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『桜嵐恋絵巻』シリーズ 深山 くのえ 

桜嵐(おうらん)恋絵巻 (ルルル文庫)桜嵐(おうらん)恋絵巻 (ルルル文庫)
(2008/08)
深山 くのえ

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平安の昔、貴族の筆頭・左大臣家と右大臣家の仲の悪さは相当のもので、都の人々は二派に分かれ、何かといがみあっていた。
そんな都の一角で、中納言家の大君(おおいぎみ)・詞子(ことこ)は、ある事情から呪い持ちの鬼姫と呼ばれ、実の父や妹にもうとまれて、ひっそりと暮らしていた。
そんな詞子が屋敷の桜の下で偶然出会ったのが、左大臣家の子息・源雅遠(まさとお)。
不遇な境遇のわが身を諦めきって暮らしていた詞子と、左大臣家の嫡男ながら雅なことが苦手で、出来のいい異母弟と比べられ息詰まる日々を送ってきた雅遠、ふたりは惹かれあい、やがて恋人同士となる。
しかし詞子の実家は右大臣派。詞子の呪いのこともあり、ふたりの関係は世間から歓迎されるものではなく、想いをつらぬくふたりの道には様々な試練が……。


ルルル文庫の平安ものラブロマン・『桜嵐恋絵巻』シリーズ。
今年完結したばかりのシリーズで、番外編『夢咲くころ』まで合わせて全十巻。

えーと、深山くのえさんの作品は私、『舞姫恋風伝』シリーズがかなり好きで、今でもたまに読み返したりしているくらいなのですが、こちらの『桜嵐恋絵巻』は、まあ色々思うところあって、一巻目を読んだあたりで、ずーっとためてしまっていたんですよね…。
でも、『活字倶楽部』2011年春号の京都特集に深山さんインタビューが載っていて、読んでいる内に心惹かれ、そして改めてネットで色々な方の感想を読ませてもらっていると、だんだん再び読みたい熱が高まってきて(笑)、シリーズを読み進めてみました。
そうしたら、面白いんですよ。二巻目は一巻目よりも面白かったし、三巻目は二巻目よりも面白かった(笑)。
『舞姫』みたいに、安心して甘い王道ロマンスに和めるシリーズだなあと思い、途中まではのんびりゆっくり読んでいました。
でもお話がラスト近くになって盛り上がっていくうちに、読んでいる私も勢いづいてきて、結局後の方は一気読みしてしまいました。
もう完結していてある意味先が読めてるんだから、もっとゆっくり読んで楽しみたかった…!とちょっと今でも後悔しているんですが(苦笑)、でも一気読みも楽しかったです。ラストまで読んで、その後はとても満ち足りた気分になれました。

『舞姫』より物語が長かった分、お話に深みが増していて、キャラクターたちも長く読んでいる分愛着がわいてきて、楽しめましたよ。
藤間麗さんの挿絵のイメージから想像していたほど現代風のきらきらかだったかというとそうでもなく、意外なくらいの堅実なお話の作りが、読んでいて好感を持てました。
深山さんの文章って、いかにも少女小説ですらすら読みやすいんですけど、しっとり雅で平安時代のイメージが最初から最後まで全く損なわれていないのが、好きだなあと思います。

この通り全十巻一気読みしてしまったので、残念ながら一冊一冊個別の感想は書けそうになく…。
十巻分の感想をひとつの記事につめこむのはさすがに無理があったようで、以下の感想は色々書き足りないというか、上手くまとめられないというか、そんなのばっかりですが(汗)、もしよろしければ。
あ、中途半端にネタばれしてますので(笑)、読んでくださる際にはお気をつけて。

主役ヒロインとヒーロー、詞子と雅遠は、ふたりとも読み込むごとに愛おしさが増してくる、素敵なカップルでした。
出逢って恋をして、相手のために何かしたい、相手を守れるほど強くなりたい、自分を高めたい、相手に優しくしたい。
ふたりとも、シリーズが進んで行く毎にどんどん成長して魅力的になっていって、読んでいる私も素直に嬉しくなってきて、ひたすらに応援してしまいました。

うーん、詞子も雅遠も、言っては何ですが、華やかな少女小説ワールドの主人公たちにしては、性格とか地味で大人しめだと思うんですよ。
詞子とか本当に深窓の大人しいお姫様で、周囲も巻き込んでぐいぐいひっぱっていくおてんば姫じゃないし。
雅遠も、宮中で堅実に頑張って出世していってそこが物語の楽しいところなんですが、日常の仕事は地味なものだし、そもそも風流なことが苦手なので、なんというか、いかにも平安の貴公子さま…みたいな、きらきらした成分が足りない(笑)。
でも、だからこそ、読んでいて共感しやすくて、応援しやすかった…というのは、絶対あったと思います。
すべての少女小説が元気いっぱいはねっかえりのヒロインのお話じゃなくても、良いですよね。
詞子ならではの、謙虚な優しさが好き。雅遠の、そつのない貴公子のかけひきを知らない、真っすぐすぎる愛情の示し方が好き。

