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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『本好きの下剋上』第一部~第二部 香月 美夜 




本がとにかく大好きで大好きな女子大生が、大学図書館への就職目前に死んでしまって、異世界に転生。
そこでは彼女は下町で暮らしている病弱な幼女で、周囲には本なんて一冊もない。
しかし彼女はそんな状況からなんとか本を作りだそうと、材料集めから一からはじめて試行錯誤を重ねて紙を作り文字を覚え……周囲を巻き込み突っ走っていくおはなし。


とても人気作なWeb小説発の超大作ファンタジー小説。
実は一巻目を何年も前に買ってずっと積み本にしていたのですが、一巻目を読み切ったら、うん、面白くって。
二巻目を読んだら、また一層、面白くって。
三巻目を読んだら、さらに幾重にも、面白さが増してきて。泣いて。
……第一部完結した時点から途中でやめられなくなってきて、一冊一冊がかなりのぶ厚みのあるシリーズを、現時点で第二部まで計七冊ですか、ほぼ一気読みしてしまいました。
先週ブログ書いていなかったのは、このシリーズの続きをひたすら読んでいたからです。
しかし第二部まで読み終えて、そろそろネタばれ含みの感想メモをちょっと書き残しておきたくなってきたので、ようやくブログまでやってきた次第です。

なんだろう、やっぱりヒロインのマインの、本に対する情熱がすごすぎて。
周囲に未知の技術を振りまき大騒動を巻き起こしていく姿にひやひやしつつも、突っ走っていくその姿が、読んでいて何とも痛快で面白いです。
ほんっとうになんにもないところ、どころか周囲は誰も本自体を知らないところから、材料を探し道具を作って一から本を手作りしていく、その過程のひとつひとつの描写がていねいで難しすぎずすっと読みやすいのが、とても良いですね。
私も本好き図書館好き人間なので、ひとつひとつのステップに共感できるし、とってもワクワクして楽しいです。

マインはとにかく本狂いですが、このお話の面白さは本以外、衣食住の描写もまた、非常に充実していて読み応えがあるところにもあると思います。
異世界で実践、日本の家庭科!
魔法まじりの異世界の材料で試行錯誤して、下町のつましい暮らしの中から前世の知識を活用して生み出していくマインの創作物、これまたしだいに家族の手を離れて周囲に大騒動を巻き起こしつつ広まっていくのが、たのしい~!!
私はやっぱり美味しいものを食べるのも作るのも好きで興味があるので、食に関する部分が特に楽しいです。
蒸したお芋にバターやカトル・カール、天然酵母のパンやピザ、マイン流スープ、フルーツ洋酒漬けとクリームのクレープ、全部おいしそうだけれど、今まででいちばん気になるのはやはり、一巻目で登場した冬の不思議植物・パルゥのしぼりかすで工夫して作ったおやつ・パルゥケーキでした。
おからのケーキ?いもくりかぼちゃのほくほく甘い感じ?少しチーズケーキっぽさもある??……けして再現できないお菓子だけになんとも魅力的です。
マインのお姉ちゃんのトゥーリやお母さんがお裁縫のプロなのもあり、洋服やお洒落の描写も結構力が入っていて楽しい。女三人が楽し気にお洒落に工夫し手仕事をしている姿ってなんかいいですね。お父さんが持ちあげられて木を加工して娘に喜んでもらってデレデレしているのも微笑ましい。
住宅事情や下町、商人、神殿、貴族、それぞれの風俗やものの考え方等もきっちり書き分けられているのも面白いです。確かに衛生事情は現代日本から転生してきている身には辛いというのはよくわかる。
貴族が関わってくるにつれて語られてくる神話もギリシア神話や日本の神話っぽい部分もあり、面白いな。

