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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『下鴨アンティーク 白鳥と紫式部』白川 紺子 




京都は下鴨、鹿乃が亡き祖母から引き継いだ蔵の不思議な着物も、残り少なに。
最後の「桜の園」と名付けられた着物は、書置きを残して失踪した野々宮家の女性の持ち物であったという。
「神隠し」に遭ったという彼女の真相、そして鹿乃と慧、良鷹がそれぞれ未来に受け継ぐものとは——。

『下鴨アンティーク』待望の新刊でした。
クライマックスではあるけれど最終巻ではないということで、どういうことだろう?とどきどきしながら読みはじめてみる。

淡いパステルカラーの可愛らしく美しいイラスト入り表紙を開いて読みはじめてみると、暗くて寒い十二月の夜から、ひな祭りのはなやいだ雰囲気の京都へと、私の心は一気にトリップ。
やはりどの頁をとってみてもひとつひとつの言葉まで愛おしくて、読み終えるのが勿体なくちまちま少しずつ読んでいってました。

タイトルも「紫式部」に帰ってきた通り、今までのシリーズの内容もいくつか繋がり、美しくまとまった読後感。
アンティーク着物や自然描写や各種小物づかい、古典文学との絡め方も相変わらずとても素敵でロマンティック。
そして作品の雰囲気や登場人物の言葉遣いが何とも言えずに懐かしくて慕わしくて、読んでいて胸がいっぱいになってしまいます。
ロマンス要素も私好みぴったりで最高です。きゅんきゅんです。

今回は特に鹿乃ちゃんと慧さんがさりげなく甘々すぎて、読んでいてほおが緩みときめきがとまりませんでした……!
実際にラブラブな場面がたくさんあったかというとそうでもないんですが、日常の延長線上のさりげない場面のひとつひとつが、あまい。手をつないだり今までと同じことをやっていても、意味がまるで違うという、ふたり独特の距離感が、心ときめきます。
鹿乃ちゃんといられればそれだけでうれしい、鹿乃ちゃんのごはんを食べられるならなんでもうれしい、とか慧ちゃんのストレートな物言いによろめく(笑)。
最愛の鹿乃ちゃんを取られてしまって拗ねている良鷹が色々な意味で気の毒でしたが。
それでも前巻のなげやりな感じは大分なくなっていて(さすが真帆さんはよく見ている)、やっぱり鹿乃と良鷹は野々宮家の仲良し兄妹で、そういうのを改めてしみじみ実感できたのが、良かったです。
(それでも内心複雑で面白くない良鷹と慧の攻防はなかなか笑えました。ごはん当番とか。かと思えば鹿乃ちゃんに冷たくされて本気でショックを受けている良鷹お兄ちゃんがもう本当に……鹿乃ちゃん可愛いですもんね!)


ではではネタばれ込みで感想を少々。

『雛の鈴』
上にも少し書いた通り、序盤の鹿乃と友人二人のひな祭り女子会の場面が、三人それぞれの着物姿の描写も華やかで美しくて、一気にのめりこんでしまいました……!
笑顔の梨々子ちゃんと奈緒ちゃんにたじろいでいる慧ちゃんがちょっとおかしい。(私も未だにりりちゃんの「あほちゃうん」は強烈に心の中に残っていたりする……)
引千切とははじめてきくお菓子でした。ひなまつりらしい響きでおいしそう。
千賀子さんの事情を辿っていくお話は確かになかなか辛くぐさりときましたが、刺繍のおひなさまの優しい表情、手鞠の鈴のほんのりした音色、お母さんの愛情、色々なものがじんわり灯ってゆくラストで、芙二子さんと鹿乃と慧と良鷹がそれぞれの役目を持って千賀子さんの傷ついた心を解きほぐしていったような感じで、良かったです。
お妃だったのに離縁されたという淡島神の伝説もなんかひどいな……そして淡島神に縋ってきた女性たちの境遇にも思いをはせてしまう。
良鷹作のローストビーフがまたおいしそうです~!!

