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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『wonder wonderful』上下巻 河上 朔 

wonder wonderful 上wonder wonderful 上
(2008/09/13)
河上 朔

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wonder wonderful 下wonder wonderful 下
(2008/09/13)
河上 朔

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こかげの妹・ひなたは異世界への常習旅行者。
ただの良き理解者・聞き役であったはずのこかげはある日、ひなたの危機に、みずからも異世界へ飛び込むことに。
ひなたの恋人であるディーカルアの若き王の王宮で、突然現れたこかげに向けられた視線はなぜか、決して優しいものではなくて…。


オンライン小説サイト「therehere」様の小説の書籍版。大人風味の異世界ファンタジー。
色々なところで良い評判をきくので、ずっと気になっていた小説でした。
私自身、これは読みだしたら絶対にはまるに違いない!と思って、入手してきてからももったいなくてしばらく手をつけられなかった作品です(笑)。本の分厚さもすごいので、そっちでのためらいも少しありましたしね…。

まあそんなこんなで、ついに読み出してみて。
思っていたのとはちょっと違うはまり方でしたが、やっぱり本当にはまりました(笑)。
正味二日間で、この二段組み文章の分厚い本、一気に読み切ってしまいました。
一度目に読み切った時よりむしろ、その後で読み返すごとに味わいがでてきて、よけいに愛おしくて大好きになっていきました。

私が読み返すごとに感じたのは、なんというか、「誠実な物語」だなあ、と。
上手く言えないのですが、登場人物のひとりひとり、エピソードのひとつひとつすべてに、お話の文章がひたすらに誠実に向き合っていて、ていねいに書かれているというか。
だからこそ、このボリュームなのかなあ。
登場人物は皆つきつめれば「いいひと」ばかりで、基本的にはひとのやさしさがメインに書かれているように思いましたが、それも細部までていねいに心をこめて書かれているせいか、嘘っぽさとか全然感じませんでした。
安心して、やさしさに、最後までひたって読むことができました。

私自身ふたり姉妹の姉で、二十代後半のこかげとは年齢も近いので、その点での親近感はばっちりでした(笑)。
やっぱり、姉妹の姉の方にスポットが当たっている作品ってそんなにないんですよね…。
加えてこの姉妹の場合、異世界の王様と恋人になっているのは、妹のひなたの方。こかげの方は、年の分だけなんというか現実的で、異世界で恋に落ちるのにためらいを持ってしまう。
よそ様でも言われている通りになかなか面白い設定の異世界トリップものだなあと、私も思いました。

そんなこかげは、読み込むごとに愛おしくなってくる、素敵なヒロインでした。
至る所で真面目にきっちりと考え込んでときにぐるぐるしているので、その分話が進まなくて、一度目に読んでいるときは正直もどかしかったんですが(笑)、彼女のそんな姿勢は、強い感情のままにぐいぐい行動するヒロインとはまた別な風に共感できました。
二十代で大人になっても、まだまだ未熟で至らないこともしょっちゅうで、それでも年月とともに身につけてこれたものもきちんとあって。そんなものですよね…。
はじめは彼女を理由あって敵視していた王宮のメンバーたちが、こかげのひととなりに次第にうちとけて、彼女を愛するようになっていく過程が、とても良かった。
こかげみたいな女の人が身近にいたら、憧れちゃいます。

若い王様に愛される妹のひなたも、姉が引け目を感じてしまうような、美人で誰にでも愛される何もかもに恵まれた娘…なのかと思えばそういうのでもなく、きちんとていねいに人格を書きこまれたキャラクターだったのがまた良かったです。
ザキくんその他王宮の人たちが、ひなたをそこまで大切に思う理由も、読んでいるうちにしっかり理解できました。やっぱりこかげとひなたは美質がどこか似ているんですね。
この姉妹の仲の良さは、読んでいて本当に心地いいなあ。
(それだけに、ザキくんがこかげを嫌っていた理由が明らかになったシーンは、やりきれない思いでしたが…。)
ひなたが国を想って考えた花祭りのアイディアを、こかげが受け継いでかたちにしていくところとか、大好き。