とにかく詞子の身の上が絶望的に不憫で、読んでいく毎に彼女が受ける理不尽な仕打ちにくーっと泣けてきて…。
特に『遠雷』『暁の声』の中納言とかあと斎宮さまとか、人のことを一体何だと思ってるの!読んでいて腹がたって腹がたって仕方がありませんでした(怒)。
特に詞子の父親の中納言、私がこれまで読んできた物語の中で考えてみても、トップレベルに嫌いな悪役ですね。
やってること自体は小さいことばかりかもしれないけどさ、いちいち小ずるくて自分のことしか考えてなくって、共感できる要素が全くないんだよ…。詞子も艶子も、実の子どもたちのこと、あと奥さんたちのこと、全然大事に思ってないし。
最後まで読んで、なんだかもう、すべてにおいて自業自得ですよね。何の憐れみの情もわきませんでしたよ(苦笑)。

そんな理不尽な仕打ちを受けつつも、数は少なくてもシリーズを追うごとに着実に増えていく仲間たちと協力し合って詞子を守る雅遠は、これは少女小説の王道ヒーローっぽくとっても格好良かった!ですし、雅遠に愛されて自分自身も強くなった詞子、凛とした姿勢で主に女の人相手の戦い(というかなんというか)に頑張る姿が、それはそれはよかったです。
『雨ひそか』で琴を取りかえしにいった場面と、『暁の声』で唐崎に隙のない毅然とした態度で接していた場面が、印象的でした。
詞子、嬉しいです、少しずつ強く変わってきました…(涙)。
『遠雷』『暁の声』での雅遠たちの詞子救出劇も、どきどきして引き込まれました。宮中での事件もそうですが、どんな困難な状況でもけしてあきらめずに全力で解決に向けてがんばる雅遠は、相当格好良いです。

詞子の女房の淡路と葛葉、このふたりはシリーズの最初から最後までもう絶対的に詞子の味方の女房たちで、好きでした。
深山さんのお話っぽいなあ…とか読んでて思いましたが(『舞姫』の佳葉ちゃんとか)、でもこのふたりがいなければ、詞子の境遇はあまりに悲惨すぎですよね…(苦笑)。彼女たちの存在は本当、心強かったです。
このふたりそれぞれにもちょっとした背景があってドラマがあって、やがてそれぞれの幸せをつかめたのも、まあお約束っぽいなあとは思いましたが、読んでいて素直に嬉しかったです。
淡路をおっかけてくる叔父さまも、中納言ほどではなかったものの嫌ーな人だったので、良い人と結ばれて、良かったなあ。ほっとしました。
番外編の葛葉…そりゃ保名じゃなくても分からないでしょうよ!(笑)
シリーズの途中から出てきた早苗さんも好きでした!
えーと、私はこういう宮中もの少女小説を読むとき、召使、侍女、女房役の女性たちが、主のために忠実に活躍しているのを読むのが大好きです。その点でも、このシリーズは楽しませてもらえました♪

詞子の妹の艶子、シリーズ一巻目とか二巻目だけ読んでいた時点では本当に嫌ーなお姫さまでしたが、シリーズが進んで行く毎に、単純に嫌えない女の子になっていきました…。
なかなか素直になれないながらに姉を心配せずにはいられない妹で、なんだ、結構かわいいじゃないの、ってね(笑)。
最後には、すっかり普通の仲良し姉妹になれたようで、その姿にほっとしました。(ほら、姉妹の父親の中納言が救いようがなさすぎたから、余計にね…。苦笑)
女房勤め、こんなわがままなお姫さまにつとまるのかしら…と正直不安だったんですが、意外といきいきと宮仕えしているようで、それもなんだか嬉しかったです。

一方、雅遠サイドでは。
この物語、不遇の立場の姫君・詞子が幸せをつかんでいく王道少女小説であると同時に、雅遠の平安の宮中での真面目な仕事振り、立身出世のあれこれをわくわく楽しんで読んでいける物語…でもあったかなと。
彼の普段のお仕事は結構地味で、でも彼の仕事ぶりは読んでいて好感が持てますよね。左大臣家の子息としての立場にまったくおごらず、身分分け隔てなく人に接して自分の努力を怠らない。親しみやすくて謙虚。
そんな彼の周囲は、当然ながら、どんな身分の人でも居心地が良くって、普通の良い人がたくさんあつまってくる。
こういう人が順調に認められて出世していくのは、読んでいて気分が良いです。
蔵人仲間の三人組も地味に好きです。できれば一度でいいからイラストで拝んでみたかったんですが…(苦笑)。

帝がまたいいんですよねー。帝と雅遠の関係が好き。
帝と言えば、登花殿の女御もかなり好き!このカップルもちょっと不遇で、でも女御のキャラクターが不幸とか感じさせない鮮やかな独特の魅力を持っていて、読んでいてこれまた良いなあと素直に思えます。

