Admin   *   New entry   *   Up load   *   All archives

ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『カフェかもめ亭』村山 早紀 

カフェかもめ亭 (ポプラ文庫ピュアフル)カフェかもめ亭 (ポプラ文庫ピュアフル)
(2011/01/06)
村山早紀

商品詳細を見る


風早の街にあるお店・カフェかもめ亭。
お客さんを出迎えて、美味しい飲み物を作り、優しく話をきいてくれるのは、まだマスターを継いだばかりの若い女性・広海さん。
子どもからお年を召した方まで、このお店につどう様々な人たちが、聞き手の広海さんに贈る物語は、楽しいお話、思わず涙がこぼれるようなお話、信じられないような不思議なお話…どのお話も、とびきり魅力的なものばかり。

村山早紀さんという方の、ちょっぴり不思議が混じっている、連作短編集です。

この方のお話は、中学生だった頃に図書館で何冊か読んで、本当にお気に入りでした。
年を経て、まあ色々あって、なんとなく離れたままに長い間過ぎてしまっていたのですが。
先日「booklines.net」様の感想で目にして、その後図書館へ行ったところハードカバー版を発見し、ふと心惹かれて借りてきたのです。

そうしたら、すごく良かった。もう本当に良いお話でした。
私の心の奥深く、子どものころから隠しておいてずっと忘れていた部分に、まっすぐに染み込んできたというか。
夜に自分の部屋で読んでいたら、涙がぽろぽろと、次から次へとあふれてきました。ティッシュをかたわらに置きつつなおも読みふける私。
なんなんでしょうね、私。年ごとに、涙もろくなってきているんでしょうか…(笑)。
書き下ろしのお話も収録されているということで、さっそくポプラ文庫ピュアフルの方も、手に入れて読んでしまいました。

ちなみに最初に読んでいたハードカバー版の方は、こちらです。

ささやかな魔法の物語―カフェ・かもめ亭 (ポプラの木かげ)ささやかな魔法の物語―カフェ・かもめ亭 (ポプラの木かげ)
(2001/12)
村山 早紀

商品詳細を見る



以下、各話語りを、簡単に。
「砂漠の花」
ごく普通の女の子・澪子さんが、青色に触発されて語り始めた、前世の記憶の物語。そして、後日譚。
捨てられて砂漠をさまよう少女の悲しい境遇に胸が痛みました…けれども、誰をうらむこともなく、ひたすら空の青にあこがれて、花を咲かせようとする彼女の心そのものが、なんというか、本当に美しくて、それがとても印象に残りました。
ミント・ミルクティー、エキゾチックで涼しげで、このアラビア風の物語のイメージにぴったり。

「万華鏡の庭」
雑貨の輸入と販売の仕事をしている男性が語る、子どもの頃に訪れた不思議な家族と男の子の物語。
お話の構成要素だけですと、なんとなく夏の怪談っぽいお話のようにも思うのですが、実際に読んでみると、全然そんなことなくて。
あずさが彼にのこした言葉、読み返してみて、ああ、そういうことね…。
魚のすり身団子入りのカレーライスが美味しそうでした。

「銀の鏡」
骨董店を営む老人・柳さんが語る、少女と不思議な鏡の物語。
このお話は、本の中で一番悲しいお話だと思います。けれども同時に、私が一番惹きつけられてしまったというか、本を開くとまっさきに読み返してしまうのはこれです。
真由子さんのぼろぼろに傷ついた身体と心と、ときおりみせるはにかんだような笑顔に、胸がぐさりとえぐられたような思いになり、読み終えた後しばらくして、涙があふれてきました。
これ以降のお話を読んでいく間もずっと、真由子さんのことが忘れられませんでした。
いじめの理不尽さも、読んでいて本当に辛い。柳さんの後悔も、読んでいて痛いです。

「水仙姫」
お花が好きな奥さまが語る、少女時代の淡い恋のお話。
「銀の鏡」で悲しみでいっぱいになった心には、この上もなく優しくてほっとできるお話でした。
姉妹で全然どろどろしていなくって、ひたすら大好き!と言えるこのふたり、良いなあ。心が洗われます。
ずっと想うだけだった人への、ようやく口にすることができた愛の言葉が、とても良かったです。

