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『恋のドレスは明日への切符 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』青木 祐子 

恋のドレスは明日への切符 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)恋のドレスは明日への切符 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
(2006/12/22)
青木 祐子

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『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ、再読第5作目。
闇のドレスとアイリスとの関わりをおそれて、貴族からのドレスの依頼を断ることにしたクリスとパメラ。
裕福な鉄道王の娘・パトリシアのドレスをひきうけたクリスだったけれども、パトリシアの付き添い人(コンパニオン)・イヴリンは、どうやら深い事情がある女性のようで。
ロンドンにいたころのクリスを知っているらしい人物もあらわれて、逃げていた過去と対峙せざるをえなくなっていくクリス。シャーロックもクリスを気にかけつつ、自ら闇のドレスに対して行動をおこしはじめていくことに。

再読も5冊目です。パトリシアとイヴリン、ユベールが初登場したお話。
この巻は、他の巻に比べていまいち、再読するのに手がのびませんでした。
うーん、私はどこまでもクリスの味方なので、『追憶の糸』のあのラストシーンを読んだ後しばらくの間、ユベールとイヴリンのふたりを、どうしても好意を持って応援できなくなってしまったんですよね(苦笑)。
『湖の恋人』までたどりついた今現在になって、ようやく冷静に、愛情をもって、ふたりの物語に思いをはせることができるようになった感じです。
それに、正直私は、ユベールよりも断然、アントニー派ですしね(笑)。

でも、実際に再読してみたら、思っていた以上にひきこまれて、ぐいぐい読んでいってしまいました。
昔の印象よりも、はるかに動きがある巻で、びっくりしました。
あれですよね、進んでいないのはクリスとシャーロックの恋愛面だけで、お話そのものとしては、かなり進んでいました(笑)。

パトリシアもイヴリンもユベールも、はじめのうちはとっつきにくいキャラクターたちでしたが、読み込むごとに、きれいな部分もそうじゃない部分も持ち合わせている、生身の人間らしい人たちで、ああ、こういうのもいいなあ、と素直に思えました。

性格も身につけているものも現在の地位も全然違って、ときに憎しみの気持ちをいだいても、やっぱりお互いを姉妹のように大切に思っている、パトリシアとイヴリンの関係が好きです。
パトリシアがユベールに想いをよせるようになったのも、はじまりは、大好きなイヴリンが彼に好意を持っているのを察して、それに影響されて…みたいな感じだったのですね。多分、クリスはそういうのも分かっていたんでしょうね。
パトリシア、確かにお金持ちのわがままな娘さんだけれど、でも良い子ですよ、やっぱり。
パメラが「イヴリンさまよりも、パトリシアさまに好意を持つ男性の方が多いと思う」みたいなことを言っているのも、なんだか、納得しました。

パトリシアにクリスが作ったドレス「雪中花」、今までいまいち気に留めていませんでしたが、すごく良いドレスですね。
お客様のこころに静かによりそうクリスのやさしさが、幸せな恋のドレス以上に効果的にあらわされているドレスだなあと、感心してしまいました。
失恋した後のパトリシアが、薔薇色のドレスを着るシーン、なんというか、優しかったです。

肝心のクリスとシャーロックの仲は…じれじれですねえ(笑)。
ドレスをつくって疲れ果てていたクリスの手を、シャーロックがそっと握りしめているあのシーン、もどかしいことこの上ないですが、うーん、やっぱり良いなあ。イラストもとても良いです。

シャーロックの煮えきらなさは、本当にもどかしいのですが…ラスト、アイリスを撃ったあのシーンで、一気に色々と見直してしまいました。
あの行為が最善だったかどうかは、私には分からないですけれど。大切な人のために、いざというときにそこまで行動におこせる男性って、そうそういないと思います。
シャーロックってやっぱり、惚れ惚れするほど格好良い、素敵な英国紳士なんですよね。
でもねー、そこまでクリスを大切に想っておきながら、どうして恋愛感情をはっきり認められないかなあ(笑)。

イヴリンとユベール、彼らに関連しつつ、ちらほら書かれ始めたクライン家、トレヴィシク家、昔の「薔薇色」の事情…読むべきものが色々つまった5巻目でした。
ラストのシャーロックとクリス…それぞれ、ぞくりとするものがあります。特にクリスはね。

そうそう、何気にパメラとイアン先生の仲も、良い雰囲気になっている描写がちらりと。
以前読んでいたころは、パメラとイアン先生の方が、クリスとシャーリーより進展するのは早いかもしれないなーとか思っていたような記憶がありますが…未来は分からないです(笑)。


以下、お気に入りのシーンをセレクト。


わたしはあの人の何も損なわせたくないけれど、すべてを損なっても好きだろう―。(84頁)

―クリスの恋のかたちが美しくて、きゅんときます。


あなたの恋はかなわない。冬に花を咲かそうと思ってもかなわないように、それは仕方ないことなの。誰のせいでもない。
だから、いやな気持ちにならないで。手の届かないものを望まないで、絶望しないで。
自分をきらいにならないで、自分の魅力に気づいて。(134頁)

―わがままでかんしゃく持ちのお嬢様でも、心の中では、苦しくままならない恋に泣いているパトリシア。
そんな彼女の心に寄り添うクリスの真心が、読んでいて本当にやさしい。


だが、シャーロックは笑わなかった。
逃げるつもりもなかった。
自分がアイリスを追ってきた意味がはじめてわかった。
大切な人を守れないのなら、貴族である意味などない。(233頁)

