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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『Unnamed Memory IV 白紙よりもう一度』古宮 九時 




幼い日にかけられた呪いの打破を願い、魔法大国トゥルダールを訪れたファルサスの王太子オスカー。
そこで彼は、城で眠っていた一人の娘と出会う。
四百年前の女王と同じ名前の彼女は、初対面の彼の事をなぜか知っているようで——。


『Unnamed Memory』、第二幕もこうして書籍で読むことが叶いました。
素晴らしい世の中ですね。
(未だに思うけれど第一幕で書籍完結予定だったなんて本当に読者の心が死んでしまう……)

表紙イラストはおそらく魔法大国トゥルダールの街並みがバック。
ファルサスの重厚な感じとはだいぶイメージが違っていて、どこか爽やかで近代的な街並みといいますか。ある意味窓の作りとか技術が現代日本以上にすごい。
オスカーとティナーシャの雰囲気も表紙イラストだけで第一幕とはちょっと違う感じがします。
目次部分のミラとちびナークのイラストも良い。ミラ思っていたよりお洒落な女の子だな。
そして書籍が驚きの分厚さと重量で、読み応えばっちりでした。
いやーすっごくすっごく面白かったです~!!!
そして巻末に『Babel』のお知らせもあり、これは嬉しいです待ち遠しい!!!

それでは以下はネタばれ含みの感想で、追記に収納します。
(サブタイトルやあらすじからすでに一部ネタばれなんじゃないか?と思わないでもないですが。でもまだいけるはず!未読の方がもしいらっしゃれば今からでも新鮮な気持ちで読んでいただきたい)

実はAct.2のこのあたりの部分、私が読んでいて辛いので、再読率がとても低い部分でした。
その辺のためらいもあって発売日から読むまでちょっと寝かせてしまった……。
でもいざ読んでみると、あれ、思っていたより辛くないかな。
ふたりの心の距離が思っていたより近いというか。もしかして書籍化にあたっての加筆かな?
再読率が低い分、より新鮮な感じで物語を楽しめて良かったと思いました。

第一幕のあのふたりの出会いからすったもんだの後に結婚するまでの物語がまるっと白紙に戻っているって、改めて読んでいて辛いものがあります。
それでもオスカーもティナーシャもこうして元気に生きていて再び出会えたし、トゥルダールは滅びず栄えていてティナーシャの背負っていた悲劇性はだいぶ薄まっている。レナートの身の上もだいぶ優しい。

なによりオスカーは第一幕の押せ押せモードではなく意識してティナーシャと距離を置こうとしているのだけど、これはつまり、ティナーシャがトゥルダールの次期女王候補だからという枠があり、王族としてこれを意識して超えないようにしているだけなんですよね。
トラヴィスに襲撃されたティナーシャの怪我に誤解して出てきた台詞とかデリラに最終的に突き放した台詞とかあと諸々を考えるだに、彼が持っている熱量は、実はAct.1と変わらないんじゃない?
得体が知れない魔族の男にひるまず彼女を守るため立ち向かい、純潔を失って強さを減じたティナーシャを、責任を持って自分が娶ってトゥルダールにも上手く交渉するとか、なにそれめちゃくちゃ彼女自身への深い愛情を感じますよ。(←ここでごろごろときめきました)
シルヴィアの言う通り、オスカーは何とも思ってない女性にドレスを贈るような男じゃないですよ。
過去のオスカーの面影をさまよっているティナーシャのまなざしに苛立っているのだって、過去の自分への嫉妬だし、きっと。
まあこの公人としては自分の気持ちは抑える以外の選択肢はない、というのが揺るがないのが、オスカーの格好良いところで、ロマンス的に見るともどかしいところではある。

