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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『後宮の烏 2』白川 紺子 




後宮で生きながら帝のお渡りのない特別な妃「烏妃」である寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女をそばに置いてにぎやかな日常を送ることに戸惑いを覚える。
幽鬼を見るという異国出身の少年宦官、かつて仕えていた妃を弔ってほしいという老女、そしてある夜凄惨な事件を引き起こした妃と彼女の影にいた青年——。
寿雪も知らなかった烏漣娘娘、彼女が恐れる「梟」の真実が、紐解かれてゆく。


白川紺子さんの中華後宮ものファンタジー『後宮の烏』、第二弾。
一巻目の時点できれいにまとまっていて続きがでるかどうかはちょっと分からなかったので、続編の新刊のお知らせを見て「やったー!」と心の中で叫んでしまいました。
黒でまとめられた表紙イラスト、浮かび上がる白い光、たたずむ寿雪の髪に挿された牡丹の花が、特に美しい。

一巻目同様、夜と影の香りが漂う、静かな物語です。
初冬の長い夜に読むのにぴったり。
夜のお話ですが闇はけして濁ってはおらず、清らかであたたかで、読んでいるとやさしくくるみこまれるかのような。
さらさらと読みやすい、細部まで品よく上質な文章は相変わらず流石です。
ずっと読んで浸っていたくなる。
花や自然のものの描写、妃達の服装や装飾品、後宮の建物等、なにげないところを切り取った美しくて印象的な表現がたくさんあって、お気に入りの文章を見つけると心の中でずっと転がして味わってみたり。


この先一応ネタばれご注意くださいませ。


寿雪と高峻の二人の関係がやはりいちばん気になるところでしょうか。
いわゆる普通の関係の妃と皇帝ではないので、普通の後宮ものとはひと味違って面白いです。展開が読めない。
いやし難い孤独と心の傷を抱えた二人が「友」として少しのときを過ごしている様が、微笑ましく優しく、得難いものに思えます。
相変わらずつんつんしているけどお人好しで優しい少女で、甘いものであっけなくつられる寿雪が、可愛らしいこと。
高峻の本心はなかなか読めないのですが、寿雪を気にいって友としてあろうと誠実に努力しているのは、端々から伝わってきます。
そして何よりラスト。寿雪のやさしさをうけての彼の心の動きにこちらもほろほろっときました。
恋よりもっと切実に欲する存在なのかもしれないな、高峻にとっては。

あと今巻では寿雪の周りに次第に彼女を慕う人が増えてゆき、にぎやかになってゆくのも、読みどころというか。
九九の朗らかさと素朴な優しさには心和むし、陰でそっとひかえて見守る紅翹も、宦官でまだ少し幼くて素直なイシハくんも文武頼もしい温螢も、読んでいるごとに愛着がわいてきました。
特に寿雪のひととなりにふれるにつれ彼女自身に心を捧げるようになってゆく温螢の変化は、読んでいてぐっときました。彼の生い立ち語りがまたせつなくてふるえる。

ただこれらの変化を決して手放しに喜んでいるだけでなく、先代の言いつけに背いている、と罪悪感や恐れを抱いている寿雪なので、こちらも事情が分からないものですからやはり不安もあります。
同時にこれまでの彼女の孤独な日々を改めて突きつけられ、胸がしめつけられる。
そんな閉ざされた日々にも確かにあった、麗嬢と桂子の愛情もまたじわりと伝わってくるので。たまらないですよねえ。
色々思いはするけれど、今のこのにぎやかで温かい環境を、悪いものだとは思いたくはないな、と。
寿雪自身の人柄が築き上げた輪なのですから。

それにしても梟とはなんぞやと思っていたら、ラスト近くになってたたみかけるように語られる烏漣娘娘の真実。
こんなにスケールの大きい神話の物語が底に隠されていたとは。読み応えありますねえ!!
確かに衝撃的でした。真実もですが、それを教えられて命を奪われなければならないという理不尽さにも。
あらゆる意味で得体のしれない梟に、寿雪のため、真っすぐに当たり前のように対峙した高峻に、ちょっと泣きたくなってしまいました。
衛青が相変わらず寿雪に当たりがきついのもまあ分からなくはないんですよね。
このふたりが距離を縮めるのは、ぎりぎりの綱渡りのようなもののような気もしますもの。

青燕
イシハのために必死に動く寿雪と、彼女の優しさをちゃあんとわかっている九九が、良かった。
少年宦官の燕のお話はまたほろ苦く哀しいお話でした。救いを得られてよかった。

月月紅(べにばら)は盛りを過ぎていたが、葉のあいだにぽつりぽつりと散る間際の花が見える。
褪せた花は、盛りのころのようなみずみずしい鮮やかさはないものの、うらぶれた艶があった。  (55頁)

花嬢のところを訪れた場面のこの描写が私とてもお気に入り。
やはり涼やかで凛とした花嬢はすてきなひとだなあ。
寿雪の笑顔にあっさり陥落したらしい燕夫人もなんだか微笑ましかった。高峻はお使いか!
燕子花の美しさも伝わってきました。良い。

水の聲
これまた苦くて切ないお話でした。
安氏も婉琳も、後宮に生きて死んだ女たちの苦しさが、ひたひたと伝わってきました。
夜明宮での皆のたわいない日常のやり取りに和みました。

