Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず』石田 リンネ 




後宮の女官の娘・茉莉花には、「物覚えが良い」というちょっとした特技がある。
そんな彼女がひょんなことから引き受けたのは、さる名家の子息のお見合い練習相手の、さらに代役。
しかしいざその場にやってきたのは、なんと白楼国の若き皇帝・珀陽その人であった。
その「才能」を珀陽に見初められた茉莉花は、科挙試験を受けるため、太学に入り男子に混じって勉強の日々を送る羽目に——。


『おこぼれ姫と円卓の騎士』シリーズの完結巻と同時に刊行された、石田リンネさんの新作少女小説。
二つの作品の交換小話ペーパーが読めるということで、同時に購入。読みました!

ちょうど中華風の少女小説を読みたい気分だったのと、あと私「茉莉花」という花と、花の名前の響きが好きで。(ジャスミンという名の響きも好きで、実際の花や香りともイメージが上手い具合に重なり合って雰囲気があるのがまた好き)
色々私の中でもタイミングよくヒットして、楽しく読むことができました。
真面目で努力家の女の子がヒロインで頑張るお話はとても私好み。

「物覚えが良い」という特技を持つ女官の茉莉花と、彼女のその特技を見初めた皇帝・珀陽の物語。
茉莉花がその才能を磨き、官吏を目指して頑張る立身出世物語の、序章の部分と言うところでしょうか。

過去の苦い経験から本気を出さず周囲に合わせて生きてきた茉莉花が、珀陽と出会って半ば巻き込まれて色々な困難を潜り抜け、それまでの地味な努力も生かしつつ才能を開花させていく様が、読んでいてとても清々しく、良かったです。
特に茉莉花が自分の中の枷を克服し、勉強の楽しさを見出し、少しずつ自分の才能を使いこなしてゆく後半パートが、生き生きとして読んでいてとても楽しかった。
でも前半パートの茉莉花の心の屈折や気弱に悩む姿、周囲の風当たりの強さなど、すべて乗り越えてきたからこそのもので、たくさんの地道な積み重ねが次第に実を結んでゆくという、派手ではないけれど誠実で緻密な作りが、いかにも『おこぼれ姫』の作者さんらしくて、こういうの良いですよね。
私も勉強が楽しいという茉莉花さんの境地に至りたい……。せめてその姿勢だけでも見習いたいなあ。
あくまで普通の育ちの普通の女の子で悩み立ち止まりもする茉莉花なのですが、真面目で努力家なところ、いざというときの度胸があるところ、優しく思慮深いところ、次第に見えてくる美質がとても格好良かった。
女官と文官と武官の仕事を自分で場を読んで判断してさらっと全部こなして当たり前のような顔している茉莉花の有能っぷりに戦慄しました……。
確かに女官の仕事の経験があって実際にこなせる文官って、最強かも。

あと飄々としたヒーロー珀陽も、今ひとつつかみきれない人ではありましたが、その態度の裏には地位に見合うような果てなき努力、高い地位ゆえの孤独さ、賢さ優しさ、色々な複雑な気持ちが、茉莉花にぽつりぽつりと吐露していくかたちで透けて見えてきて。
自分の意志で自由に行動し意思表示できない彼が、茉莉花と二人きりのときだけにはシンプルに素の自分をさらけ出せているところが、読んでいる私にも素直に好感を持てたというか。良かったです。
イラストの二人の飾らない素直な笑顔がとても素敵でした。
彼が窮地に立たされた地でジャスミンの花を見つける場面が印象的で、なんというか、茉莉花は彼が道端で奇跡のような確率で見出した、清楚で可憐で美しい、彼ひとりの花なのだなあと。
打ち解けていくごとに、お互い肩の力を抜いて語らう、そんなふたりの関係が微笑ましくて可愛らしくて、じんわり癒されました。

脇役キャラですと、茉莉花のライバル(?)春雪君が、なんだかんだあって、最終的には茉莉花のよきパートナー、対等な友人的な存在になっていて、ほっとしました。お互い弱いところまで徹底的にさらけ出してしまったからこそ築けた関係かな。
というか、薄々思っていたけれど、茉莉花もまたレティみたく無自覚に人たらしな女の子なのでは……。方向性は違うかもしれないけれど。今後もこんな感じで一人一人味方を増やしていくんじゃないかしら。とか。
彼も茉莉花とは違った風に成長して頼もしい存在になってゆきそうな予感。
太学の同級生たちも馴染んでみればいいひとたちっぽいし、珀陽の側近たちもあまり出番がなかったけれど優秀でよいキャラしてそうですし、最後に出てきた蘭香さんも素敵に格好いい茉莉花の先輩でしたし、うん、楽しめました。
茉莉花を見出した女官長も、見る目があるお方ですね!

少女小説というには甘さがほとんどないお話でしたが(笑)、まさに「皇帝の恋心、花知らず」と言いますか。サブタイトルにもなっている春雪君への台詞が意味深すぎる。飄々としてその実自分の欲しいものは積極的にぐいぐいおして手に入れてゆく珀陽らしい台詞だな。
確かにこのままでは茉莉花は一生他の男性と結婚させてもらえないんだろうな。うん。
珀陽の気持ちが、茉莉花自身に恋をしているのか、茉莉花の才能に恋をしているのか、現時点ではいまひとつつかみきれなくはあるのですが。
珀陽、中継ぎの皇帝と言っていますが、ラストあたりを読んでいるとそうでもないのかな?という気もしてきますし、そうすると後宮の扱いも今後変わってくる可能性があるということ?うーん?色々と今のところ未知数。
でも珀陽にとって、茉莉花にとって、お互いがお互い唯一の特別な存在であることは、確かなことで。
『おこぼれ姫』もあるかなしかの微糖状態からあそこまでたどり着いた物語ですし、そう考えると、進展がある方向に期待しても、いいですよね。
とりあえずラストあたりを読んでいると、この作品のカップルもまた、恋愛はするとしても仕事の片手間ぐらいにしかできないタイプの二人な感じですしね。

というわけで、この作品、続き出ますよね?ね!
よくよく見たらタイトルがそもそも『茉莉花官吏伝』でしたし、そんなにすぐには終わりませんよね??
珀陽の側近達とかも活躍の場を見たいですし。
いや本当に、長期的にシリーズを追っかけられる少女小説って貴重なのですよ。ロマンスもじれじれじらされて少しずつ増していく甘さを楽しみたいのですよ。期待しています。

ところで『おこぼれ姫』の最終巻がもう本当によくて、この一週間くらいずっと余韻にひたっていた私でした。
レティとデュークのラブラブがもう読んでいて感無量で……ほろりとしつつときめいて仕方がない。
そういえばレティにさりげなくひどいこと言われていたレオンハルト殿下がお嫁さんを迎えるお話とかぜひとも読みたいですね!
石田リンネさん、カクヨムの方の作品も気になっているのです。読まなければ。
あと小冊子プレゼントも忘れずに応募しなければ!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: ビーズログ文庫

タグ: 石田リンネ 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1685-bd89bbb0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)