

『追憶の椿』
笙子さんの急襲、若夫婦に暗雲が。
笙子さんはかなり強烈なおばさんでしたが、彼女はどことなく『赤毛のアンシリーズ』のマリラを思わせるものがあって、なんだか、読んでいて不思議な親しみが。いつも無条件で優しかったマシュウは違い、厳しく現実的で頑固だけれど人一倍情が深く、不器用ながらにアンに愛情を注ぎ続けたマリラ。香澄の複雑な気持ちも分かるし色々ありましたが、最終的にはあのかたちで落ち着いて、良かったな。
柊一さんの女心の分からなさはちょっと致命的でした(苦笑)。香澄さんも強く出られないからもどかしいこと!
檀くんと柊一さんの間の複雑な想いも、そういうことか……。ううん、こちらもどちらの気持ちも分かるし、やるせない。そんな確執があってなお現在お互い仲良くしているこのふたりがいいなあ。
電話でのやり取りから香澄さんがいなくなって寂しい柊一さんの姿から、色々もどかしい。
あとラスト、笙子さんと晶紀さんが主に柊一さんにちくちく嫌味めいたことを口にしている場面に笑っちゃいましたし、端々に香澄さんへの愛を感じて、きゅんとしました。
晶紀さん、婚約者であった香澄さんがこういうことになってあっさり引き下がりそのままか……と思いきや、実は長期戦の心づもりだったのか?あ、侮れない……。
まあこの煮えきらない柊一さんをたきつけるには、これくらいずけずけ言ってもらえるくらいでちょうどよかったんじゃないかしら、と思いました(笑)。
檀君の千鳥屋のどらやきのお土産にもほっこり。

『すみれ荘にて』
番外編。
うわああ、檀君頑張れ……!!
彼も想いが報われてほしいな。

もっとこの若夫婦を見守っていたいですし、周囲の人たちのことも気になりますし、柊一さん自身の仕事の話も具体的に読んでみたいですし(なんだか今回ほとんど具体的に語られていないような)、できれば続きが読みたいです。読めると嬉しいなあ。
ひとまず来月は『下鴨アンティーク』の新刊が読めるとのこと、今からたいへん待ち遠しいです。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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