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鳥にしあらねば 

世間(よのなか)を 憂しとやさしと 思へども 飛び立ちかねつ 鳥にしあらねば

この歌は、『万葉集』に収録されている、山上憶良(やまのうえのおくら)という人の作品です。
日本史を学ばれたことがある方なら、教科書等の奈良時代の部分に「貧窮問答歌」という長い歌が載っていたのを、見覚えている方もいらっしゃるかもしれません。これは、その貧窮問答歌の反歌にあたります。
(「反歌」…長歌の後に添える短歌で、直前の長歌の要約や補足の役割を持つ。)

現代語に解釈してみると、以下のような感じになります。

世間がつらい、恥ずかしいなどと感じたところで、私たちは人間で、鳥ではないのだから、どこかへ飛び去るわけにはいかないのだ…

どうしていきなり『万葉集』の話題を出してきたのか、と言いますと。
この歌は、私が中学3年生で卒業間近だったあるとき、当時の校長先生が卒業生のために、授業みたいな形式で教えてくださったものなのです。ひとりひとりにしたためていただいた短冊は、今も私は部屋に立てかけています。

校長先生なんて、私の記憶の中ではいまいち馴染みの薄い先生たちばっかりでしたが、中学3年生のころ着任してこられたこの先生だけは、ちょっと特別でした。
というのも、この先生、吹奏楽部の元顧問の先生で、私たちの部活動にも、結構密接に関わってくださっていたのです。

私は3年生の4月から11月に引退するまでしかお付き合いがなかったけれど、うーん、「人格者」といったイメージが残っています。
私が廊下で1年生の後輩としゃべっていたら、「後輩をちゃんと世話して仲良くしてくれとるんやな」みたいに声をかけてくださったこともありました。(私は当時、本当に人づきあいが苦手な子で同級生にいまいち馴染めなくって、そんな自分でも純粋に慕ってくれる後輩たちがその分大好きだったのです。)
とにかく、そんな先生が授業してくださったものなので、余計に心に残っているのでした。

当時の私は、この歌を教わったとき、「先生はなんでこんなに暗い歌を、卒業のはなむけに選んだんだろう…?」と、正直疑問でした。
もっと、未来へと明るい気分になれることを話すのが普通なんじゃ…と思っていました。

あのころの私は、当時なりに悩みはあったけれど、それでも努力しさえすれば、たいていのことは未来にはきっと叶うと信じていました。
何不自由なく生活でき、勉強できる環境があたえられ、楽しいこともいっぱいできて、普通に高校に大学に進学するのもできることが約束されていた自分が、どれほど恵まれた立場にいるのか、何にも分かってはいなかったです。

先生は当時、「これからの人生で辛いことがあったら、この歌を思い出してみてください。「鳥にしあらねば」と、何回も頭の中で唱えてみてください。そうしたら、何か勇気がわいてきて、解決につながるかもしれません」みたいにおっしゃっていました。(うろ覚えです。)

私が大学生になって、辛い思いをして、実際にこの歌を頭の中で唱えて、すがってみたこともありましたが。
…救われなかったですねえ(苦笑)。やっぱり現実は、目をそむけたくなるままでした。
鳥のように飛び去るみたいなことはもちろんできず、私は別の意味で、現実逃避してしまいました。
今となってはもう、何も痛みもなく、良い経験したな…と自然に思えますが。

病気になったときもそうだったかな。一日を過ごすだけのことがひどく耐えがたくて、この歌を思ったのかどうか…記憶に残っていないのですが、多分唱えていたと思います。

実際に目に見える形では救われなかったのかもしれないけれど、そういう辛いときに思いだせるようなものが存在しているというだけで、それはある意味救いなのかなあ…と、今は何となく思います。
「鳥にしあらねば」繰り返すフレーズとしては、言葉がシンプルできれいで、なかなか気にいっていますしね。

先生は、高校生のころにこの歌を知って、当時は『万葉集』を勉強して国語の先生になりたいと思ってらしたそうです。しかし大学卒業のころには、音楽にあこがれるようになり、めぐりめぐって音楽の先生になっていたとか。
あの当時には下手なりに吹奏楽部員だった私が、後に大学では日本語学を学び、『万葉集』の講義も受け、国語の教職の授業も受けていた…
色々考えてみると、人生ってなんだか不思議です。


昨日と今日「『天山の巫女ソニン2海の孔雀』菅野雪虫」、「『天山の巫女ソニン3朱烏の星』菅野雪虫」、「『天山の巫女ソニン4夢の白鷺』菅野雪虫」、「『天山の巫女ソニン5大地の翼』菅野雪虫」、「京都のはんかち」(2回)の記事にそれぞれ拍手下さった方、どうもありがとうございました♪
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カテゴリ: 日常色とりどり

テーマ: 日記 - ジャンル: 日記

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