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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『今日も魔女を憎めない 思惑だらけのロイヤルウェディング』時本 紗羽 




小国エスティードには、不老不死の恐ろしい魔女がいる。18歳の絶世の美少女の魔女の名はシエラ。
魔女に恐れをなした国王は、魔女を王子ゼロサムの妻とした。
魔女が王子を呪いで自分と同じ不老不死の身体にしたため、王子は国王となり月日を重ねても18歳の姿のまま。
国王の娘も成長し18歳になったある日、他国の第三王子がエスティードを訪ねてきて——。


コバルト文庫の新作読み切り。
美しく色っぽい表紙イラストと意味深すぎるあらすじと作品設定に惹かれて、手に取ってみました。
絶世の美少女姿の恐ろしい魔女と、魔女に呪われた王様、そして側室腹の王女様、同じ18歳の王室の三人を巡る、おとぎ話風味の少女小説ロマンス。

他の方も書かれている通り、確かにどんな感想を書いても、ネタバレになってしまう……!!
なかなか意外性に富んでいたというか、良き少女小説でした。
あとがきを読んで、作者さんが高校生の頃から温めてきたお話だと知り、納得しました。
なんというか、物語やキャラクターひとりひとりへの、作者さんの愛情を感じる。
少し荒削りなところや不完全なところも読んでいてぽつぽつあるように思うのですが、それもすべてふくめて、作品の魅力なのかなと思えました。

魔女と王様のロマンスは、とはいえ少女小説の王道だと思います。大好物です。
シエラとゼロのふたりのシチュエーションが、すっごく好きでした!!
真面目でがんばりやで愛情深い王女様ハイネも好きです。ハイネって名前の響きが良いと思うの。

コバルト文庫にしてはほんのり大人風味のロマンス。
「ほんのり」なので、いわゆるTL小説が苦手な人でもぎりぎり楽しめる、と思います。
なんだかそういうのも新鮮な感じで読みました。

という訳で、追記以下に、ネタバレ込みの感想を少々書き散らしていこうと思います。
このお話はみなさんおっしゃっているようにネタばれなしで読んだ方がきっと面白いので、未読の方はご注意を。

あ、あと作品設定が少し似ている『Unnamed Memory』という大長編オンライン小説があるのですが、お気に召した方はこちらもどうでしょう……!!
どちらかの作品がどちらかに比べてどうとか言うのでは全くなく、それぞれの重なる部分と違う部分を読み味わって、一層両作品への愛が深まるのでは、と私は勝手に思っています。
こちらは呪いを受けた王子様が、解呪を依頼するため、世界最強の魔女の元を訪ねるところからはじまるものがたりです。




各話ごとに語り手が変わっていき、主要登場人物それぞれの視点から辿ってゆくものがたり、という構成。
それぞれが腹の中に隠していた真相が、頁が進むごとにじわりじわりと明らかになってゆき、どきどきでした。

魔女シエラと国王ゼロサムのふたり、あんなに悪評が立っているのに、実際のところはまあ、純愛で結ばれた夫婦でした。
魔女と言っても実際は恐ろしい魔法が使えるわけではなく、自分が不老不死であるのと、他人に不老不死の呪いをかけられる、それだけなのね。
シエラはただ、寂しがりやで世間知らずでうぶで虚勢をいっぱいはった、心優しいひとりの女の子でした。
シリアスな家出少女シエラをかくまった(しかも王子の部屋の屋根裏部屋って)王様の意向はいまいち謎ですが、ゼロサムもまた、気弱な魔女のいいなりの王様なんてとんでもない。惚れた魔女相手に、ソフトだけどぐいぐい押して押して押しまくり、ついに口説き落とした、かなりしたたかなやり手の王子様でした。
あの悪評は実はゼロサム案だったとは、あっけにとられました。
だまし討ち同然の結婚式も。
問題の呪いも、ぐいぐい攻めていくゼロサムに、シエラが陥落して……というかたちだったのですね。
ゼロの揺るぎない大きな愛情と、しだいにほだされてゆくものの相手の幸せを思うと拒み続けるしかなかったシエラの乙女心に、胸がきゅうっとしました。
永遠にふたりきりで生き続けるしかない、けれどゼロにとっては永遠にシエラと時を分かち合うことができるのが無上の喜びなのだろうし、シエラも永遠に後悔し続けつつ、愛し愛されて幸せなのでしょう。
むしろゼロサムの恋心が一人の女性に向けるにしてはいささか大きすぎて、どんな障害にもみじんもゆらがなくて、その姿の方が歪んでいる気すらしてしまう。
ミランダも巻き込まれて気の毒ではありました。ゼロの気持ちが全く揺れ動いてもいないのが流石に哀れです。

あともうひとりの主役はハイネ王女。
アレンははじめ思っていたような悪人には結局なりきれていなくて、フランシスの方もはじめの印象ほどチャラくて何も考えてない王子様のままでは終わらなくて、ハイネ王女を間にしての奇妙な三角関係が、なんだか、これもとても良かった。
アレンとフランシスの入れ替わりにすっかりだまされてました。
どちらも切ないです。
特に結婚式のあのあとでアレンの役を演じていたフランシスの気持ちを思うと……。
フランシスは本当にいい男性だな。
色々あったけれど、ハイネとフランシスは、とてもいい国王夫妻になるんじゃないかな。
ハイネの母親の真相は、薄々そうじゃないかと思っていた通りで。でもミランダ様の豹変した態度はきつかった……。
結婚式のドレスの選択と美しく編み込まれた髪に、シエラの母としての愛情を感じて、じわじわとこみあげてくるものがありました。
そしてラスト、ハイネ王女が幼い日からずうっと目指していたものとは。
美しい家族の愛情の物語でした。ほろっときました。

アレンとフランシス、そんなにそっくりなのなら、何らかの血縁関係とか関わりはなかったのか、とか、考えないでもなかったですが。どうだったのでしょう。
あと、シエラが追われていた真相とか。
ミランダが側室としておかれるようになった経緯と彼女の気持ちの物語とか。
語られていない部分がけっこうたくさんあって、気になると言えば気になるのですが。
最初に少し語った通り、この物語はもうそのままのかたちで、ひとつ、作者さんのなかで長年あたためられて、完成しきっている、という気がするのでね。そのままで良いのでしょう。と私は思いました。

挿絵がまた物語のイメージにぴったり合っていたのも良かったです。
表紙のカラーのシエラの白い髪と黒いドレスのコントラストが美しいです。ゼロサムの色香に満ちたポーズもぴったり。
ハイネ王女の可愛らしくてちょっと強気なところとかも良く出ているなあ。

そしてすみません、UM好きな私なので、ついつい重ね合わせて読んでしまいまして。
畏怖の対象の恐ろしい魔女に求婚し、結婚なんてとんでもない!と取り付く島もない魔女に、ぐいぐい押して押してゆく姿は、やっぱりちょっとオスカーとティナーシャにも似ているのですよ。うん。
ゼロサムはオスカーとレギウスを足して二で割ったような感じかな。とか。

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カテゴリ: コバルト文庫

タグ: 時本紗羽 

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