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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『後宮の烏』白川 紺子 




後宮の奥深くには、妃でありながら夜伽をすることのない、特別な妃が住んでいる。
「烏妃」と呼ばれる彼女は、不思議な術を使い、呪殺から失せもの探しまで、女たちの願いを引き受けてくれるという。
時の皇帝・高峻は、ある以来のために、烏妃の元を訪れる。
彼がまみえたのは、他に並び立つ者のないほど美しい少女であった——。


白川紺子さんのオレンジ文庫の新作。
作者さんとしては珍しい(はじめて?)、中華ものファンタジー小説でした。
Web連載も読んでいて好きだったので、書籍化されるのを楽しみにしていました。

まずはとにかく表紙イラストのうるわしさにうっとりため息。
けぶるまつげや結い上げられた髪や装身具、牡丹の花、黒い衣、細やかな描写のそこかしこに抑えられた色気を感じてたまらないです。
黒一色の衣に鮮やかな赤の牡丹が映えますねえ。まとうのがまだあどけなさの残る少女なので全体的に初々しい雰囲気でまとまっているのがまた素敵。
よくよくみてみると背後にヒーローの姿も浮き上がっています。端正なたたずまいです。

Webで読んでいた第一話からはじまる連作短編形式の物語。
この表紙イラストのイメージにたがわない、美しいお話。夜と影の香りがするお話でした。ひっそり静まり返った闇の中をはだしでひたひた歩き回って世界を愛でるような。「夜明宮」という名が良いですね。
独特の世界観や後宮の制度、お花や装身具や各種小物遣いや諸々の描写が細部までゆきとどいていて上品で美しい。うっとりです。
私は中華もの少女小説というと、まずは今野緒雪さんの『夢の宮』シリーズが昔から大好きなのですが、その流れをくむような美しく上品でミステリアスな雰囲気が、たまらない!!読んでいて嬉しくなってきちゃいました。

ヒロインの烏妃・寿雪は、先代ゆずりの古風な話し方をする、まだいとけない美少女。
その生い立ちゆえ他人に気を許すことができずにつんつんしているけれど、困った人が目の前にいれば結局は手を差し伸べずにいられない、お人好しな彼女です。
彼女の不思議の力の描写もお上手です。牡丹の花を媒介とするところが美しいです。
巫女姫のように力を使い女の苦しみを払ってゆく姿は、どこか『下鴨アンティーク』の鹿乃ちゃんに通ずるものもあるな、と。
そして甘いものにはめっぽう弱いところが可愛い。蓮の実の包子がおいしそう。

そんな彼女の元を訪れた、青年皇帝・高峻。
皇帝となる前皇太后に母や友を殺され辛酸をなめて過ごしてきた彼は、静かで端正なたたずまいの影に、また大きな孤独と傷を抱えていて。
寿雪と高峻は、孤独と傷をかかえた似た者同士で、そんな彼らが心通わせ少しずつ絆を育んでゆく様が、心がじわじわ温もるというか、良かったです。
皇太后への復讐を果たした高峻が寿雪を訪れて独白する場面が特に印象的でした。

心通わせても烏妃とは帝の夜伽をしない身分の妃で。ふたりの関係はあくまでそのまま。
物語は、華やかな後宮の影でひそやかに散った悲しい恋人たちの無念をいくつも癒しつつ、「烏妃」の秘密そのものまで、少しずつつながってゆきます。
なるほどねえ。そういう「禁忌」か。
思っていたよりも壮大な王朝の歴史物語を紐解くことになり、ほうっとため息がもれました。
なんというか、態度はつんけんしていても根は優しく、そして過去をけして恨まない寿雪だからこそ、真実がつまびらかにされても、どこか救いが残っているというか。
その真実を受けての高峻の誠実さもまた胸に響きました。
ふたりで見出したふたりの新しい関係、今の段階では、最大限に良いものだと思いました。
今まで寿雪に冷たかった衛青が寿雪を認めたっぽいのが良かった!(笑)

『翡翠の耳飾り』
郭晧に悪く取られたまま訂正しようとしない高峻に、寿雪がそっと助け舟を出した場面が、印象的で良かったなあ。高峻の不器用さに胸がきゅうっとしました。
班鶯女の件はどうしようもない辛い事件だったけれど、後宮に捨て身の覚悟で真実を調べに来た郭晧の誠実さに、救われる思いがしました。
九九が可愛らしくよいこで寿雪といいコンビだったので、彼女の侍女に迎えられて、嬉しかったです。

