Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『大坂城恋綺譚 ~桜想う姫~』智凪 桜 

大坂城恋綺譚 ~桜想う姫~ (ルルル文庫)大坂城恋綺譚 ~桜想う姫~ (ルルル文庫)
(2010/09/25)
智凪 桜

商品詳細を見る


豊臣秀吉の家臣の片桐貞隆の娘・お蝶は、物の怪が見える能力を持つがゆえに、忌み嫌われていた。そんな中、同じ能力を持つ石田三成と出逢い、大切なことを教わり、いつしか彼に恋心を抱くように。
けれども戦国の世の習い、お蝶の恋は引き裂かれる。死んだように生きていたお蝶だったけれども、豊臣に嫁いできた千姫の話し相手として大阪城へ上がることとなり、そこで不思議な青年と出逢うことに。

ルルル文庫の新人さんの作品です。
実は日本史もの少女小説大好きな私なので、先月の新刊予告から気になっていたのですが、やはり買ってきて、読んじゃいました。おすすめもいただきましたしね。石田三成…微妙なマイナーさが良いです(笑)。

この手の歴史ものですと、倉本由布さんのコバルト文庫のお話がずっと私の中にあって、この本を読んでいるときも、最初の内は「ああ、なんだか倉本さんのお話と違うなー。微妙だなー…」とか、失礼にも思っていたのですが(汗)、お話が進んでいく毎に、そんなのは気にならなくなって、夢中でラストまで読みました。
戦乱の世のお話ということで、人死にや肉親の争いなど重ためな箇所もある割には、読んでいてふしぎに影がなく明るくておだやかで、優しい気持ちになれました。まるで桜の花咲く春のひだまりのよう。
皆さん、根は良い人たちばかりだからかなあ。この時代の徳川と豊臣の対決が素材になっているにしては、逆にすごいかも(笑)。

物の怪つきと嫌われてきたお蝶が、三成の教えで自分の力に前向きに生きられるようになり、そんなお蝶が偶然出会った物の怪におびえていた本多忠純の心を救い、そこでお蝶にもらったものをずっと忘れなかった忠純が、今度は三成の死で自分も死んだ心地で生きるようになってしまったお蝶の心を救い…生きる上での大切なものが、人の間でめぐりめぐっていくお話の流れが、とても良かったです。
そして、忠純のおかげで、お蝶は三成を見殺しにしたことをずっと許せなかった父親と和解することができたし、ラストでは、今度はお蝶のおかげで、忠純と彼を認めようとしない父親との殺し合いを避けることができた。親しい者を思う心の大切さ、みたいなものも、確実に受け継がれていて、それもまた良かったなあ。

序盤のヒーロー・三成は、最期までそっけなかったけれど、お蝶に遺した教えや言葉、何より死後になってお蝶の手に渡った手紙には、ほろりときました…ストイックさ加減が良いですね。
そして幼いころよりお蝶にずっと恋していて、他の何からも彼女を守ると決意している忠純の方も、健気でとても良かったです。ぱっと見は優男といった風情なのに、文武共に優れていて、芯に秘めているものは誰にも負けずに一途で、たまらないですねえ。ここまで愛してもらえるお蝶が、ちょっとうらやましいよ(笑)。

三成を一途に慕っていた幼い日から、成長し、忠純の言葉に導かれつつ、それまでの自分の視野の狭さに気付き、きちんと受け入れていったお蝶の姿も好印象でした。

お蝶の侍女のさよも好きです。彼女の忠実さにはほれぼれします。
控えめで優しげな女人かと思いきや、結構言うことは言いますね。「勝った!本多どのは二番ですね!」と勝ち誇っているラストのさよが好き(笑)。
彼女にもいつか、幸せな恋があるといいなあ…と思ってしまいました。

本多正信…名前には確かに覚えがあったのだけれど、読んでいる間は、徳川家康の重臣だという以外、どうしても思い出せませんでした(汗)。日本史勉強してきたのに、日本史ものの小説や漫画もそれなりに読んできたのに、忘れてしまうのはなんだか悲しい。
片桐の名前も、覚えはあったけれど、やっぱり思いだせなかった(汗)。
そんな私でも、千姫さまのことは覚えていたのに、結局一シーンのみの登場だったという…できれば千姫さま、もっと活躍してほしかったな。せっかくイラストもあったのに。

新人さんの作品としては、完成度がとても高く、素直に良いなと思えるお話でした。
作者さん、日本史には相当造詣が深そう。次回の作品にはやくも期待度大です。

関連記事

カテゴリ: ルルル文庫

テーマ: 少女小説 - ジャンル: 小説・文学

タグ: 智凪桜 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/660-aee6e47f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)