「グリーン先生の魔法」
高原のペンションで暮らしている女の子・亜里子ちゃんが語る、一風変わった「グリーン先生」と、仲良しになった女の子のお話。
元気いっぱいの少女が語るお話なので、読んでいて、私の心も明るくなれました。
お話と全然関係ないですが、小学生のころ習った「グリーングリーン」の歌を思い出して、ひとり懐かしい思い出にひたっていました(笑)。

「ねこしまさんのお話」
学校の友人関係になじめずに辛い思いをし、世界から色をなくしてしまったかおるちゃんと、彼女が出会った「ねこしまさん」のお話。
この本の中で、「一番好きなお話です!」と人に紹介するのならば、このお話でしょうか。
読んでいて涙して、その後に、ほっこりと優しい気持ちでいっぱいに満たされました。
どんな相手でも、相手を大切にいとおしむ心には、確かに力があるのだと、信じても良いよね。
かおるちゃんとねこしまさんの、ぬくもりを分かち合うような出会いに涙、猫の国へ帰るねこしまさんの、お別れのシーンの美しさにさらに涙…。そして後日談に、一層あたたかくなりました。

読んでいて、クリームパンが食べたくなりました。(なんだか、食べ物の話ばっかりですね、私。いつものことですが。)
でもどんなクリームパンも、ねこしまさんと分けあってかおるちゃんが食べていたクリームパンの味には、絶対にかなわないんだろうな。

「かもめ亭奇談」
マスターの広海さん自身にスポットがあたった、昔々のかもめ亭と、人魚の思い出のお話。
クリスマスイブの夜に、恋した人をしたって陸へ上がって訪ねて行って、でも会えなかった人魚さんのシーンの言葉が、胸に染みいりました。
「人魚姫」は、悲しいお話でしたけれど、このお話の人魚は、結構からりと明るくて、それも読み心地がよくてお気に入りです。

「番外編・クリスマスの国」
書き下ろしのお話。他のお話に比べると、やや長め。
幼い日の、仲良しのいとことの冒険の場面等は、少し淡々としていたけれど、ぬくもりがあって好きです。
アリスとおとうさんのお話、「『ポーの一族』だ!」と、一瞬思い浮かべてしまいました(笑)。
ゆきとくんの、あの冬のクリスマスのシーン、本当に良かったねと、声をかけてあげたくなりました。
このお話の後に彼らはどうなるのか、ちょっと気になりますね。


ハードカバー版の方のあとがきとか、私は好きです。
どうして私は、他の子みたいに「ふつう」になれないんだろう、どうしてみんな、こんなに明るくて強くて楽しそうなんだろう、どうして私は、皆の楽しい会話や外遊びに混じっていけなくて、うつむいて図書室にこもっていなければいけないんだろう…。
私自身、こんな気持ちでいっぱいの子ども時代を過ごしてきたんだよなあと、今はたいして痛みもなく思い返せます。
あのころの私は、こんなことで悩んでいるのは、この世で自分ただひとりだと思いこんでいて、それがまた辛かった。
でも実は、同じように悩んでいる人も、結構いたのかもしれないですね。それに気付けていたら、あの頃の私、もっと楽になっていたのかなあ。
この本を読んでいて(特にかおるちゃんのお話)、そんな風に思いました。

イラスト、ハードカバー版の方に挿入されているのが、洒落ていてとてもすてきなので、文庫の方にはないのが、ちょっと残念(苦笑)。
図書館で読み込まれて古びたハードカバーの本と、まだ新しい紙の手触りがする文庫版とは、なんだか全然別の本みたいで、不思議な気分です。
読み始めて作品の世界に入っていってしまえば、やっぱり同じく良いお話なんですけれどね。

村山早紀さんの作品の世界、「風早の街」、やっぱり懐かしいなあ。中学生のころに読んだ『やまんば娘、街へ行く』とか。
『コンビニたそがれ堂』も、また読んでみたいです。
図書館で他の本を借りてくるのも、いいかも。


昨日、それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

関連記事

カテゴリ: 村山早紀さん

テーマ: 小説 - ジャンル: 小説・文学

タグ: 村山早紀 

この記事に対するコメント

コメントの投稿
Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://hananomi691.blog10.fc2.com/tb.php/778-a1ea50fd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)