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『天山の巫女ソニン 5 大地の翼』菅野 雪虫 

天山の巫女ソニン(5) 大地の翼天山の巫女ソニン(5) 大地の翼
(2009/06/27)
菅野 雪虫

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昨夜、ついに(睡眠時間を削って)読み終えた、ソニンシリーズ5作目。完結編。

とうとう起こってしまった、戦。
けれども、沙維のイウォル王子、江南のクワン王子、巨山のイェラ王女の3人の聡明な若者たちは、それぞれの国で、自国の民、加えて他国の民を案じ、何とかして犠牲を伴わずに戦いをやめさせようと、真剣に考えていたのでした。
三国の平和を目指して、彼らとソニン、そして次第に増えてきたその協力者たちが、必死に知恵をめぐらせ、大地を駆け抜けていき…

ほー…完結してしまいましたよ。
読んだ後の心地よい達成感で、満ち足りています。

1作目を読んだだけで好きになりましたが、続きを読むごとに、どんどんおもしろさが増していった感じがするのは、気のせいではないと思います。
正直、これだけの壮大で複雑なテーマと、こんなにいきいきした魅力をはなつキャラクター達を、ここまで丁寧で読みやすい文章とストーリー構成で、たった5冊の本の中にきちんとまとめ切ってしまえている、というのが、ちょっと信じられないくらい。

戦が始まるまでの経緯、人の心の移ろいやすさ、ときになぜ?とぎょっとするほどのおろかさ。
…架空の世界のお話なのですが、まるで、今私たちが生きている現実世界を、鏡にうつした姿を読んでいるようで、われにかえると、ちょっと怖いかも。
けれども、お話はあくまで優しい少女小説(というとまた違うのかな?)であり続けていて、すみずみまで丁寧に紡ぎあげられていて、ラストはあたたかくて確かな希望でかがやいています。読み終えると幸せな気分になれます。

「小さな者、弱い者が虐げられるのは嫌だ。権利や義務がどうこうというより、ただ嫌なのだ、私は」
戦を憎むイウォル王子のこの台詞(聞いているのはソニン)が、一番心に残りました。
自分自身が、口のきけない「弱い者」であるからこその台詞かな。
でも、「そうか、こんなシンプルでいいんだ」と、はっとさせられました。

そんなイウォル王子も、クワン王子も、イェラ王女も、そしてソニンも、本当に成長したなー。
三国の中で、皆が離れて出会って協力し、危機を乗り越えていく様は、もうすごい。すごいです。皆格好良いよ!

何より、ソニンとイウォル王子の信頼で結ばれた関係が、素晴らしいです。
戦の前の緊迫感のただようシーンも、ムサの口に手を入れようとする瞬間に目を見交わすシーンも(手を失うかも…とか、もはや超越している!)、お祭りの前夜のラストシーンも、読んでいるだけで満ち足りてきます。
よくよく考えてみると、王子とその侍女という関係も、すごいですけれどね。夜中に18歳の王子の寝室でふたりっきりで会話していても、そんなの当然なんですから。
でも変な意味で読んだら失礼ですね、このふたりの場合は。物足りなさがない…といえば嘘ですが(笑)、でも良いのよ。

お祭りの準備を眺めながら、王子とつないだ手を見て、幸せとはこういうことかもしれない、と思えたソニンが良かったかな。
ノアがあんなに願っていた、ソニンの地上での「幸せ」ですが、あえてことばでは表現していない、というところに、はてしない思いがこめられている感じがしました。

クワン王子とセオのコンビも、何だか良かったです。
クワン王子の本性は、海辺のガキ大将だということが、よーく分かりました(笑)。
仕返しにフナムシをぶちまけたクワンと、影でそのフナムシを集めさせられていたセオ。ふたりの過去の関係、今と全然変わっていないんですね…それにしてもフナムシって懐かしい。引っ越す前に住んでいたところは海の近くで、よく見かけたんですよね。
それに、セオが、彼自身が受けてきたのであろう「人をつくる」教育のおかしさに気付けたのも、安心しました。

イェラ王女の父との対決は、緊迫感がありました。
あー、娘の顔を切りつけるなんて、最悪…でも全然負けていない王女さま、ものすごく素敵です!

ソニンは、本当に、大地を自由に駆け抜けていく、鳥なんですね。
夢見で魂を飛ばすことができなくなっても、自分の足を使って地上を駆けていくことはできます。かえってその方が、出会い、学ぶことがいっぱいできるはずですよね。
そして、そんな彼女が羽を休めに行くことのできる場所が、イウォル王子の下なのでしょうか。ね。

何だか、この世界のお話、まだまだいくらでもふくらませそうですよね。(というか、正直、少々読み足りない気分…きれいにまとまっているのは確かなんですが。)
皆の未来とか、他の王子のお話とか、沙維の先代の王様と王妃様のお話とか。
続編…あるのかどうか不明ですが、あったら嬉しい。

いま思ったけれど、せめてソニンが侍女の契約を終えるという、彼女が18歳の時点でのお話、読みたいです!そのときソニンが選びとる未来を、知りたいです。
…でも少なくとも、イウォル王子がソニン以外の女性を(どんなかたちにせよ)選ぶということは、どうしても考えられない(笑)。

(まとめになっていませんが)まとめ。
今、市立図書館で、私みたいなのが5冊とも借りきっちゃっているのが、贅沢すぎる!と本心から思える、そんなシリーズでした。


昨日と今日「天山の巫女ソニン3 朱烏の星」「天山の巫女ソニン4 夢の白鷺」(2回)の記事に拍手下さった方、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(和風)

テーマ: 児童文学・童話 - ジャンル: 小説・文学

タグ: 菅野雪虫 

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