仮面の男
少しグロテスクなお話というか。
温螢の生い立ちにも少し繋がりました。切ない。
寿雪が男を救った手際がとりわけ鮮烈で美しくて印象深かったです。
花嬢の祖父の宰相のことで高峻が抱えるものは、やはり、重いですよね……。花嬢自身がどう思っているかはまた別にして。
彼の心の苦しい部分をそっと気に掛ける寿雪の賢さと真心にじんときました。

想夫香
序盤の夜明宮を訪ねてきた女の場面から繋がるお話。
あああ、許されない恋心がひたひた伝わってきて、グロテスクな事件になってしまったものの、彼女の気持ちが切ない。
全てが終わってからの父親の語りも切なかった。
そして驚いたのは冬官の彼のことでした。
正直ひやりと背筋が寒くなりましたが、彼が麗嬢に寄せていたであろう想いを考えると、やはり責められない、か。
いい後任者を育てて残してくれているし、寿雪のこともまた大切に思っていたのではないかな、と信じたいです。
寿雪が高峻の手を温める場面が、好きです。

それにしても今の後宮には、高峻本人を一途に恋い慕うお妃様が、出てこないですよねえ。
娘を後宮に送り込むのは親が決めることだし、まあそんなものなのかな。
この物語に直接的な後宮のどろどろ展開はあまり似合わない気もしますしね。
今後に期待したいですよね。いろいろ。

まだ梟のことなど解決していないし高峻が受けた傷も気がかりだし寿雪の今後も分からないし、これは続き、でますよね、きっと。
来年また楽しみに待っております。


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: オレンジ文庫

タグ: 白川紺子 

この記事に対するコメント

後宮の烏2読みました。

ゆりさん、こんにちは。

後宮の鳥2、前巻の面白さを超えて面白かったですね。

ゆりさんのおっしゃる”読んでいるとやさしくくるみこまれるかのような”...。
同感です。

物語は人の嫉妬、情念、怨念だったりしてどちらかというとドロドロしているのに、
白川さんの文章は美しく紡がれていて、なぜか読んでいるこちらが「やさしく」なるんですよね。
もうね、自分(私)がやさしくなったような錯覚に陥るくらい・笑

>恋よりもっと切実に欲する存在なのかもしれないな、高峻にとっては。

私も今巻を読んで、今後の高峻と寿雪の関係って男女の恋情や愛情とはもっと別の感情によって結ばれていくのかなぁと思いました。
ただ、私個人、ラブストーリーが好きなので、二人の間に恋情を期待してしまいます。


そして今巻、寿雪を慕う人が増えましたね。
微笑ましい反面、それがどうなっていくのか?
それも今後の読みどころになって行くのでしょうね。

「水の聲」での婉琳と安氏の話しの後に「仮面の男」での高峻と雲永徳(花娘の祖父)の話しを持ってきたのは、
暗に安氏の感情と雲永徳の感情を関連づける為だったのかなぁと思ったのですがどうでしょう?
「あれだけしてやったのに」(今のところ雲永徳の感情は高峻の想像でしかありませんが)


>高峻本人を一途に恋い慕うお妃様が、出てこないですよねえ

確かに!
わりとマメな皇帝様みたいなのに。笑
そして後宮物でよくある”我先に跡継ぎを産まなくては!!”という切実感が誰にも無い...。


そしてそして”梟”。
本当に読み終えて、こんな壮大な話しになるなんて1巻の時は思いも寄りませんでした。

何度も言ってしまいますが、個人的に二人のラブストーリー、ハッピーエンドを期待しているので、
この”梟”の存在と、二人の困難な今後を思うと、読み終わった後眠れませんでした。恥。


自分がうまく文章としてまとめきれない読後の感想をゆりさんのレビューがおしえてくださっているようです。
ありがとうございます。
(このコメントも感情にまかせてバラバラ。^_^;)

年末年始、まだまだお忙しいかと思いますが、どうぞお体ご自愛ください。

URL | スヌーピー #-
2018/12/24 17:07 * 編集 *

Re: 後宮の烏2読みました。

>スヌーピーさん
コメントありがとうございます。

少しお久しぶりですね♪
せっかくうれしいコメントいただいていたのに返信が遅れて申し訳なかったです……。

『後宮の烏』の二巻目、良かったですよねー!!
私のブログこそ書きたいままに書いていてまとまりなんて全然ないので、恐縮です(汗)。
スヌーピーさんのお言葉で私自身再発見したものもいくつもありました。

>「水の聲」での婉琳と安氏の話しの後に「仮面の男」での高峻と雲永徳(花娘の祖父)の話しを持ってきたのは、
暗に安氏の感情と雲永徳の感情を関連づける為だったのかなぁと

確かに。そういう流れの関連付けはあったのかもと私も思います。
高峻にとって雲宰相は辛い時に全力で救ってくれた恩人だからこそ、余計にしんどいんだろうなと。
たとえ花嬢自身の想いは自分にないとはいえ、皇帝の立場はしんどいとつくづく……。

そして本当に、関わる事件の登場人物は憎悪や怨念でドロドロしているのに、読んでいて不思議とそこは気にならず、白川先生の美しくて静かな文章にそっと包まれている感じなのですよね~。
流石としか言いようがないです(笑)。

梟のことも、寿雪と高峻のことも、色々気になる部分が満載で、続きが読める日が今から待ち遠しいです。
またスヌーピーさんと感想のお話でもできると嬉しく思います♪

年末年始スヌーピーさんもお忙しい日々と存じますが、あったかくしてお過ごしくださいませ!!

URL | ゆり #SvKcs0as
2018/12/31 12:12 * 編集 *

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