『花笛』
花嬢素敵な方ですねえ!名前も素敵。高峻の姉のような立ち位置の佳人で、寿雪にも良くしてくれていて。
過去の恋を未だ忘れずそっと抱いて微笑んでいる様も気高く胸が詰まりました。
花笛の場面、じんときました。
寿雪の親族とおぼしきあやしい人物も登場。

『雲雀公主』
「ひばりひめ」という章タイトルからして素敵です!!
忘れられて暮らしていた寂しい公主様とお友達になった侍女のお話。
彼女が命を落とした本当の理由が他人の悪意によるものではなかったとはいえ、切ない。
寿雪が九九との距離感を量りかねて一人悩んでいる様も印象的でした。九九みたいないいこが侍女にきてくれて、良かった。
不器用な寿雪ととっても器用な細工物を作る高峻のやりとりも微笑ましかったです。確かにどこまでも飛んでゆけそう。

『玻璃に祈る』
ラスボス?冰月でしたが、愛する人の未練をぬぐうと同時に救われていて、これは手遅れではなかったということかな。良かったです。
古の伝説交じりの物語になってきて、こういうの好きなので読んでいて楽しかった。
皇太后の呪詛を身体を張って止めていた彼らの存在に、読んでいて涙がこぼれました。
ふたりの無償の強い愛情がひたひたとせまってくるラストでした。

鳥の名前でそろえられたお妃の名前、とりあえず空いたままの寵姫の座、なんとなくそうなるのかも?という流れはありつつ、ふたりには今のままの関係でいてほしいな、という思いもあり。うむむ。
本当にあるかなしかのこの微糖さ加減がたまらないのです~!大好き。
これからどうなるのか分からないけれど、ふたりの幸せを、まずは第一に願いたいです。
どうなっても、彼と彼女と周囲の人達ならば、色々苦労はしても、最終的には大丈夫な気がします。
続きは読めるのかしら。もし読めたらうれしいなあ。

白川紺子さん、来月の『下鴨アンティーク』の最終巻も、再来月の『契約結婚はじめました』も、とっても楽しみにしています♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

この記事に対するコメント

続きが読みたくなる作品ですね。

スヌーピーです。
「伯爵と妖精」では熱く語ってしまいました。(^_^;)

「後宮の烏」、これまたゆりさんのブログを読んで気になっていたのですが、
この作品のカバーイラストが漫画の「伯爵と妖精」を描かれた香魚子さんだと知り、俄然読みたくなって購入しました。
寿雪の後ろに高峻が描かれていたとは、ゆりさんのブログを読み返して初めて気が付きました。

読み始めると、先がとても気になり、寝るのも惜しんで第1話の「翡翠の耳飾り」を一気に読んでしまいました。

後宮物ではありますが、よくある後宮での派閥争い?(笑)ではなく、ミステリー仕立てでそれでいて大切な人を思いやる切ないけれど心温かくなる作品ですね。

続編はあるのでしょうかね?
寿雪と高峻のこれからの関係が変わっていくのかどうなのか、是非続きが読みたいです。
私は今の寿雪がまだ若い(幼くはないけれど大人じゃ無い)ので、徐々に少女から大人の女性になるにつれて高峻に恋の想いを寄せてくれたらなぁと勝手に希望しています。(*^^*)

いやいや、続編があるかがまず先ですが...。

まぁたまとまりの無いダラダラとした感想を書いてしまいましたね。(~_~;)

まだ一回しか読んでないので、ゆりさんの感想を踏まえながらもう一度読み返そうと思います。(^^)

URL | スヌーピー #-
2018/06/23 22:04 * 編集 *

Re: 続きが読みたくなる作品ですね。

> スヌーピーさん
コメントありがとうございます。

再びのお越しをどうもありがとうございます!!嬉しいです♪
『後宮の烏』を読まれたのですね!
香魚子さんの表紙イラストとても綺麗ですよね……!!眺めているだけでうっとり浸れます。
私もバックに高峻の姿があるとは、途中まで気づいていなかったです(笑)。

