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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『契約結婚はじめました。椿屋敷の偽夫婦 2』白川 紺子 




「椿屋敷」と呼ばれる一軒家に住む柊一と香澄は仲の良い若夫婦。しかしふたりの内実は、訳ありの偽装夫婦。
ある日、柊一の母・美幸が椿屋敷を訪ねてくる。
香澄は、美幸が自分たちの夫婦の「秘密」に気づいているのではと感ずる——。


白川紺子さんのオレンジ文庫のシリーズもの第二弾。
相変わらず「椿屋敷」という「家」が語り手であるところがユニーク。
ふんわりおだやかで品があって、ちょっと古風で懐かしいような雰囲気が、読んでいてたまらない魅力です。
洗練された文章は、読んでいて凛々しく美しい。
柊一さんと香澄さんの訳あり年の差若夫婦のじれじれも美味しいですし、ご近所の個性的な人達との交流話も楽しい。
そしてなにより若妻香澄さんが次から次へとこしらえる家庭料理やお菓子がどれも手が込んでいておいしそうで、読んでいておなかがすいてきてしまいます。

ちょうど秋の終わりの寒くてものさびしいひとときに読むと、ほんのり心温まる感じで、ちょうどよい。
今はおだやかに暮らしている柊一さんと香澄さんが、苦労してきた過去でそれぞれ心の内に抱えるほんの少しの翳が、隠し味。
ひねくれた思いを抱かずすんなり素直に温かさに浸れます。

椿屋敷で椿愛好家の柊一さんなだけあって、植物の描写はほぼ椿なのも、潔さがあって素敵です。
(その潔さは、椿の花そのもののイメージに通ずるような。)
椿という素材ひとつで、豊かにお話がふくらんでいく様が、いい。
ひとつひとつの品種の名前がまた美しく物語をはらんでいて素敵なのです。

『花の子』
章タイトルと物語の組み合わせが最高に好きです……。父と娘、亡き母親の愛情にぐっときました。
はじめはつんつんしていた桃子ちゃんが、香澄さんに次第に心を開いて懐いていく様が良かった。
最初の飲物の選択から、ホットケーキと朝ごはんのパンのお話、香澄さんの心遣いが秀逸です。
朝ごはんのホットケーキってたまに食べると本当に幸せなんですよねえ。
ちょっと難しいお年頃の桃子ちゃんだけどお父さんのこと本当に好きで案じていて、でもすれ違ってしまっていて、そこをそっと解きほぐした柊一さんと香澄さんの手腕がお見事でした。
晶紀さんのさりげない牽制に敏感に気づく桃子ちゃんはさすが女の子です。
最後の方の、さびしいときとか、かなしいことがあったときには、ご飯のことを考えるんです。あたりの香澄さんと柊一さんの会話がほのぼのこのふたりらしくてとても良いです。
ねぎとじゃこの卵焼きが食べたくて作ってしまった。ねぎの卵焼きって初めて作りましたが美味しかった。

『黄金を君に捧ぐ』
そんな卵好きの私には一層嬉しかった(笑)第二話。
黄金色の大きくてふわふわの玉子焼きを作る幸せ感に、力強く同意します。
奥さんの好みをちょっとずれて解釈してしまった旦那さんと今になって旦那さんの気持ちを知った奥さん、これまたほんのり優しいときめきエピソードでした。
そういえば黄色い椿ってみたことがないなあ。気づきませんでした。
香澄さんが作ったゴールデンケーキというのが気になる。シャルロットもおいしそう。
卵を落とした味噌汁も、味噌漬けのお肉も、さりげなく皆美味しそうなのですよ~。
最後で珍しく柊一さんが香澄さんに料理を教えている(笑)カルメ焼きのエピソードも微笑ましかった。

『星はいざなう』
文代さんと裕美さん、母と娘のふたりでずっと暮らしてきて性格も何もかも承知しているけれど、語らず知らないところもまだあって、なんというかこの関係が私はとても好きでした。
裕美さんが大人になり自立したひとりの女性になったからこそ、対等な関係というか。
文代さんの旦那さん語りに素直に愛を感じられたのは、だからこそかな、と思いました。
それはそうと、柊一さんと過去に関係がいっときあった裕美さん。
まさか香澄さんが契約結婚だとは思っていない裕美さんが、悪気なく香澄さんの弱い部分をちくちくしてしまっている場面が、ちょっと辛かった。そんなに気にすることないよー素直に言葉通り受け取ってればいいんだよーと、読んでいる私は思うのですが、香澄さんには伝わらないですよねえ。
揚げたてさくさくの海老フライの美味しさが伝わってきました。
柊一さんの食の好みを熟知していて、それがいかにとくべつなことかあまり分かっていない香澄さん、香澄さんに自分の好みを自然にリクエストして自然に甘えている柊一さん、なんというか読んでいて甘い……お互い無自覚だからこそよけいに甘い気が。
あと再びの晶紀さん登場。
柊一さんの「渡しません」発言、大人の男二人の開戦発言。
こんなこと言ってる割にいまだに自分の気持ちをはっきり自覚していない柊一さん、大丈夫だろうか……。
晶紀さんと笙子おばさんはふたりとも相当手強いひとだと思うので、ぼんやりしていると、香澄さんそのうち本当にかっさらわれていってしまいそうで、本当に柊一さんしっかりしてほしい。
アルバムの見せ合いっこもほのぼの。香澄さんそういえば一年前はまだ高校生だったんだよな……現代もので十九歳の若奥さんってときどき思わぬギャップにはっとします。

手強いひとといえば、美幸お母さまも。
香澄さん相手にどう出られるのかはらはらしていましたが、実際は、柊一さん自身以上に柊一さんが大切なものをちゃんと理解されていて、この方面には疎い息子を叱咤激励していて、ちょっとほっとしました。
天ぷらや五目寿司に変な意味がなくて良かった(笑)。

『すみれ荘にて—真夏の太陽—』
語り手が「家」だと、予想外の部分で、明らかになってなかった事実がときどき出てくるので、あなどれない。
檀君本当に若いな……育ちがいいな……微笑ましい。廣田君のコミュニケーションスキルというか世渡りスキルの高さと対照的でした。
絢さんと柳田さんとの過去のエピソードも本編とはまた違うテイストのお話で、これも良かったです。

香澄さんはなんというか、相手の心をごく自然に開き打ち解けさせるのが本当に上手いな、と今回思いました。
桃子ちゃんも裕美さんもあと美幸お母さんも、本来なら香澄さんにちょっと警戒心を抱き打ち解けられないような微妙な立場の女の人でも、こう、ふわっと。
言葉にするのが何だか難しいですが、得難い女性だと思います。
こういう性格の律儀な女の子だから、よけいに、遠慮が先立って柊一さんとの契約にしばられてしまっているのですけれど。もどかしいな~。

柊一さんもまた過去にトラウマがあるひとだから(だからこそお母さんにこれだけ心配されているのだろう)、女心に疎いのもまあ分からないではないのですが、真剣に晶紀さん笙子さんが今後脅威になってくるでしょうし、しっかりしてほしいな!
みんなに微笑ましく見守られている今の状態も良いけれど、もっと進んでもいいんですよー!なんて、外野だからこそ言えることですかね。

ああ、それにしても、スコッチエッグもやっぱりおいしそうだな……。

シリーズ三巻目も、あと『下鴨アンティーク』の来月の新刊も、とっても楽しみです。


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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