雅遠の実家の左大臣家は、最初の内は子どもの気持ちを全く理解しない親たちだとやっぱり反感を持っていたのですが…、シリーズの終わりになってくるにしたがって、だんだん和んできました(笑)。
妹の奏子ちゃんも、お姉さんの女御さまも、お父上も母宮さまも、皆良い人じゃないですか♪
個人的には、詞子に実際に会ってみればすっかり甘いお舅さんになってる左大臣さまが好きでした…。番外編のその理由(?)を読んで、さらに和みました。味がありますね、この夫婦は…(笑)。
最後まで詞子を受け入れられなかった母宮さま、詞子への仕打ちはひどいとは思いつつも彼女の葛藤もまあ理解できただけに、ラストの詞子への振る舞いが、ぐっときて…。

あと、利雅ね。
この弟君も、はじめのうちこそ全くいけすかない嫌な子でしたが、だんだんかわいくなってくるんですよねもう…。雅遠にからんでいるシーンとか、かわいい子犬がきゃんきゃんほえてるようにしか思えなくなってきた(笑)。
そして彼が女性嫌いになった理由、うーん、かわいそうだな…。

利雅と艶子がああいうことになるのは、実は私、物語を読む前にちらっと目にしてすでに分かってしまっていたのですが、でもふたりの歩み寄りが初々しくって、読んでいてにこにこしました。

そして忘れてはいけないのが、雅遠の友人で常に絶対的な味方だった、兵部卿の宮様ですね。
雅遠への手助けの数々がいつも心強くって!
番外編のその後のお話で私が一番好きだったのは、この宮様のお話でした。
なんというか、この続きから面白くなりそう!というちょうどいいところでお話が終わっているのが残念でなりません…(笑)。あのお兄さん三人とか苦労しそうだよー。でも一番苦労するのは、あの素直でいいこすぎる白菊本人を、どう口説き落とすかだろうな(笑)。

私が勝手にイメージしていた以上に、平安時代のあれこれの描写がしっかりと書かれていて、しかも深山さんの少女小説だからそれが本当に堅苦しくなくてすらすら読みやすくって、そこもシリーズの魅力のひとつでした。
宮中で発生した事件の解決のため雅遠たちが走り回る殿の位置関係とか、登場人物たちが住んでいるお屋敷が都のどこあたりにあるのかとか、昔使っていた便覧片手に読んでいると、なかなか面白かったです(笑)。深山さん、さりげなく忠実に書かれてらっしゃる。
装束の色目も、イメージしやすい描写で、読んでいて楽しめました。これはやっぱり、できればカラーで楽しみたいよなあとは思いましたけどね…(笑)。
登場人物たちの深山さんのネーミングセンスも好きでした。時代ものの楽しみのひとつって、女君たちの美しい名前を愛でることです(笑)。私、「詞子」「艶子」の姉妹の名前がどちらも結構好きです。「初花」もかわいらしいなあ。

まあ言いたいことがあるとすれば、ふたりのラブラブにはもうちょっと読みごたえがほしかったなあ…とか(ほとんど最初のころから、特に雅遠の甘甘っぷりは全開で安定しきっていたので、私の好み的には正直もの足りなかった。逆にラブラブを安心して読めて良かったとも思うんですが)、雅遠の歌の克服は結局どうなったのかしら…とか、最後の結子ちゃんの入内、結子ちゃん本人は恋してなくて大丈夫なのかしら…とか、色々あったことはあったんですけれど(笑)、まあいっか、これはこういうお話だし、とさらっと流してしまえるほどには、好きなシリーズでした。

読んでいるこちらがどんより落ち込んでいたり疲れていたりといった状態でも、美麗な表紙を開くとしっとり優雅でとても読みやすい文章で、安心して王道パターンの少女小説の世界にひたれて、読み終えるとなんだか幸せに元気になれる、深山さんの作品で私が好きなのは、そういうところなんだよなあ…と、出たばかりの新刊も早速読んで(笑)、『舞姫』シリーズを読んでいたときも思い出して、改めて思ったりしました。


『水底の願い』

桜嵐恋絵巻~水底の願い~ (ルルル文庫)桜嵐恋絵巻~水底の願い~ (ルルル文庫)
(2010/11/26)
深山 くのえ

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個人的に、シリーズの中で一番好きな表紙。

番外編『夢咲くころ』

桜嵐恋絵巻 ~夢咲くころ~ (ルルル文庫)桜嵐恋絵巻 ~夢咲くころ~ (ルルル文庫)
(2011/05/26)
深山 くのえ

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短編集が盛りだくさんで充実しているのも、幸せ。
そういえば、帝と登花殿の女御のエピソードとか、実春と奏子ちゃんのエピソードとか、できれば読みたかったな(笑)。

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

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