Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『砕けた月を瓶に詰めて』感想(Unnamed Memory) 

ここ数年来ずっと追っかけファンしているno-seen flower 様のMemoriae シリーズ、新作同人誌がまた出ました。わーい!!
さっそくお取り寄せです。

『砕けた月を瓶に詰めて』
かつて読んだことのあるみじかいお話『月蝕』の、前日譚ということで。
薄めの本でしたが、とても胸に残るものがあるお話でした。
三人で過ごしたひとときは幸せで美しくてきらきら輝いていて、どんな結果になってもその幸福な日々は真実で。

今回もまた、記事の追記以下にネタバレ感想を少しばかり収納いたします。
シリーズ全体にわたってネタバレ全開なのでご了承くださいませ。


『月蝕』、なんというかとてもやるせない気分になる短編で(シリーズの中でも屈指のレベルで)、心に残っていました。
今回の同人誌も、最初から終わりがある程度見えている状態なわけで、ちょっと覚悟して読み始める。

それでも今回のお話の大部分は、三人家族のほのぼの幸せな日常エピソードであり、悲しみの予感を常にかすかにはらみつつ、読んでいて思わず頬が緩んだのでした。

まずこのお話はオスカーが王様だった時代から9百年後だったのね。なんとなくもっと後だと勝手に思い込んでいました。
ミラが出てきたあの本当の終わりの時代までには、まだ間があるのかな。
やはり口承は絶えていたのかと思うとやるせない。

セノーとその親の出自も明らかに。ファルサスの斜陽の時代を目の当たりにするの、私もなかなかつらい……。
幸せな日常を突然奪われてオスカーとティナーシャに拾われて、三人で家族としてお屋敷で暮らす日々、しっくりなじんでいてなんだかとても良かった。
逸脱者夫婦として、お屋敷での日常生活のひとこまを垣間見ることができた、という楽しみどころもありました。
オスカーが危ない冒険話を拾ってきてはティナーシャを引っ張りまわして怒られている二人のなんてことない日常パートが本当に幸せだなあ!!そしてセノーも楽しそう。
オスカーとティナーシャのそれぞれの情の深さ、優しさもじわじわ伝わってきて、なんだか胸がいっぱいになりました。
ティナーシャの精神のちょっと危ういところも確かに見え隠れしていて、そこをオスカーが大切に守っているのもまた伝わってきて。
そんな二人の関係をある程度見抜いて自ら大切にしようと考えるセノーの賢さと少年らしいまっすぐなやさしさもまた、いとおしくて。
ピクニックにお弁当を持参して、釣りをしていたら謎の魔法生物に出くわして、とかまさにオスカーとティナーシャで、らしすぎて笑えました。
ティナーシャの小言をオスカーはそんな感じで聞き逃していたのか!とか。いまさら。

そんな幸せな日常が、唐突に終わってしまったの、もう言葉にならない、本当にやるせない……。
オスカーがセノーとティナーシャに残した台詞と、彼女が愛する人を自らの手で消滅させてしまった場面、切ない。
このお話の期間では、正気を失いつつあるものの、まだ人として精神を保ちセノーの普通の幸せを心から願っていたティナーシャのままの状態で、ああ、十年後にいったい何があったのかなあ。(ためいき)
自らの危うさを十二分に自覚していて眠り姫になる道を、ティナーシャは一度は選んでいたのになあ。
セノーへの愛情ゆえに、ティナーシャはあんな道を選んじゃったんだなあ。あああ。
ティナーシャの自作の外套は確かに最強に頑丈そうです。

でも今回私が思ったのは、こんなにつらく身を切られるような、最愛の人との別れと独りきりの長い年月を、何度も何度も繰り返していては、それは確かに、まともな精神も擦り切れていっちゃうよなあ、と。
こんなの辛すぎますもん。
そこをいくとオスカーの安定感はすごいというしかないのですが。
(オスカーの精神のゆがみ、業の深さといえばいいのか、それが、ティナーシャへの執着の深さ、ということなのだろうか。Aeternaのラストにつながる)
(もっとも彼にその究極の選択をさせたのはティナーシャの独断専行のせいだった気がしないでもないですが)
(私の日本語では思いを言語化できなくなってきたのでやめますが、とにかくこのふたりの夫婦愛のかたちが読めば読むほど好きすぎるのです。ということを)

ところであの湖での不思議生物の瓶詰は、あれは自然に蒸発していっておしまいだったのかな。
後半になって、瓶からじわじわ毒がにじみ出てきた、みたいな展開にならなくてよかったです。(?)

そういえば『月蝕』をかつて読んだ『時の夢』も電子書籍化されたということで、流れでちょっと語ってみてもよいでしょうか。
『紫恋歌』歌姫ティナーシャの本領発揮。お祭りに少女のようにはしゃぐティナーシャと見守るオスカーの夫婦寄り添いあう姿が愛情深くて美しくてとてもとても好きなお話。蝶と花のモチーフも美しくロマンティック。
オスカー視点からティナーシャへの愛のかたちが語られている珍しいスタイルのお話。彼の独白が新鮮でした。
『光』こういうパターンもありか。という。これも独特のスタイルでラブラブで大好きなお話です。ティナーシャは確かに頑丈だなあ。
そしてやはり『雪』とかファルサスの王と王妃時代のまだ時の繰り返しの重責を負っていない頃のエピソードが懐かしく幸福感にひたり涙する。
あとエリクのどら焼きの話もかなりエリクらしくて好きです。
そして最後の中編『時の夢』。
カサンドラは読めば読むほどつかみきれない。彼女はいったい本当のところは何者なんだろう。
そしてリルヤの正体が謎すぎる。記憶を失う前の彼女はいったい何をしていたんだろう。
最後のオーティスに出会えた幸福感がまたじんわり響きます。

好き放題に語ってきてしまいました。お付き合いいただきありがとうございました!!

関連記事

カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/1732-e9f45efa
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)