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『“文学少女”と慟哭の巡礼者』野村 美月 

“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)“文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)
(2007/08/30)
野村 美月

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『文学少女』シリーズ、第5作目。
とうとうやってきた、心葉くんの辛い過去・美羽ちゃんとの再会。そして彼女の思惑に、心葉くんが悩みどん底まで落とされながらも、周りの人々に支えられ、自身で決着をつけていくお話でした。

今回の題材『銀河鉄道の夜』、このシリーズでメインで出てくる作品の中では唯一、まともに読んだことがあって、今でも大好きな作品です。なので、一体どういう風にお話に関わってくるのか、楽しみにしていました。(いや、美羽ちゃん編ということで、明るいお話にはならないことは予想していましたけれど…)
『銀河鉄道~』以外にも、『マリヴロンと少女』、『黄いろのトマト』が登場してきて、何だか嬉しかった。(同じ文庫の中に収録されていた短編だったのです。)
『マリヴロンと少女』は、はじめて読んだときはなにがどうしたいのか全然分からない短いお話だったけれど(笑)、ワンシーンの情景が、鮮やかに印象に残ったものです。

ついに本格的に登場しましたね、美羽ちゃん。
正直、シリーズの途中までは、彼女はすでにこの世にいないものだと勘違いしていた私ですが(汗)、この巻ではものすごい存在感をはなっていました。こ、怖ーい…
…いや、ラスト近くまではひたすら美羽ちゃんの心の闇にびくびくしていたのですが、「ブルカニロ博士」の正体と意図、これまでの行動が明らかになったときの衝撃は、半端ではありませんでした…もはや、何と言ったらいいのか分からない。

美羽ちゃんの作為によって、ななせちゃん、芥川くん、お母さんといった心を許した人たちを、どんどん信じられなくなっていく心葉くんは、読んでいて辛かったです。彼が美羽ちゃんを慕う心の深さに驚く一方で、ここまで理想化して絶対的な信頼を寄せ続けられるというのは、確かに、相手にとっては辛いかなあ…と思わずにいられなかったのも、また事実。
それにしても、ななせちゃんや芥川くんへの仕打ちは、許せない!とか思いつつ読んでいましたが、次第に彼女の実際の家族関係なんかが明らかになってくると、もう美羽ちゃんもどうしようもなかったんだなあ…としか思えなくなってきて、毒を吐き続けずにはいられない彼女が哀れでした。
家族がお見舞いにきてくれる人がうらやましく思える気持ちは、本当によく分かります。

今回は、ななせちゃんと遠子先輩が、それぞれのスタイルで心葉くんのことを想い、彼のために行動をおこしていて、ふたりともとても素敵でした。
いくら美羽ちゃんに陰湿にいじめられても、心葉くんを想う気持ちを一片たりとも揺るがさず、彼女の嘘を見抜いて取っ組み合いのけんかまでしかけたななせちゃんは、恋する乙女の強さを思い切り見せつけてくれました。なんて良い子なんだ…
ぼろぼろに傷ついてどうしようもなくなってしまった心葉くんを、優しく包みこんで、すべてをうけとめて立ち直らせてあげた遠子先輩も、本当に素敵でした。読んでいるだけで、遠子先輩の優しいぬくもりに癒されていく気分です(笑)。

ラストのプラネタリウムのシーンも、たいへん良い感じでした。やっぱり『銀河鉄道の夜』にはプラネタリウムが似合いますね!
宮沢賢治だって、本当は望む自分になれなくて苦しんでいて、それでも彼の物語は残り、同じ苦しみを抱える人々を救っているのだ…という遠子先輩の語りは、「ああ、なるほど…」と深々とうなずいてしまいました。
私も確かに、ずっとずっと、誰かを幸せにできる人間に、なりたくてたまらなかった。現実のみにくい自分との違いに絶望しながらも、蠍にあこがれた。
後、私はカムパネルラの方の心情になって『銀河鉄道の夜』を読んだことがなかったので、そういう点でも色々と新鮮でした。

美羽ちゃん編がきっちり決着がついた感じで、心葉くんの未来にも、新しい人が…
…私的には、かなりもやもやが残る選択です(苦笑)。いや、くどいですが、ななせちゃんは本当に良い子なんですけれど!
遠子先輩は、意図して姉として接してきて、気取られないように身を引いている感じだからなあ。
「哀しくてたまらないときに、綺麗に笑える人よ」は、ずきっときました。

223頁の遠子先輩と心葉くんのツーショット、あとがきのウェイトレス遠子先輩のイラストがかなりお気に入りです。
いや、竹岡さんのイラストは、本当に全部素敵なんですけれどね。


昨日と今日「『伯爵と妖精~愛しき人へ十二夜の祈りを~』谷瑞恵」、「暑さのさなかで」、「7月Cメニュー~スチームクッキング・こだわり飲茶~」(3回)の記事にそれぞれ拍手下さった方、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 『文学少女』シリーズ

テーマ: ライトノベル - ジャンル: 小説・文学

タグ: 野村美月 

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