確かに後宮ものでありながら愛憎巡る展開ではなく、大切な人を思う心が純粋に優しく書かれた素敵なお話でしたよね。
今はまだ寿雪が幼くはないけれど大人じゃないから、というスヌーピーさんのお言葉に、うんうんうなずいてしまいました。
そうですよね、彼女の今後の成長に期待しています。
続編あると私もとても嬉しいなあと思っています。
Web上の感想を見渡しているととても評判が高い作品なので、可能性はあるんじゃないかと思っています!!
白川紺子さんの作品を他に読まれたことはおありでしょうか。
特にオレンジ文庫のシリーズものはとても完成度が高く、少女小説好きさんにはおススメしたいです。

私のほうこそまとまりがない感想を書いておりまして、こうして読んでいただけるだけでとてもとてもありがたいです。
また色々お話ができましたら幸いです。

URL | ゆり #SvKcs0as
2018/06/24 22:53 * 編集 *

Re:Re: 続きが読みたくなる作品ですね。

ゆりさん、お返事ありがとうございます。(^^)

>Web上の感想を見渡しているととても評判が高い作品

そのようですね。
私が購入した本は、6月26日で第5刷発行となっているので、わずか二ヶ月で5刷!すごい!

読み返してみると、最初の方から既に寿雪と高峻の関係性が示唆されている箇所がそこかしことちりばめられているんだなぁと思いました。

(ネタバレあります)

寿雪について

P14
「名は寿雪でも。夏の陽炎のような娘だ」

高峻について

P16
「冬の陽だまりに似た穏やかな~」

P17
「泰然とした冬山のようだ、~」

”冬”だけれども”夏”のような寿雪、”夏”だけれども”冬”のような高峻。
相対する物を内にも秘めている二人?
最後まで読んでから読み返すと、あぁ、こんな意味を含んでいるのかな?と勝手に想像してしまいました。

”大切な人を見殺しにした”という同じ心の痛みを持っている二人だけれど、その気持ちの消化(昇華)の仕方は違っていて、だからこそお互いを”特別な人”だと自然と受け入れられたのだろうし、”無くてはならない存在”になって行ったのかなぁと思いました。

P288
「なぜだろう。高峻に名を呼ばれるといつも、~」

の箇所などは、今後の二人の関係性を暗に示しているのかな?

ただ、前のコメントでも書きましたが、私はこの先続編があるのならば、二人は徐々に恋心を持っていって欲しいと思いますが、”禁忌”という面でそれが許されるのか?二人だから大丈夫なのか?そこが一番(笑)気になるところです。

すみません、もしかしてそういう部分は既に書かれていて、私が読み取れていないだけかもしれません。(^_^;)

>白川紺子さんの作品を他に読まれたことはおありでしょうか。

いえ、これが初なんです。(#^_^#)
ですので、「下鴨アンティーク」と「契約結婚はじめました。」を図書館で借りるように予約しました。
かなりの人数の予約が入っていました。(´・ω・`)
最初、「後宮の烏」も借りるつもりでしたがこちらもかなりの待ちが...。
思い切って買いました。正解でした。(^^)

私自身、恥ずかしながらそんなに小説は読まない方なんです。
「伯爵と妖精」の前は「彩雲国物語」を読んだくらいです。
どちらも漫画から入ったのです。
若い頃に読んだ小説はもっぱら推理小説ばかり。
そこそこ年をとって読んだのも東野圭吾さんあたりの本ですかね。

白川紺子さんの書かれる文章はなんて綺麗なんでしょうね。
そして優しい。
ゆりさんの書かれる文章も、豊富な語彙と文章、そして何より読み取り力?で、私もそうなりたい!と思います。

長々となりました。
この辺で止めておきます。<(_ _)>

URL | スヌーピー #-
2018/06/26 13:43 * 編集 *

Re: Re:Re: 続きが読みたくなる作品ですね。

> スヌーピーさん
再びのコメントどうもありがとうございます。

また丁寧なコメントをちょうだいしまして嬉しいです。重ね重ねありがとうございます~!!
スヌーピーさんの解釈、深いですね。
物語をしっかり読みこまれていらっしゃるのが、伝わってきます。

確かにふたりの大切な存在を失ったときの気持ちの落ち着け方は、対照的でしたよね。
共に話すことで、それぞれ胸に滞っていたものを、消化できたのかなあと私も感じました。
そして夏と冬の対比も、私はそこまで読みこんでいなかったような気がします。すごい!こういう解釈もあるのですね。

