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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』髙田 郁 




澪が大坂に戻ったのち、文政五年の春から翌年初午にかけての物語。
つる家の店主・種市と店の面々の様子が描かれた表題作、澪のかつての想い人・小野寺数馬とその奥方・乙緒の暮らしぶりが描かれた『涼風あり』含め、四編の番外編を収録。
シリーズ完結後の登場人物のその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ、待望の特別巻。


『みをつくし料理帖』シリーズ完結から四年後、今になってまさかの嬉しいシリーズ特別巻でした。
事前情報などまったくノーチェックでして、Twitterで情報が回ってきたときはびっくり仰天で、五度見ぐらいしてしまった。
シリーズが完結してからもう四年の年月が過ぎていたなんて。それにも驚かされてしまいました。

ということでほぼ四年ぶりにこのシリーズにふれるわけで、正直設定など色々あやふやになっている部分もあり大丈夫かしら……と思いつつも、お話が気になって仕方ないので、復習で既刊を読み返す暇も惜しく、読みはじめてみる。
……いざ読みはじめてみたら、そんなことちっとも気にならなかったです。
みをつくしの主要登場人物達、あのひとやあのひとたちに、久しぶりに再会できて、懐かしさやいとおしさに、読んでいて胸がいっぱいになりました。
ああ、みんながみんな現状くもりなく幸福というわけではなく、特に最後のお話の試練はしんどかったけれど、でもみんな元気で笑顔で生きていて、個性と人の良さと各自の持ち味はそのままで、大切な人と寄り添いあって生きていて、ほんとうによかった。
おかえりなさい!!!
ひとことでいえば、そんな気持ちに。
このシリーズのメインであるお料理ももちろんしっかり楽しめました。この時代の町の普段のお献立がまたたまらなくなつかしい。
贅沢な材料を使う訳でなくても、時間と手間をじっくりかけてていねいに作られるお料理の、美味しそうなこと。読んでいてふくふくと幸せな気分にひたれました。

それでは各話ごとに感想を。
『花だより 愛し浅利佃煮』
種市さんを主役に、シリーズ完結後のつる家で働く人達とその周辺の人々の姿を描いたお話。
このお話がいちばん明るく楽しいお話で、かつにぎやかでいちばん同窓会っぽかったです。
種市さんの澪ちゃんへの並々ならぬ愛情が心にしみいりました。
種市さんの心境を考えると気の毒だったのですが。気落ちしているひとがいればすぐに気づいて労わる周囲の皆が相変わらずでやっぱり心が温かくなりました。
個人的にはふきちゃんと健坊、太一君の成長がやっぱり印象的でうれしかったかな。
そしてりうさんがやっぱり最高でした。彼女のやることなすことが粋で、惚れ惚れしてしまいます。
まさかの種市さんとりうさん、坂村堂さんと清右衛門先生の、澪さんに会いに行こう!!の珍道中。
この時代の庶民の旅の雰囲気も味わえて楽しかったです。
そして種市さんの苦しみも溶けてひと息……というところで、オチにずっこけました。やっぱり気の毒。
種市さんの愛情が込められた浅蜊佃煮の握り飯が非常に美味しそうで、この本を読んでいる間私のお弁当にはかかさず浅蜊の時雨煮が入っていました。とさ。
清右衛門先生みたいな気が短いひねくれた男の人が実際に身近にいたら絶対私は苦手なのですが、でも先生やっぱり嫌いになれないんですよねえ。分かりづらい優しさがつぼにはまってしまいます。