ティナーシャの方も、Act.1と違って最初からオスカーへの好意があるけれど、彼女も自分の気持ちに最初から枷をかけている。
公人として結ばれるわけにはいかない、というのもあり、今のオスカーに自分は好意を持たれていない、と思い込んでいるのもあり。
愛情を最初から諦めた寂しく孤独な少女のようなティナーシャが、読んでいてたまらなくてぎゅっとしたくなります。
王族としてかつての女王として威厳も頭脳も胆力も備わっているけれど、魔女のティナーシャに比べれば、だいぶ不安定で未熟で、でもだからこその可愛らしさがあります。たまらない……どのバージョンのティナーシャも大好きだなと再認識しました。
なにより嫉妬心をちゃんと持っているのが新鮮。そして確かにこの力を持っていて恋に狂ったとしたら危険すぎる。周りも心配しているけど、本人もきちんと意識しているのが、また切ないね。
生真面目な努力家で勉強家な部分は何も変わっていないのも好き。
実はさりげなく好意を伝えているオスカーの言動が何一つ伝わっていない鈍感なところも。かわいい。
そしてトラヴィスに理不尽に戦いを挑まれたり自分を顧みない戦い方をしたり、相変わらず何度も死にかけるティナーシャ。
そうだよね~、過去に剣を習っていたのもなかったことになっちゃってますものね。

そんなもどかしいふたりのやりとりの中で、Act.2の最大の癒しなのが、シルヴィアさんです。
Act.1ではティナーシャの対等な友人はルクレツィアさんでしたが、Act.2では対等なのはどちらかというとシルヴィアの方になるんですよね。なるほどね。
当人たちと周囲の魔法士たちの二国の王位継承者達は結ばれない、という認識をひとりまるで無視して、ティナーシャがオスカーと結婚すればいいのにと堂々と願い、寵姫(仮)にイライラを隠さず、ティナーシャの着せ替えの機会を逃さないシルヴィアが、私好きすぎるな。
Act.1のオスカーの押せ押せモードをシルヴィアが一部引き取っているような気すらしてきました。
そんなシルヴィアのことを対等な友人として意識して、デリラに本気で怒って痛烈な言葉を浴びせたティナーシャの場面も、また大好きです。(男性陣は戦々恐々でしたでしょうね……)
あー、こんなに活躍しているのに(私の中のイメージで)、シルヴィアのイラストがなかったのがちょっと惜しい。
シルヴィア以外の家臣団はティナーシャに対して少し距離があるのがちょっと寂しくはありますね。ラザルなんかは後半になってくるとだいぶほだされてきた感じがしますが。
レナートのスマートな活躍っぷりがまた格好いい。禁帯出の本の小細工、似た者主従……。

印象的なエピソードは多々ありましたが、無言の湖へのピクニックは、中でも色々な意味で重要な場面。
オスカーの祖父ということはレギウスの息子で、本当にファルサスの王様ってみんな面白いな。安定した大国の余裕だろうか。
オスカーとティナーシャの心の距離感が少しずつ縮まってきているのが見て取れて、ときめきつつどこか危うくもあり。
ネフェリィ王女のエピソードもやはりほろ苦い。
そしてようやく出てきたヴァルトの暗躍。本当に彼の言動は意味不明なんですよね。
ティナーシャでも意味不明。

そもそもオスカーはなぜ「沈黙の魔女」にこんな呪いをかけられたのか?
彼の母親はかつて何をしたのか?何者なのか?
今まで明かされてこなかった部分が語られるのが次巻ですね。待ち遠しい!!!
ティナーシャとレジスのちょっとした隠し事も、楽しみですね。

そういえばちょうどカクヨム版での番外編のツイートが回ってきたので読んでみました。
これはティナーシャが王妃になった時間軸でのエピソード。
ドアンと少女の心の交流、自分が嫁いだからにはとファルサスの魔法士を鍛え上げようとするティナーシャの決意、世界につながる精霊魔法の美しい描写、色々相まってとても好きなお話でした。
クールで冷静な実力主義者ドアンの素の優しさを垣間見られたのが良かったです。
彼女はもしかして将来のドアンのお嫁さんかな。(勝手に妄想)




ここからはWeb版先々のMemoriaeシリーズすべて込みのネタばれつぶやき。注意!!!




この巻のエピソードが辛くなかったのは多分、『鳥籠の女』とか『月蝕』とか『紅毒』とかが比較対象だからかな……これはこれで良いのですけどね。
シルヴィアとレナートの出会いに、将来のふたりを想像してちょっとにこにこしてしまいました。
第一幕が「なかったこと」になってしまったのだとしても、最終的にはふたりの記憶のなかには残る、のが、なんというか、救いなのかな。これ。(第二幕も)
二国の王様と女王様がそれぞれの王位継承者を作る、姿が重なるカップルが一組……。


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カテゴリ: Memoriae シリーズ

タグ: no-seenflower 

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