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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『下鴨アンティーク アリスの宝箱』白川 紺子 




『下鴨アンティーク』シリーズ最終巻。短編集。
初夏の糺の森で不思議な紳士に出会う幸、香水瓶を返してと女性が訪ねてきてから彼女の幻影を見るようになった春野、額紫陽花のブローチが回想する最初の持ち主だったお嬢様。
野々宮の家族や近しい人々が語る、時代を越えて受け継がれるアンティークの品と、受け継がれる想いを描いた、六つの物語。


『下鴨アンティーク』シリーズ、前巻にてクライマックスを迎えていたのですが、今回が最終巻とのことで。
後日談的エピソードも含めた短編集となっていました。
『アリスと宝箱』のサブタイトルで、一巻目の『アリスと紫式部』からまたひとつつながりが回収されたみたいな、古くからの縁やつながりを受け継いでゆくこのシリーズらしくて素敵です。(ちなみに紫式部は前巻の『白鳥と紫式部』ですでに回収されている)

表紙、淡いピンクの地に作中に出てきた花々、子虎ちゃんが非常に可愛らしい。露をのせた鶯の落とし文も素敵です。

一話一話が極上のきらめきをやどす宝石のようで、一冊がまさに「宝箱」。
一気に読み進めるにはあまりにもったいなくて、読んではしばし手をとめてゆったり余韻に浸る……なんてことを繰り返しつつ、読了。(それでも続きが気になり最終的にはやはり一気読み)
素晴らしかったです。シリーズのファンの私的には最後の最後で最高のご褒美をいただけた気分でした。

語り手が鹿乃ちゃんメインから離れて、作中でモチーフとなる素材も着物以外のアンティーク小物に。
謎を解きあかしていくやり方もそれぞれのお話の主人公でそれぞれ違いがあって、ちょっと新鮮で面白かったです。
鹿乃ちゃんの着物への対処はなんというか、まさしく、巫女だったんだなと。野々宮の由緒正しい巫女姫。
かなり昔の一族の人達のお話もあったりして、野々宮家の人々が、ますます私は大好きになってゆきます。

では各話ごとに少し感想を。
『鶯の落とし文』
「葉には血が通っている気がする」からはじまる、幸ちゃんが語る糺の森の緑のみずみずしく力強い描写に、最初からすっかりひきつけられてしまいました。
幸ちゃんと良鷹さんと鹿乃ちゃん、まだ少しぎこちないけれどひとつの「家族」として暮らしていて、自分専用のお箸のささやかな描写もなんだかじわっときて、ああ、良かったなと安心したのでした。
良鷹さんつくづく面倒見のいいひとだなあ。チーズ入りのオムライスがとってもとっても美味しそうでした。
幸ちゃん視点から眺める良鷹と鹿乃は、美しい兄妹なのだなと、改めて。
なんとなく鹿乃ちゃんのイメージは私の中では黒髪の少女だったので、栗色の髪に白い肌というのはちょっと意外だったかな~。でも確かにしっくり馴染む気もします。思えば以前読んだプチまんが版の鹿乃ちゃんは黒髪ではなかったな……。
新君と澪ちゃんという友人もできて、良かったなと思いました。いいこたちです。
「鶯の落とし文」名前が風流だなあと思いました。
良鷹さんが引き受けた案件を幸ちゃんがほぼ一人で解決して、「秘密」と答えて、良鷹もそれを受け止めるも特にそれ以上の説明は求めない、この二人独特の距離感が、好きだなと思いました。
幸ちゃんの心の中の宝石箱を大切にしてくれる人で良かった。

『青時雨の客人』
春野さんの物語。
謎に満ちていた春野さんのことが、ようやく少し分かってきたかなあというお話でした。
ときどき忘れているけれど、彼も普通の大学生なのだなと。
やっかいなものに取りつかれて災難な春野さんでしたが、菅谷君の助けがとても頼もしかったです。このふたりの友情いいなあ。
牡丹の姉妹のふたりそれぞれの気持ちが分かるだけに、なんだかとてもやるせない。
「青時雨」とは素敵な言葉だなと思いました。今度から使ってみよう。
最後のごちそうがからあげ一択なのは、男子学生っぽい!