『涼風あり その名は岡太夫』
小松原様こと小野寺数馬氏と、その妻乙緒さんの日常生活のひとこま。
ちょっぴり変わった性格で周囲に誤解されやすそうな乙緒さんですが、何とも言えない独特の味があるお人柄というか、私は読めば読むほど彼女が好きになっていきました。
無表情な母を全力で素直に慕う悠馬くんがまた可愛らしい。
なんというか、飄々としている数馬さんとは、お似合いの夫婦だなと思いました。
言葉足らずですれ違ってしまったけれど、お菓子で心を通わせられて、良かったです。
たしかに「岡太夫」ってややこしい成り立ちのお菓子だな……りつさんの愛情が余韻に残って良かった。
そして早帆さんは相変わらず早帆さんだなと思いました。彼女はむしろ変わらずにいてくれて良かったなと思ってしまった(笑)。
乙緒さんの辛い時に美味しいお菓子を送ってくれるおとうさんも、そのお菓子がちょっと気になる重光さんも、お武家のひともやっぱりみんないいひとだな。ほっとしてしまった。

『秋燕 明日の唐汁』
大坂に戻り生家の淡路橋高麗屋を再建した野江ちゃんのお話。
大坂の地で澪ちゃんと野江ちゃんが仲良く助け合って生きていて、読んでいる私もなんだかとっても幸せです。本当に良かった!!
野江ちゃんと又さんの出会いから始まる二人の絆のお話が、まさか今になって読めるとは。ぐっと胸に来ました。
又さんといえば寡黙だけど心優しい腕の確かな料理人というイメージが真っ先に出てくる私なので、なんだか、圧倒されました。彼が纏っていたそこはかとない凄みの空気にも納得がいったといいますか。
辛く苦しい過去と揺れる女ごころで苦しむ野江ちゃん、そして彼女のすべてを包み込む辰蔵さんの謙虚で大きな愛情に、打たれました。
おからの唐汁とは究極に素朴な料理に思えるけれど、あたたかくて優しい美味しさが伝わってくるようです。

『月の船を漕ぐ 病知らず』
ラストは澪と源斉先生のエピソード。
しかしこのお話が今回一番辛かった。やはり人生辛いことに終わりはなく次から次へとやってくるものだな……。
源斉先生と澪がひたすら真面目に誠実に努力しているからこその苦しみだと分かるので、一層辛い。
旦那さんがお医者様で奥さんがひとつの店の料理人というのは、たしかにものすごく大変だと思いました。
お互いの仕事を理解し尊重して暮らしているふたりがすごい。すごいけれど、たしかにしんどいときには一層しんどい……。
源斉先生にごはんを食べてもらえない澪の苦しみが本当につらかったけれど、お姑さんからもらったお味噌のレシピで、見失っていたものを見出した澪ちゃん、それからの彼女の頑張りと、そんな妻の姿を見てひとつの答えを見つけた源斉先生、良かったな。本当に良かったな。涙が出てきました。
お味噌を作る過程って具体的にあまり分かっていなかったので新鮮でした。思っていたより時間かからず作れるんだな。
そして東西のお味噌の違いで色々創意工夫をめぐらす姿こそ、澪ちゃんという感じがして、ふたりが元気になって、本当に良かった。
澪ちゃんと源斉先生のふたりの間に流れる空気は本当に穏やかで優しくて、そのまんまで夫婦になってるふたりが、ふたりらしくていいなと思ったのでした。
辛い時にお互い支え合い励まし合う澪ちゃんと野江ちゃんの友情も、また、しみじみ尊い。

澪と野江のふたりの人生を変えたかつての大坂の水害、病など、今のご時世特に全く他人事ではなくて、胸にせまってきました。
私ごときでは何のふさわしいことばも見つからずに情けなく歯がゆくてしかたないのですが、今回の新刊を読み、一層、平凡な日常がなんて尊いものなのか、感じ入らずにいられなかったです。
……なんというか、やっぱりうまいこと書けないのだけれど。

りうさんのラストの瓦版も、高田先生自ら描かれたという帯イラストも、最後までとっても素敵で、心が満ちたりました。
みをつくし料理帖シリーズファンの方は、ぜひぜひ今回の特別編も、手に取って読んでみてくださいませ。
おススメです!!


この一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 高田郁 

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