そしてそして、このお話でなんといってもいいのが、マインとその家族の家族愛!!そしてマインの近所の同い年の少年・ルッツとの息ぴったりの相棒関係!!!
第三巻でマインを守るため、貴族相手に身体を張ったお父さんとお母さんの愛情と覚悟の強さに、胸をがつーんと打たれて泣けてきてしまった。
最初は突然できた新しい家族を受け入れられなかったマインが、徐々に両親と姉をかけがえのない大切な存在としていく様が、自然な感じで描かれていて。本狂いではあるものの家族への愛情はまったく別で大切な順位を間違えないマインの姿が、いい。
家族の他に、大工の末息子ながら旅商人に憧れを持っていたルッツは、マインの最大の理解者であり、本作りの相棒であり、すべてを分かち合えるお互いが最大の味方。よくここまでマインの突飛な行動に辛抱強く付き合えるなルッツ……特に最初は感心するしかありませんでした。あれか、多分最初の内はパルウケーキでの餌付けですね(笑)。
びっくりするほど虚弱なマインの完璧なペースメーカーをしているところもすごい!自分の商人への夢を諦めずに、マインに助けられてついに実行に移して現在進行形で頑張っている姿もとてもいいです。彼の成長っぷりを見守るのは、ときに滅茶苦茶なマインのストーリーの中で癒しといいますか、とても微笑ましく良いものです。

商魂たくましい若手商人ベンノさん、片腕マルクさん、コリンナさんとオットーさん夫婦、ギルド長の孫娘フリーダ、色々魅力的な脇キャラがいっぱいいっぱいいまして、みんな好きだ~!!!特にマインに振り回され続けながら彼女の保護のため裏で幾重にも手を回してきていたベンノさんには恐れ入るしかありません。でも彼も苦労しながらもなかなか楽しそうなのですよね。ふふふ。

読んでいて、もし本がなかったら、家族を失ってしまったら、ときどき自分自身になぞらえて考えずにはいられない。
あまりに緻密に異世界での生活のありようが描かれているので。ね。初期のマインのちょっと周囲を考えてないところも、私自身実際こうなったらマインみたいになるような気がするし、責められないよなあ。
むしろ寝込んでばかりの家族の役立たずポジションから、ちょっとずつ前向きになり工夫を凝らして家族に認められ着実にこの世界で生きることをはじめたマインの姿は、とても尊い。

では追記以下に、ちょっとだけネタばれ含みの語りをさせてくださいませ。
第二部 神殿の巫女見習いの四巻目までで。


ここ二週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪


一巻目はパルゥケーキを作っている場面とトゥーリとリンシャンを作っている場面、ルッツと仲良くなっていく場面が好きかな。あと冬支度の描写がカルチャーショックを受けつつ楽しかった。

第二巻では、ルッツがマインの正体を疑って今の彼女を受け入れた場面が、やはり良かったな~。
あと番外編のエーファお母さんの語りが。マインの特異性はギュンターお父さん似だから!ということで普通に納得しているのがなんか色々すごいなと思いました。ギュンターお父さんとの馴れ初めとプロポーズのエピソード、素敵でした。
マイン自身はロマンスにはまだちょっと早い幼さですが(前世の麗乃も恋愛には程遠い人物だったようですし)、ご両親やあとオットーさんとコリンナさん、ベンノさんの失くなってしまった恋人を今でも想い続けている姿など、大人世代のロマンスがなんだかとても魅力的だなと思ったのでした。

第三巻は好きなところがたくさんあるなあ。いちばんは上にも挙げた、お父さんとお母さんがマインのために戦った場面でしたが。
上にはああ書いたものの、マインとルッツが幼いながらにちょっと良い雰囲気になっていて非常にときめきました。洗礼式の最後の入場のひとこまとか。(大人げなく嫉妬しているお父さんの姿もセットで。)ベンノさん視点で見るルッツの幼い独占欲とか。あと約束を確かめ合うマインとルッツのふたりの場面とか!
良い雰囲気だと思っていたんだけどなこの時点では……。
フリーダとイルゼとお菓子作りに精を出している場面も好き。(作っているのはイルゼだけですが。)確かにお茶の葉入りケーキなんて、なかなか思いつかないものなんでしょうね。似た者同士の女の子同士の友情が好き。隣で神経をとがらせているルッツとベンノさんもセットで。
ルッツの将来の夢にカルラお母さんが味方になってくれた場面もなんだか好きです。ルッツの兄弟関係理不尽だな……やっぱり女の子二人姉妹のおうちとは全然違うんだろうな。
あとオットーさんとギュンターさんの酒を酌み交わしてのやり取りも、胸が熱くなりました。
家族ごと街を守るというギュンターお父さんのぶれない愛情が格好良すぎる。彼もまたマインの特異性を全く問題視していないところが、底知れない器の大きさというかなんというか(苦笑)。こういうところはもしかしてジルさまに似てなくもない?かな?
はじめ優しかったのに手のひらを返した神殿長、淡々と無表情ながら結局マイン達を守ってくれた神官長。貴族の世界の怖さの片鱗にぞくっとしました。
チェインド・ライブラリー!私も一度見てみたいなあ。