―シャーロック、格好良いです。しみじみ。


以下、個人的簡易メモ。
パトリシア・ソールズベリ、イヴリン・トレヴィシク、ユベール・サリフ、セイラ(パトリシアのメイド)、初登場。ハノーヴァさんも、ドレスの依頼にやってきました。
クライン家とヒューバート・クライン卿の名前が出てきました。
リンダは、はじめはクライン家の洗濯女中。お針子の才能で重宝されて、やがて愛人になり、「薔薇色」を開いたらしい。クリスは7歳までクライン家に住んでいたようです。


後、私のこの記事を読んでくださっているような方は、もうとっくにご存知かと思いますが、一応。

青木先生のブログに、現在(12月21日)、湖の恋人の断片・その2が掲載されています。
最新刊まで読まれている方はぜひぜひ。(こちら
読んでいて、ものすごーく甘くしあわせな気分にひたれました。
読めば読むほどに、シャーリーにつっこみどころがありすぎます(笑)。

私にとってはもう、最高のクリスマス・プレゼントでした。ごちそうさまでした(笑)。


昨日、それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ

テーマ: 少女小説 - ジャンル: 小説・文学

タグ: ヴィクトリアン・ローズ・テーラー  青木祐子 

この記事に対するコメント

こんばんわ!fallcloverさん

最近、ヴィクトリアン・ローズ・テーラーの再読記事をたくさん掲載してくださっているので、ちらちらとお邪魔しているのですが、ここ2,3日忙しかったので、
コメントも拍手もできず、失礼しました。
ヴィクロテ以外の記事も含めて、いつも楽しく拝読させていただいています。

先日は拍手への返信もありがとうございます。
いつも丁寧な返信をいただいて、恐縮です。

ところで、さっき、青木先生のブログに行って、「断片・その2」を堪能してまいりました!
あまりのうれしさに先生のブログにまでコメントを投稿してきてしまいました(笑)すぐには公開されないようですが。

そのコメントにも書いたのですが、今回の「断片・その2」を読んでいて、「湖の恋人」でクリスが先に出発したあとの、シャーロックの意味深なモノローグを思い出してしまいましたよ!(fallcloverさんなら、お分かりいただけるかと・・)

加えて、挿絵のあきさんの巻末イラストのコメントも思い出され、思わず笑いが・・。幸せすぎます。

クリス、強い・・・。
しかも無自覚だから、「シャーロック、がんばれー」と思わず応援してしまいましたよ。(いろんな意味で・・・)

もとい、fallcloverさんの感想を拝読しながら、私もヴィクロテを再読し始めました。確かに、お話しがここまで進んだから気づくことってあるんですね。
私も、この巻はシャーロックにとって、クリスが無条件に守るべき相手=かけがえのない存在、になった重要な転機だったんだろうな・・・と思います。

お客様のパトリシアも、イヴリンもそれぞれに素敵な女性で、どちらも幸せになってもらいたいな。
ドレスの描写も素敵でしたね。いつか、コバルト本誌とかでもいいので、クリスの作ったドレスのコレクションをして欲しいなあ。あきさんの絵で。
それぞれに想像するのが楽しいというのもあるんですけど、なんとなく。

毎回、長文で申し訳ありません。
いつも、fallcloverさんの深い考察に感心しつつ・・
このあたりで、失礼いたします。

これから、また寒くなるようですので、ご自愛くださいね。

URL | かのん #-
2010/12/23 01:37 * 編集 *

Re: タイトルなし

>かのんさん
コメントありがとうございます。

いえいえ、お忙しい中、いつもコメントしてくださって、本当に嬉しいです!
いつもしつこく言っていますが、このシリーズのことは、私、いつもお話したくてうずうずしているので、本当に大歓迎です(笑)。

こんな自己満足の極みのような記事を、読んでくださる方がいらっしゃるなんて、ありがたすぎです。頭が下がります…
再読記事なもので、シリーズの最初の方の作品の感想なのに、実は、シリーズ最新刊まで読んでいらっしゃる方にしか分からないような内容ばかりだったり…なんとかならないものかと思いつつ、結局、自分の書きたいようにしか書けません(苦笑)。

「湖の恋人の断片」、良かったですよね~!
シャーロックの意味深なモノローグ、ええ、もちろん、分かりますとも(笑)。
クリス、ほんとに強いですよね(笑)!本編でも思いましたが、無自覚って最強ですね。
シャーリーの気持ちを、あれやこれやと想像すると、頬がぴくぴくします…ああ、おかしい。
でも本当に、しあわせなお話でした♪
もう、今年のクリスマスプレゼントは、これで十分です私…。

ところで青木先生のブログ、クリスマス仕様ですね。きらきらロマンティックです☆

再読のことについても触れてくださって、ありがとうございます!
そうそう、今だからこそ気づくことって、あるんですよね。

>コバルト本誌とかでもいいので、クリスの作ったドレスのコレクションをして欲しいなあ。あきさんの絵で。
それは素敵なプランですねー♪ぜひとも実現してもらいたい…あきさんのイラストを堪能したい…。
もしそんなものが出されたら、私、何があっても入手します(笑)。

ええ、これから寒くなるみたいですよねえ。
かのんさんの方も、お体に気をつけて。
またお暇な時に遊びに来ていただけると、とても喜びますので♪

URL | fallclover #SvKcs0as
2010/12/23 20:26 * 編集 *

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