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『とりかえ風花伝 完結篇上下巻』柳原 望  

とりかえ風花伝 完結篇 上 (花とゆめCOMICSスペシャル)とりかえ風花伝 完結篇 上 (花とゆめCOMICSスペシャル)
(2010/06/18)
柳原 望

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とりかえ風花伝 完結篇 下 (花とゆめCOMICSスペシャル)とりかえ風花伝 完結篇 下 (花とゆめCOMICSスペシャル)
(2010/06/18)
柳原 望

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戦国時代、尾張国は、伊勢守家と大和守家の両家の争いが続いていた。
乾山(いぬいやま)の領主の娘・風花姫は、鬼ともうわさされる異形の武者・白鬼丸(びゃっきまる)と出逢い、くちづけを交わすと身体がいれかわる秘密を持つことに。
風花と白鬼丸のふたりをはじめとして、勝幡城主で、風花と白鬼丸の兄のような存在でもある織田信貞(のぶさだ)、その他両家のひとびとも、それぞれがかかえる大切なものを守るため、動乱の時代を自分の力で精いっぱい生き抜いている、そんなものがたり。

(ちなみに、織田信貞は、織田信長の祖父にあたる人です。)

柳原望先生の『とりかえ風花伝』、完結篇を上下巻、今年の一番はじめに読みました。
このシリーズ、花とゆめコミックスで全3巻で完結していたのですが、作者さんがその後を同人誌で描かれていたものを、今回この完結篇にまとめられたようです。

(私も最初勘違いしていましたが、花とゆめコミックスの3巻分のお話は、この完結編には収録されていません。最初に3巻読んでから、この完結編を読まないとだめですね。)

花とゆめコミックスでも、一応お話としては終わっているのですが、完結篇を読んだ後は、やっぱりここまで読まなければ作品を読み終えたことにはならないなーと、深々と感じました。

作者さんが目指されていた通り、本当にドラマティックな戦国時代もの少女漫画でした。
完結篇上下巻読みおえた後、「ああ私、すごくいい漫画読んだ…」と、しみじみ満ち足りた思いにひたれました。

以下、例によって、やたらにボリュームがある上に微妙にネタばれが混じっているので(一応必死でぼかしたのですが)、追記にたたむことにいたします。
ご希望の方は、追記よりどうぞ。

この作品に出てくる登場人物たちは皆、完璧なヒーローやヒロインじゃありません。欠点もいっぱい持っています。風花も百鬼丸も例外じゃないですね。
優しい人でも、それゆえの弱さが、ときに罪になったり。
けれども、完全な悪人もいませんよね。
花とゆめコミックスだけ読んでいたころでは、いけすかないキャラとしか思えなかった信安や達勝だって、お話が進むにつれて、やっぱりこの人たちも、良いところあるじゃない…と、ほろりと感じいったり。

とにかく、いっぱい間違ったことをしたりぐるぐると迷っていたりの人たちが、ストーリーが進むにつれて、それぞれにぐっと成長、そこまで言わないにしろ変化していって、自分で考えて自分自身で戦い抜いて、それを乗り越えてのあのラスト…という流れが、とても良かったです。

心に残った宝石のようなエピソードは、取りあげきれないくらいに、いっぱいあります。

「一番に愛されない」辛さをはじめて分かち合うことができて、自然に惹かれあった、信安と悦。信安、恋をして本当に成長しましたね…追い詰められた悦を、信安がかばいぬいたあのシーンがとても良かった。

「人」としてはじめて出向いた戦場で、あんな最期を迎えた虎ちゃんこと狐虎と、彼にもらった色々なものを、しっかりと受け継いだ金剛丸。

与十郎おとうさまと風樹おかあさま、若き日の信貞の3人の、船田合戦時代の過去エピソード。
夫婦の出逢いは、『更級日記』のたけしば伝説を彷彿とさせる明るい恋物語でしたが、後々の3人の関係が、予想以上にシビアになっていき、びっくりしました。誰が悪かった訳でもないのに、皆が本当に仲良しだったのに、運命にもてあそばれて、すれ違ってしまった想いが切ない。
風樹、公家の姫君のはずなのに、信貞を救ったとっさの機転は、立派な武家の女人そのもの。お市の方を彷彿とするものがありました。