『額の花』
額紫陽花のブローチが語り手の小さな物語。
ものが語り手のお話、『契約結婚はじめました。』にちょっと重ね合わせてしまいました。
芙二子さん、千鶴さん、鹿乃ちゃん、彼女たちの傍らにいる大切な男性たち。美しくいわくつきのブローチへのそれぞれの接し方があって、それぞれが素敵だなと思いました。慶介さんの美はいまひとつ解さずとも古の風習めいたことには詳しいところがいかにもらしくて微笑ましかった。
千枝子お嬢様のその後の物語も明らかになって、大団円、良かったです。

『白帝の匂い袋』
野々宮家に代々伝わる匂い袋から、また少し昔の世代の物語へ。
東京から事情持ちでお嫁にやってきた鈴さんと、当主の青年季秋さんが少しずつ距離感を縮めてゆく様が何とも初々しく微笑ましく、峰子お母さんも夏子さん夕子さん姉妹も皆いいひとで、素敵なお話でした。
鈴さんの実家に巣食う闇は辛かったですが。鈴さん本人も、鈴さんに意地悪と思えたお母さまも、これまでどんな辛い思いをされてきたのか……。最後まで分からなかった彼女の愛情にほろりときました。
愛想が悪くてちょっと冷たそうだけれど心根は優しくてセンスのいい季秋さんは、良鷹さんとどこか血のつながりを感じるというか。
明るくて屈託がない姉妹もいいな!峰子お母さまの笑顔も好きだ(笑)。
この時代の京都の街の様子も新鮮でした。汐子さんの時代のお話とはまたちょっと雰囲気が違う。

『一陽来復』
冬至の日に慧さんが出会った不思議のエピソード。
鹿乃ちゃんと慧さんがラブラブで、どうもごちそうさまでした!
「かわいいのはお前だよ」という慧さんの内心の台詞が甘い。
ひとつひとつのやりとりから推測するだにふたりは順調にラブラブみたいなので、虎の抱え帯を贈った良鷹お兄ちゃんの内心も分からないではないなと思うのでした……ふふふ。
そして確かに慧さんは鹿乃ちゃんには一生絶対に敵わないですね!

『山吹の面影』
締めは再び良鷹と真帆さん、幸ちゃんが主役の物語。
良鷹兄妹の両親が遺したものを辿ってゆく物語であり、ふさわしい物語だったなと思いました。
弥生さんの余計なことは一切口にしないところが確かにすごいと思いました。
良鷹さんの助手というか理解者として、いや友人としてか、ますますしっくり馴染んで違和感のない真帆さんもやはりすごい。
狐さんと消えた花嫁さんのエピソード、不思議でしたがオチはふんわり幸せな気持ちになれるもので、良鷹&真帆メインのお話のいつもの痛々しさはあまりなく、ほっとしました。
山吹の花畑で狐と語らう幸ちゃん、彼女を捜しにやってきた良鷹さん、印象的で素敵な場面でした。狐さんに鮭のおにぎりをわたす幸ちゃんがかわいい。
植物園でのお弁当がたまごサンドとローストビーフサンドなのもいかにも良鷹さんと真帆さんで、良いです。

読書メーターの他の方の感想を読ませていただいていると良鷹さんと幸ちゃんが将来くっつくのではいう方が多くて、確かにと私も今回ちょっと思ってしまった。しかし鹿乃ちゃんと慧さんもかなりの年の差カップルなのに良鷹さんたちだとさらに輪をかけて年の差ですよね……それはそれで美味しいですが(笑)。
けれどやっぱり私は真帆さんを推したいかなー。今くらいの友情メインのさっぱりした関係がふたりには合ってるような気がしないではないですけれど、でもでも!
欲を言えば良鷹さんがお嫁さんを迎えるまでシリーズを読みたかったな、とは思います。

ともあれ最後の最後までとても素晴らしい物語でした。すでに何度も読み返しては浸ってます。
急に蒸し暑くなった夜も、この本を読んでいると、糺の森の濃密な新緑や牡丹の亡霊のじっとりした空気や紫陽花の美しさの引き立て役であるような心地さえしました。
コバルト文庫のお姉さんオレンジ文庫の生み出した傑作だと私は個人的に思っています。

白川紺子さん作品連続刊行、来月は『契約結婚はじめました』の三作目ですね。
こちらも今からとっても楽しみです。


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

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