舞台を神殿に移して第四巻。
マインの側仕え三人、最初はかなり微妙でしたが、ギルもデリアもだんだん可愛くなってきました。フランも七巻目まで読んで、おお、そんな事情があったのか……。
マインは神殿の巫女見習いになったとはいえ通いの生活で、今まで通り家族と暮らしているしルッツもだいたい側にいて一緒に行動してくれるし、安心感が全然違うなと思いました。なんかファンタジーにおいて「神殿に入る」って、自動的に住み込みで外の世界から全く隔絶されてしまうってイメージだったのもあり。
ルッツの家族関係地味に相当こじれているな……と心配だったのですが、神官長のナイスな対応で円満に解決して、本当に良かった。お父さん言葉が足りないだけでいいひとだった。

第五巻、ついに四つ目とじの本が完成!した場面が、しみじみと感動的でした。そばにいるのがルッツとトゥーリというのがまた良い。長かったですねえ。
トロンベ討伐の後半パート、貴族の平民への蔑視と理不尽さに読んでいて呆然としてしまいました。怖すぎる。
ピンチになったマインがとっさに助けを求めるのがルッツだったというのにきゅんときてしまいました。ルッツはめちゃくちゃ心配しただろうな。
そしてマインと意識同調して過去を辿った神官長の場面も印象的でした。
この場面を通じて、前世の母にいかに愛されていたか実感して別れの言葉を言えたマイン、なんというか非常に胸をしめつけられました。そして神官長のおもてにはなかなか出てこない優しさと公正さに泣ける。
トゥーリとルッツが服選びに闘志を燃やしている場面も微笑ましかったな。
あと料理人見習いのエラの番外編も、そういう世界なんだなあ、とちょっと何とも言えない気持ちになったのでした。
それは、神殿の孤児たちについても、そうなんですけれどね。
孤児たちを見捨ててしまっては本が読めない!というマインの理屈はことばだけ見るとひどいけれど、人間としてすごくよくわかるし実際誰だってこんなものでしょう。むしろためらわずに行動に起こせるマインはすごく優しい。このまっすぐさは、家族に愛されているからこそ身につけられたものなんだろうな。

六巻目、ついにグーテンベルクまで到達。しかしここまでくると、マイン個人の欲だけではなく、まさに世界が変わってしまう、そのスタートボタンはもう押されてしまった、というのをまざまざと突きつけられたような心地がして、周囲の不穏さも相まって、ひやりとしました。
シキコーザの処分の件も妥当だったのかもしれないけれど、価値観のかみ合わなさや確実に家族の恨みを買っているところが、とても怖かった。
そんな中でやっかいな青色神官ジルヴェスター様が突然登場。
祈念式のときに襲撃してきた敵も、底知れなくて怖かった。ダームエルさんの方は神官長の言葉も受けて、貴族だけれどだいぶマインの良き味方になってきてくれて、少し安心。
お産と弟の誕生の場面も、読みどころでした。衛生について口出ししつつもほかに全く何もできないマイン、もどかしいね~。
しかし無事に生まれた時は感動的でした。本当にマインの家族は愛情深くて素敵だなあ。巻を追うほどその気持ちが増してきます。