ザキくんとひなたのロマンスも良いけれど、ヒロインのこかげのロマンスもきちんとあって、特に下巻後半あたりからは、かなりときめきました(笑)。
隊長、本当に格好良いですね…。はじめの内はこかげに意地悪で、あんまり好きなキャラじゃなかったのに(笑)。
でも、実はとてもやさしいひと。大人の人でもあり。こかげとは本当にお似合いだなあと思います。
かなり前の方から他意なくこかげに振り回されていて、ちょっと気の毒で面白かったです(笑)。

こかげの護衛役三人組も、双子の侍女のリルとティルも、ザキとディレイの兄弟も、イルサムさんやノインさんたちおじさま方も、呑気亭のメンバーたちも、こかげの頼れる友人ポジションのシルヴィアナ嬢も、皆大好きですー!
それぞれが愛おしくて仕方がなくて、ここではとてもひとりひとり書きつくせません。残念!(笑)
護衛役の中では、ヨーサムがなんだか本当にお気に入りです。年下の男の子、かわいいな…。
大貴族のお嬢様で絶世の美女ながら聡明で気取っていないシルヴィとこかげの大人の女の友情も、とても楽しかったです。
ひとりひとりのために常に全力で親身だったこかげに、皆がどれだけあたたかな感情を抱いていたかが実感できる、花祭りや最後のお茶会のシーンが、とても良かった。

それと、王宮を一度飛び出したこかげを受け止めてくれた呑気亭のひとたちの、あたたかな家庭的な雰囲気は、王宮の話とはまた別に癒されるものがありました。
私は最後のミミのあの冒険が、一番印象に残りました。この子の気持ち、言われてみればといった感じで良く分かるな…。
ダイランも、すごくいい人だったんだけれどな…仕方がないとは思いますが、ちょっと気の毒です(苦笑)。
呑気亭のごはんは、一度でいいから、実際に食べてみたい。

ラストは別れの場面でもあり、寂しくて切ないはずなのですが…こかげの気持ちが不思議と前向きで、気取りない明るさに満ちていて、こちらもあたたかな思いで読み終えることができました。
別れの場面まで、本当にていねいで優しいものでした。
「ああ、楽しかった!」


番外編の『きみがくれた世界』も、読みました。
表紙が表裏あわせて素敵過ぎます…!リルとティルがかわいらしい。

wonder wonderful  君がくれた世界 (Regalo)wonder wonderful 君がくれた世界 (Regalo)
(2010/02/19)
河上 朔

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こかげ以外の視点からつむがれる物語、どれも新鮮でした。
最初から最後まで、ルカナート大活躍(笑)。

シルヴィアナとライオスの過去物語は、読む前に思っていたよりもずっと深みがあって、読みごたえがありました。
シルヴィがどういう課程を経て今のシルヴィに成長したのか、よく分かりました。うーん、かなりの苦労の道だったんですね…。
ライオスのお家の事情は確かに複雑だなあ、と。
シルヴィの侍女のサナも素敵(笑)。

最後の花祭りのルカナート視点のお話も、短かったけれどラブラブで、とても良かったです。余韻までうっとり味わい尽くしました。
私、この話を読む前は、こかげはもう二度とこちら側にこれないのかなあ…と寂しいようなあきらめのような気持ちを持っていたのですが、一番最後のルカナートの心の祈りを読んでしまったあとでは、もう、彼の祈りが女神に本当に届いてほしい!とただひたすらに強い思いがこみあげてきました。
実は色々苦労の多い人生を送ってきたルカナート、この願いはせめて、叶えられないものか…。
このお話のルカナートとこかげのイラストは、三冊の中で一番好きだなあ。

サイトの方にあった番外編も、楽しませてもらいました。
ティル視点のお話とか好き。
こかげの帰宅後のお話も読めて、ちょっとほっとしました(笑)。


―とにかく内容が充実していて、もっと語ろうと思えば語れますが、きりがないので(笑)、この辺でストップしておきます。
この作品にめぐりあえて、やさしいひとたちの物語を最後まで堪能できて、本当に良かったです。
一読者の私もまた、めぐりあわせに感謝したくなる、そんな素敵なお話でした。


昨日それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: ファンタジー(西洋風)

タグ: 河上朔 

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