白川紺子さんの『下鴨アンティーク』『契約結婚はじめました。』はどちらも一押しです。ぜひぜひ!!
白川さんはコバルト文庫の方でも素敵なお話をいくつも描かれていて、私はデビュー作の『嘘つきなレディ』や『若奥様は魔法使い』辺りが特にお気に入りです。
伯爵と妖精シリーズがお好きなら、ヴィクトリア朝イギリスが舞台の『嘘つきなレディ』なども、機会があればぜひ読んでみてください♪

『彩雲国物語』私は高校生の頃一巻目を読んでそれっきりなんですよね……機会があればずっと読みたいと思いつつ大長編っぷりにちょっとしり込みし続けています(笑)。

勿体ないお褒めの言葉もとても嬉しいです~そんな風に読んで感じていただけるのが感謝です。

ではでは、また。

URL | ゆり #SvKcs0as
2018/07/01 22:52 * 編集 *

Re:Re: Re:Re: 続きが読みたくなる作品ですね。

ゆりさん、マメなお返事ありがとうございます。(^^)
負担になるのでは無いか…と思いつつ、またコメントさせてもらいます。(^_^;)

>スヌーピーさんの解釈、深いですね。
>物語をしっかり読みこまれていらっしゃるのが、伝わってきます。

恥ずかしい...。勝手な解釈で自己満足です。(#^_^#)
映画の特典映像のコメンタリーみたいに、作者さんの種明かし?が聞けたらいいのになぁと思ったりします。

>『嘘つきなレディ』や『若奥様は魔法使い』辺りが特にお気に入りです。

チェックしてみます!

>ヴィクトリア朝イギリスが舞台の『嘘つきなレディ』なども、機会があればぜひ読んでみてください♪

読むリストに入れます!笑

>『彩雲国物語』私は高校生の頃一巻目を読んでそれっきりなんですよね……機会があればずっと読みたいと思いつつ大長編っぷりにちょっとしり込みし続けています(笑)。

この本もズッシリとした内容ですよね。
文章がとてもコミカルなので、なんとか私でも最後まで読めたんだろうなと思いました。
舞台が中華系だと、漢字が多くて、人の名前なんだか土地の名前なんだか組織の名称なんだかよくわかんない...(´・ω・`)になってしまうんです。
特にこの彩雲国~は登場人物が多いし...。
ただ、彩雲国~を読んでいたので、後宮の烏を読んだときに割合すんなり物語に入っていくことができました。

彩雲国物語にしても、伯爵と妖精にしても、”商業的に”という理由が多いのでしょうが、最初はどこまで連載できるかわからない状態であの大作に仕上げて、伏線回収や辻褄合わせがほぼ完璧というのは本当にすごいなぁと思いました。

「下鴨アンティーク」が手元にきましたので、ゆりさんのブログを再読しながら読みたいと思います!

ではまた!(^^)

URL | スヌーピー #-
2018/07/04 15:49 * 編集 *

Re: Re:Re: Re:Re: 続きが読みたくなる作品ですね。

>スヌーピーさん
重ね重ねのコメント、ありがとうございます。

こちらの方こそ~、マメに会話をふっていただいて、どうもありがとうございます~♪

オレンジ文庫って基本的に作者さんのあとがきがないので、よけいに、作者さん自身による種明かしが欲しいなと、私もよく感じます。
そう考えるとコバルト文庫やビーンズ文庫のあとがきはノリがよく裏エピソードや小ネタや色々書いてくださる作者さんが多くて、それも楽しみの一つだったなと。
そういう意味でも白川先生のコバルト文庫作品、機会があれば一度手に取ってみてくださいー!(笑)

確かに中華ものって国や役職名や個人の名前や、漢字も読みも独特だったりして、慣れるまでけっこう大変なんですよね。
特に役人の位のこととか私は読んでいてもほとんど理解していなくてほぼ飛ばし読みしていたりします(笑)。
秀麗はあれからどんなふうに立身出世していったのかなあと、一巻目までしか読んでいない私はいまでもときどき思いをはせてしまいます。

『下鴨アンティーク』ぜひ、楽しい読書をお過ごしくださいませ♪

ではでは~♪

URL | ゆり #SvKcs0as
2018/07/08 18:16 * 編集 *

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