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『羽州ものがたり』菅野 雪虫 

羽州ものがたり (カドカワ銀のさじシリーズ)羽州ものがたり (カドカワ銀のさじシリーズ)
(2011/01/29)
菅野 雪虫

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今から千百年ほど前の羽州。
ひとつめの鷹のアキと暮らす少女・ムメと、彼女と親しい少年・カラスは、都から来たばかりの少年・春名丸と出会う。
それが縁でムメとカラスは、春名丸の父親の小野春風にさまざまなことを教わる。
親しくなった彼らが羽州の地を去って四年の歳月が流れ、ムメは見違えるような娘に成長する。
だがそのころ羽州の地では、朝廷の圧政に耐えかねた民たちによる戦いが起きようとしていて…。


私が去年の年始に一気読みした『天山の巫女ソニン』シリーズの、菅野雪虫さんの新作です。
今回のお話の舞台は、平安時代の羽州(東北地方の日本海側)。

恥ずかしながら私、このお話を読むまで、この時代の東北地方に「奥州」と「羽州」のふたつの国があったことさえ知りませんでした…(汗)。「元慶の乱」も全く知らず。
お話をわくわく楽しんで読みつつ、色々と勉強させてもらえました。
(参考 ウィキペディア:元慶の乱→こちら

実際に読んでみると、やっぱり『ソニン』シリーズと通ずるものが多い物語でした。
ていねいで優しい語り口でとても読みやすくて、それでいてお話がとてもしっかりしていて、読みごたえがきちんとあって。
年若くて賢い女の子の視点から、矛盾を抱えつつ美しいものも確かにある物語の世界の中を、真っすぐに見通して自由に羽ばたいていける、そんなお話でした。(うーん、上手く言い表せない…。)
完全な正義というものは残念ながら存在しないけれど、皆が平和に暮らせる社会に一歩でも近づけるよう、努力をやめないでいることはできるよね。

まあ難しいことを考えなくても、お話自体がとても面白くて、読んでいてときめきがいっぱいでした(笑)。
ムメ良いですねえ。賢くて思いやりがあって勇気があって美人で、いつでも「自分で考える」ことをやめなくて。色々な物を吸収しつつ、確実に成長していって。
彼女のとっさの機転、行動で、ものごとが良い方向へ良い方向へとむかっていくお話の展開が、読んでいて気持ち良かったです。
春風さまや桜さまが可愛がるのが良く分かります。自然に応援したくなる女の子でした。
(できれば、美しい娘さんに成長したムメがきれいに着飾っている姿もちょっと拝んでみたかったですよねえ…。桜さま、よろしくお願いします。笑。)

ヒーロー役の少年は、今回はふたり。都人の息子の春名丸と、羽州の変わり者の少年カラス。
野性的で一風変わっていて、でも心優しいカラスもなかなか魅力的でしたが…私個人的には、人の良いおぼっちゃまの春名丸が、どちらかというと好みです。なんだか読んでいて、微笑ましくて癒されるんです(笑)。
ムメと春名丸とカラスの三人の友情が、お話全体を読んでいて、とても良かったです。
三人そろっていても、どの組み合わせでペアになっていても、良いなあ。
お年頃の少年少女たちが主役なのに、清々しいまでにロマンスが一切ありませんが…(笑)、これはこれで良いものだなあと思います。

後、大人たちにも魅力的な人たちが色々。
なんといっても、春名丸の父親の、小野春風さまの格好良いこと(笑)!お人柄の良さと聡明さが大好きです。
春風さまと桜さまのなれそめとか、ちょっと気になるなあ…。
ムメの祖父のオギやムメの父も好きですし、対立する側の人間ながらムメたちの味方になってくれたクレも好きです。
ジオは、ちょっと好きにはなれないキャラクターでしたが…彼も、完全な悪者かと言うとそうとも言い切れなくて。
ジオに惹かれてムメたちの側を離れていきかけたカラスの姿には、もどかしさと同時に、なんというか、複雑なものを感じました。

お話がとても良かっただけにちょっと残念なのは、今回のお話はこれ一冊きりで完結しているらしい、ということでしょうか…。
途中まで『ソニン』シリーズのように続きものだと思いこんで読んでいたので、ラストまでたどりついて、ややショックを受けました(笑)。
きれいな終わり方で、不満はありませんが…もっとお話を大きく広げて書いていただいてもよかったのではないかと、勝手に思ってしまいました(笑)。
…うーんでも、ここら辺でお話を終わらせておくのがこの作品にとっては最良だという気も、やっぱりするかな。時代のあれこれを考えると。

私にとっては想像するしかないほど遠い、羽州の大地と草木のにおいが、本の中から感じ取れるような、素敵なお話でした。
ムメ(梅)、ハルナこと春雪、春風さま、桜さま…皆の名前にも春が表されているのも素敵。
読んでいると、気持ちの良いさわやかな春風が、心の中をすーっと吹きすぎていくようなイメージ。

今の時期、羽州の地の物語は、より一層、私の心の深くに染みいる思いでした。


昨日記事に拍手下さった方、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 菅野雪虫 

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