七巻目。
貴族の養女に、いずれそうなるという話ではあったけれど、急すぎる。こんなのひどい!!やりきれないです。いや神官長たちが、これでもマインに最大限の配慮をしてくれているというのもまた実感できるのですが。
ともかくジルさんの正体にはびっくり仰天でした。領主さまの弟か息子くらいかな?とはぼんやり思っていたのですが、まさかの本人。そして神官長は異母弟でしたかそうですか!神殿長までついでに親戚だった。
あんな理不尽な戦いの場面で、マインを守るためためらわなかったギュンターお父さんとダームエルが、格好良かったです。いったん家に帰されてまでマインの身を案じて駆け戻っていった彼の姿に打たれました。それにしてもフリーダちゃんの契約していた貴族様がそういうつながりだったとは。
家族の別れの場面が辛かったけれど、お父さんとお母さんとトゥーリの三人の愛情を感じて涙が。マインの祝福も染み入りました。
あとアルノーの番外編もひっそり衝撃的でした。神官長のことば、つまり、そういうことですよね。ひー、怖い。確かにあそこでアルノーが動かなかったのが事態がああまでなった一因なんだろうな。
フランもロジーナもヴィルマもギルも、マインの側仕え達はみんなマインに感化されて前向きに生きられるようになった感じで、良かったなと思いました。デリアもなんか複雑ではあるけれどでもよかった。未来はある。
ヨハンやハイディヨゼフ夫婦や、グーテンベルク仲間も確実に増えてきている。

そして私がなにげに一番ショックなのが、ルッツとのこれまでの唯一無二の相棒関係が、世界の違いで隔てられてしまいそうなこと。
特に第三巻目あたりから、ふたりになんとなく甘いものがあるかしらというときめきを少しもって読んでいたので、ショックが半端ない。(薄々将来の展開的に難しいかなと感じてはいたのですが、ふたりの可愛らしさに目をそらしていた……。)
ルッツ視点で「マインのお葬式」の場面を読むのは、きついものがある。ふー……。
まだ幼いふたりで、べたべたとはいえあくまで家族のような関係で、明確にそんな気持ちを自覚していたわけではふたりとも確実になさそうなので、まだよかったのだろうか。
ちらりと出てきた魔力のお話的に、マインとルッツの間には子供は出来ない、ということは少なくとも周囲に祝福される結婚は難しい、と思われますし。
ああ、しかし複雑な気持ちです。
そういうの抜きにしてもルッツはお気に入りキャラなので、出番が減ってしまうのは純粋に寂しい。
とはいえルッツは本を通してマインとのつながりは、それは確実に残るのでしょうけれど。
ここまでくると、マインが神殿に入る前にルッツに契約をさせたベンノの慧眼に恐れ入るといいますか。すごいね。
ふたりを見守っていたベンノさんも複雑じゃないかな。

と、こんなあたりが語りたかった感想でした。
そんなショックもありつつ、これはもう完結まで私も読むのをやめられそうにありません。
マインは次には何をやらかすのやら。
というか、ルッツやベンノさんの手を離れて、マインの暴走は誰が止めるんでしょう……。
Web版もそのうち読みだしてしまいそうです。

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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 香月美夜 

この記事に対するコメント

沼へようこそ

お待ちしておりました!(笑)
熱のこもった感想、楽しいです。

ベンノさんとルッツはほんとにいい男…!そしてトゥーリは大天使!
料理とかマインの発明とか、日常描写が細かいのも楽しいですよね〜。ちなみに私はこの作品を読んでからかぎ針編みにどハマりし、かぎ針を持ったことすらなかったのに、レース糸で花を編めるようになってしまいました…

読んでも読んでもまだある状態、嬉しいですよね。
書籍版もまだまだありますしきっとWEB版にも手を出されると思いますが(笑)、鈴華さんのコミカライズもとても良いのでよろしければぜひ!(と、沼の深い方への誘い)

URL | 奏音 #-
2019/02/21 17:12 * 編集 *

Re: 沼へようこそ

>奏音さん
コメントありがとうございます。

はい、順調に沼にはまっています(笑)。ずぶずぶです。
第三部も読みはじめましたが、またがらっと世界が変わって、でも前々からのキャラもちゃんと活躍していて、面白いですねえ~!
ベンノさんとルッツは本当に頼もしいですね~!そしてトゥーリ可愛いしがんばってる!!
奏音さんは、レース糸で花を編めるようになられたのですね!すごいです!!
確かに読んでいると手芸もやりたくなってきます。
(樹の繊維からの紙づくりはさすがにはじめるにはハードルが高い……。)
こんなに読んでいるのに物語としてはまだ半分にも達していないのが途方もないです(笑)。
コミカライズも気になっていますー!とりあえず小説版を最後まで読んでからでしょうか……。

URL | ゆり #SvKcs0as
2019/02/26 20:02 * 編集 *

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