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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『左京区桃栗坂上ル』瀧羽 麻子 




父親の仕事の都合で引っ越しばかりだった璃子は、四歳の時、引っ越し先の奈良で、八百屋の娘の果菜と出会う。
仲良くなった璃子と果菜。ふたりのお気に入りの遊びはおままごとで、ときどき付き合ってくれたのが、三歳年上の果菜の兄だった。
璃子が引っ越しで奈良を離れた十年の後も、ご縁はとぎれずつながっていた。果菜、そして京都の大学に進学していた「お兄ちゃん」とふたたび人生が交わる——。


今年最後の読書感想更新は、京都もので締めることにしました。
今年はほんとうにたくさんの京都ものの物語を読んできたなあ。としみじみ振り返って思います。

そんなわけで、瀧羽麻子さんの京都理系男子学生組シリーズ(?)第三弾は、奈良の八百屋の息子・農学部の安藤君のお話でした。
前二作を読んだのがもう数年前で正直色々うろ覚えなのですが、安藤君はそれでもなんとなく覚えてた。
山根君に龍彦君、花ちゃん、寺田君、川本君、読んでいるうちになんとなく思い出してきた。
懐かしい面々に再会した気分。みんな元気そうにその後の人生を歩んでいて良かった!

なんて言いつつも、基本完全独立した物語で、前二作品未読でも全然問題なく読めます。

璃子ちゃんと親友のお兄ちゃん・安藤君が、のんびり二人のペースで絆を育みハッピーエンドにつながるお話の流れがていねいで優しくて、読んでいて心地よくそしてきゅんきゅんでした。
いまどき珍しいくらいの正統派幼馴染ロマンスでした。
瀧羽麻子さんのやわらかくて女性的な筆致で紡がれる、璃子ちゃんと安藤君の幼いころの馴れ初め(?)から、同じ京都の大学で先輩後輩として過ごす研究漬けの日常。ふたりの周りの愛情深く個性的な家族や友人たち。
すべての要素が愛おしくて、読み返すごとにふくふくと幸せ感でいっぱいに。

大人しくて思慮深くて生き物が好きな璃子ちゃんと、子どものころから泰然としてマイペースで研究者肌(おたくというか)な安藤君。
最初は璃子ちゃんが語り手の物語でしたが、次第に安藤君の語りの方がメインになってゆくつくりも、なんだか良かった。
似た者同士で誰から見てもお似合いなふたりが、何年もじれったい関係をつづけてゆくさまの、もどかしくも愛おしいこと!!
璃子ちゃんはあれ、果菜ちゃんとの電話の場面の時点でおそらく自覚していたと思うのですが(あの場面まさに少女漫画チックでとても可愛い)、安藤君の方も、そうとは自覚していなくても、ずっと璃子ちゃんは、とくべつな女の子だったんだと思います。
じわじわ重ねてきた想いが。

なんといっても、鰐に襲われた(と勘違いした)璃子ちゃんを、とっさに守るために飛び出した安藤君、その後の鍋パーティーで友人たちに指摘されてようやく自分の気持ちに気づく安藤君、あの場面が彼ららしくって、とても好きです。
直前まで恋のお話と言うより鰐のモモちゃんをかばい続けていた璃子ちゃんが可愛くてちょっとおかしみがある。

あと幼き日のおままごとで、璃子ちゃんと安藤君がお母さんお父さん役をやっていたのも、カラスに襲われた璃子ちゃんを安藤君が追っ払ってそのあとの璃子ちゃんの台詞も、修学旅行で果菜ちゃんと再会できず涙にくれた璃子ちゃんに安藤君が気づいたのも、幼き日の何もかもが、降り積もってふたりの幸福な思い出に集約されてゆくのも、良いですねえ。ときめきますよねえ。
お互いを呼ぶのが「お兄ちゃん」「璃子ちゃん」で幼き日からずっと変わらないのも、らしい。
璃子ちゃんが大学生になり、安藤君の弱音も受け止め次第に関係がきもち対等になってゆく流れも、いい。

あと璃子ちゃんと果菜ちゃんの、全然違う性格の女の子同士の友情もいいです。私幼馴染ロマンスも好物ですが幼馴染女の子の親友二人も大好物です(笑)。
元気いっぱいであけっぴろげで頼もしい八百屋の看板娘で、お兄ちゃんにはつねに容赦ない果菜ちゃんもまたとびきりかわいらしい女の子です。
璃子ちゃんに恋愛話をことあるごとに勧めているわりに、自分の兄との関係には全く思い至ってなかったあたりも、微笑ましくちょっとおかしかった。
果菜ちゃん、まさか彼とつきあうことになるとは……びっくりしました(笑)。

あと理系学生たちのキャンパスライフものんびり愉快に書かれていて、読んでいてこれまた楽しかったです。
今回のメインは農学部。植物系と動物系とか、微妙な教授同士の争いとか、なんか、わかる(笑)。
前作二作を読んでいた頃は主人公の学生さん達に立場を重ねていたものですが、今の私は、猪俣教授の秘書の羽鳥さんの立場が断然近く、共感を覚えました。なんかこういうところでも時の流れを感じてしみじみしてしまう……。
璃子ちゃんと安藤君の研究室の教授同士が仲が悪くってって、確かにちょっとロミオとジュリエットっぽく、ちょっとロマンティック。
まさかラスト近くにああいう流れになるとは思っていませんでしたが。

璃子の親友になった涼真君とか、性別とか関係なく友情を育んでいるキャンパスライフも、自然な感じで良かったです。
社会人になった花ちゃんと安藤君の会話場面もよかった。花ちゃん大人になったな……。
龍彦君が相変わらずだけど花ちゃんのことをきちんと想っているのが端々で垣間見れてきゅんとしたり。
女の子同士の友情も良かったけれど、寮の男の子同士の友情も、やっぱりとても好きでした!!
後日談の山根君にはこれまた度肝を抜かれました。幸せそうで何よりでした。

璃子ちゃんと安藤君ですが、ふたりともけっこうご飯をよく食べるしケーキもしっかり食べるし、そういう描写も好きでした。
ふたりで出かけていたカフェが素敵でちょっと行ってみたい。
八百屋の息子なだけあり野菜を愛する安藤君の料理も美味しそうなんですよね~。鶏の水炊きに心惹かれる。

あ、あと璃子ちゃんに甘くて心配性なお父さんも印象的でした。娘が結局実家に戻らないことになってひそかにうちひしがれていたんだろうな……。

年末にじわじわ穏やかな幸福感に浸れる良い物語でした。
前作二作も読み返したくなってきました!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 日常のお話

タグ: 瀧羽麻子 

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