寛広くんと椿さんの、不器用すぎる夫婦の物語。
最後に明かされた愛情があまりにも深くて、せ、切なすぎる…少ししか出てきませんが、この作品の登場人物の中では、一番泣けるかも。
「はは 夢が叶った 夢みたいだ」…(涙)。

それまでいつも一緒だったけれど、違う道を選択して、永久に運命を分かたれた、雪江ちゃんと月江ちゃんの双子姉妹。
この子たちが出てくると、独特のノリでお話がぱっと華やぐので、大好きでした。

信貞の側室の静さまに母親の愛情を与えられ、彼女の死を乗り越えて、大人になっていった達勝。

信貞さまの変化に気づいて後を追おうとまで思い詰めた清秀くんと、無自覚に彼を救った(笑)左近。

風花も、これと一言では言い表せないのですが、もとからの長所はそのままに、足りなかった部分も、はじめから比べると信じられないくらいに成長して、最後はきちんと大人の女性になっていて、嬉しかったです。
第二十七話の、左兵衛の言葉が良いですね。ご老体の左兵衛の考え方だって、変わったよね、色々と。
「今は お互いの弱さを分かち合っておられる …強う生きられますぞ 姿など偽らずとも」

後、信貞さま。信貞さま美味しいところをもっていきますね…。
百鬼丸以上に鬼の顔を装っておきながら、彼の心にあるのは、風樹おかあさまとの約束、ただひとつ。
ラスト近くの、風樹のまぼろしとの対話シーンは、泣けました…。
「いいえ ひとですもの あたりまえです」
うーん、深いです。

個人的にお気に入りなのは、なんといっても、おめめぱっちりの利発すぎる少年・清秀こと清くん(笑)。
静さまとの掛け合いも、絶妙のテンポで楽しかったし、戦が終わった後日談での彼も、とても良かった。逆紫の上計画、成功して良かったね(笑)。想像すると微笑ましいです。
「僕…わかったんです 強くあるためには 弱さをありのままに見せる強さと 弱さを受け止めてくれる人が 必要だって」
…「きざはしの刻」のここの部分が大好きです。ああ信貞に足りなかったものって、そういうことだったんだなあ…と、深々と納得しました。
昔、織田信長の子ども向け伝記を読んでいたころ、最初の方に絶対登場していた平手政秀。彼の若き日が、こんなに魅力的なお話として読めるなんて、満足です。

情け容赦なく、たくさんの命を散らした、戦の後で。
「とりかえ風花伝」のタイトル、そういうことだったのか…!といった感じで、不思議の決着がついて、ほおっと感心してしまいました。
信貞さまの最後の選択、彼の遺したものを受け継ぐ運命になった百鬼丸に思いをはせると、ずーんと重みがありますけれど…、お話が許すぎりぎり最大限、良い結末だなあと、私は感じました。

なんだか本当に色々語ってしまいました。
ええ、この作品は、とにかく良かったのです!完結編まで、お話をきちんと最後まで読めて、幸せ。
読書メーターを見ている限り、同じ作者さんの他の作品に比べて読書された方が少ないように思いますが、もったいないなあ。
まあ少女漫画なのは確かなので、好みはあるでしょうが、もっと読まれても良いと思います。

後はこの作品、尾張国が舞台になっていて、この地域にお住まいの方は、色々知った地名が出てきて一層面白く読めるのだろうなあ、とうらやましく思いました(笑)。
花とゆめコミックスの方のおまけスペースでは、作者さんが「名古屋メシ」や「名古屋の文化」などを熱く語っておられて、そういうのもまた楽しかったです。文化的には、三重県民の私にとっては、色々共感できることとそうでないことがあったりして、興味深く読めました。


花とゆめコミックスの『とりかえ風花伝』(繰り返しですが、読む順番は、花とゆめの全3巻の方が先です。ご注意を。)

とりかえ風花伝 1巻 (花とゆめCOMICS)とりかえ風花伝 1巻 (花とゆめCOMICS)
(2004/02/05)
柳原 望

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カテゴリ: 漫画・白泉社

テーマ: 少女漫画 - ジャンル: アニメ・コミック

タグ: 柳原望 

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