『桜の園』
野々宮の女たちの受け継いできたもの、受け継がれていくもの、ラストの桜の着物と鹿乃の場面が、とても印象的でした。
桜の花の不思議の描写が美しくていつまでもひたっていたいくらい。
時の流れの大きなスパンに途方もない心地になりました。
確かにこの巻において、鹿乃ちゃんは「巫女姫」なのだなあ、と、いたるところで感じましたっけ。
そして良鷹は民俗学研究とか色々な側面からの鹿乃のサポート役というか、対になる存在。
ふたり兄妹の血のつながりを、確かに感じたのでした。
英子さん、駆け落ちで家を出たというイメージの割には悲壮感がなく生き生きと賢い女性だったのだなあというのが伝わってきて、清々しい笑顔が目に浮かぶよう。
三人で車で吉野に出かけるというのもなんというか象徴的な感じがしました。(鹿乃まで神隠しにあったら困る、と本気で思っているっぽい慧さんに微笑ましさを覚えると同時に彼の不安も分かるというか。あ、そしてもう義弟になるのは確定なんですね。ですよね、プロポーズも済んでますしね)
鹿乃と良鷹合作のオムライスの場面も好きでした。
そういえば、私波津彬子さんのまんが『異国の花守』が昔からすごく好きなのですが、桜の花の受け継がれてゆくイメージは、ちょっとあのまんがのイメージに重なるところがあって、また素敵でした。(金沢が舞台の現代もの少しファンタジー少女漫画です)

『白鳥と紫式部』
締めは良鷹と鹿乃視点が交互にくるスタイルのお話。
良鷹の心持ちの方にも、思いがけない出会いもあり一区切りがついたようで、しっかり物語がまとまったというか、ほっとしました。良かったです。
鹿乃のことだけでなく、両親の死から未だ立ち直れていなかった良鷹の心の傷は、相当だったと思うので。
これまでの良鷹&真帆メインのお話っぽく人間のどうしようもない醜さや翳がおもてにでてくるシリアスなお話だったと同時に、救いもあって、良かった。
利光さんとていさんの過去の恋物語は、切なくてやりきれなかったなあ。『源氏物語』の『藤壺』とは、そういうことか。
幸ちゃんの境遇もやりきれなかったです。
でもお父さんに似て、賢くて確かな目を持っている子だな。
鹿乃ちゃんに懐く幸ちゃんが愛らしかったです。確かに鹿乃ちゃんと幸ちゃん似ている。
良鷹、嫁さんより先に子供をもらうとは、なんというか良鷹らしいというか。まさか白露の言葉がこういうかたちでかえってくるとは思いませんでした(笑)。
良鷹のハンバーグサンドイッチもなんだかとってもおいしそうでした。良鷹が作る洋食は独特のノーブルな?センスがとても彼らしいと思う。
慧さんも鹿乃ちゃんとお料理ちゃんと一緒に作れたみたいだし、良かったです。
あとお菓子の家再び、にもほのぼの。

良鷹と真帆さん、相変わらず甘さは全然なかったのですが、真帆さん以上に良鷹を理解し寄り添えるひとは今後まず現れないと思うので、なんとかくっついてもらえると、私は嬉しいんだけれどな。どうなるんでしょう。
真理子さんも頼もしい女性でした。

白川先生のあとがき、巻末のその後の短いお話、三周年フェアのスペシャルコンテンツ、みんな読みました。みんなよかった。
とりわけ糺の森にて薔薇と春野さんが印象的でした。
確かに亘さんと春野さんはイメージが似ている。

やはりコバルト文庫の少しお姉さん的少女小説として、このシリーズは傑作だと今回も読んでいてしみじみ感じました。
春には番外編が出るとのこと、終わってしまうのは正直寂しくて悲しくて仕方ないのですが、楽しみです~♪♪


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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