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『乙女なでしこ恋手帖 壱』深山 くのえ 

乙女なでしこ恋手帖 壱 (フラワーコミックス)乙女なでしこ恋手帖 壱 (フラワーコミックス)
(2011/11/25)
深山 くのえ

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時は大正時代。
公家華族の東明家に生まれながらゆえあって平民の家に養女に出されて育った娘・千鶴は、家の事情で東明家に呼び戻される。けれども庶民育ちの娘に血のつながりがあるはずの家族は冷たく、居心地の悪い暮らしをしていた。
16歳になった千鶴はある日突然、借金の形として、無理やり貸金業「大つき屋」の長男・大津寄要と結婚させられることに。
あまりのことにショックを受ける千鶴だったが、実は要は、千鶴がかつて偶然出会っていた相手だった。
けれども再会した要は、一度目の出会いとは打って変わって、千鶴には冷たい態度で……。


ひとつ前の記事『桜嵐恋絵巻』シリーズの作者さん・深山くのえさんの、こちらは出たばかりの最新作。
『桜嵐恋絵巻』を夢中になって読んでいるそのタイミングで新作が出たので、勢いでお買い上げし、『桜嵐恋絵巻』を読み終えてひとしきり堪能したところで、早速読み始め、面白くてひと息にに読み終えてしまいました。
思いがけず、深山さんワールドにすっかりひたっている私です…(笑)。

ところでこの作品、どうしていつものルルル文庫じゃないのかしら。コミックスのノベライズって、この作品は普通に深山さんのオリジナル小説だし。いまいち良く分からないな……。

まあそれはひとまずおいておくとして、これは、とても私好みの少女小説でした!
深山くのえさんのしっとり雅な読みやすい文章と、大正時代の舞台設定が、予想以上に調和していて、読んでいてとても美味しかったです。
不遇の境遇ででも健気で芯の強いヒロイン、ヒロインの頼れる味方の仲良しの友人、格好良いお相手の男性、…深山さん作品の定番パターン(?)の登場人物たちが繰り広げる物語、安心して楽しめました。

個人的には、『舞姫恋風伝』『桜嵐恋絵巻』と続けて読んできて、深山さん作品の中では、今までで一番好きなお話かも。まだ一巻目しか出ていないので何とも言えませんが…。


とにかくヒロインの千鶴がおかれている境遇が、もうかわいそうでかわいそうで。読んでいて真剣に彼女に同調してしまった私、胸が痛んでしかたがありませんでした。
『桜嵐恋絵巻』の中納言もひどい父親だったけれど、この作品の千鶴の父親の東明子爵も、またひどすぎですよね(苦笑)。母親も兄弟姉妹たちも、本当に血がつながっているというのに、容赦ないな…。
借金の形に無理やりお嫁に出されることになっても、とりあえず東明家を出られるのは嬉しい!という千鶴、気持ちがリアルに伝わってくるだけに、不憫すぎる(涙)。
そしてお嫁に行った先…使用人たちや要さんの仕事仲間は優しかったけど、肝心のだんな様の要さんが、冷たーい!
何か事情はありそうなのは分かるけど、ここまでかわいそうな境遇に置かれ続けてる千鶴ちゃん、もうちょっと事情を察して優しく接してあげようよ…!と、何度はがゆく思ったことか(笑)。

そんなさんざんな目にあっている千鶴ちゃんですが、彼女自身はどこまでも健気で謙虚でしっかりした働き者で、お嫁入り先で冷たくされても、身の上をいつわっている自分の立場を思えば文句も言えない、なんとか順応しよう…と頑張ってる姿が、読んでいて不憫ながらに好感を持てて、とても良かったです。
千鶴ちゃん本人が笑顔で頑張ってるから、けして暗いお話にはなってないんですよね。
読んでいる私の方が、千鶴ちゃんの健気さに、救われました。元気をわけてもらえました。
彼女の美質を、セツさんや秀二郎さんたちが、要さんより一足早く気づきはじめて、自然に「奥様」と本当の意味で受け入れていく過程が、良かった。

お相手役の要さんの方は…、最初の方で千鶴ちゃんに徹底して冷たかったのが、正直、ポイント低かったです(苦笑)。
事情はおいおい分かってきて、確かにそれはあの態度も無理ないかなあ、とは思ったものの…、こらこら、そこでどん底の千鶴ちゃんを追いだすんじゃないよー!(怒)
でもまあ、きちんと誤解が解けて、千鶴ちゃんを迎えに行って、彼女本人をきちんと受け入れたのだから、まあ許しましょう(笑)。
何も言わずとも、千鶴ちゃんの味噌汁の味の違いをちゃんと分かっていた辺り、ちょっと可愛かったり(笑)。

それにしても要さんの職業、なかなか珍しいヒーローですね!
大正時代の少女雑誌の画家さんですか…ああ、これはロマンですねえ。って、あまり良く分かってないんですが(笑)。

実は千鶴ちゃんが、要さんの絵の一番のファンだった、というのを、千鶴ちゃんの手紙を渡されて要さんが悟ったシーンが、お話の中で、私が一番心に残った箇所でした。


まだ当分花の咲く気配すらない、小さく硬い蕾の梅の木の下に、憂い顔の少女が独りたたずむ絵に関し、線と色彩の美しさについて述べた後、こう記されていた。

あの絵の女の子は、きっともう長いこと春を待ちわびているのでしょう。
いつかあの子の心の冬が終え、花咲く日が訪れますように――  (222頁)


他でもない、千鶴ちゃんが霜月の絵を愛している理由が、なんだかすごく納得できて、じーんとしてしまいました。
辛くてたまらないときに、部屋でひとり、切ない少女の絵を眺めて心の慰めにしている千鶴ちゃんの姿が、目に浮かぶようで。

脇役陣では、大雑把なお手伝いさんのセツさん、人の良いミーハーな秀二郎さん、編集者の幹弥さんに教師の和之輔さん、要さんのお家のいつものメンバーたちは、読んでいて心和みました。私は和之輔さんが好きだなー。
千鶴ちゃんのお兄ちゃんの緋桜さんも、またちょっと珍しい職業している人で、千鶴ちゃんに優しくて頼れるお兄さんで、良かったです。
常盤さんも良い人ですね。
最初の方しか出番がなくてちょっと残念だったけれど、千鶴の友人の蘭子ちゃんと小夜ちゃんも、好きだなあ。
繰り返しているように、千鶴ちゃんの境遇は本当にかわいそうだけど、頑張りやで気立ての良い彼女のことを真剣に案じて味方でいてくれる人達は、こんな風に確実に存在しているので、その点では安心して読めるのが良いところ。

ラストではひとまず、千鶴ちゃんの身の上も彼女の家族も落ちついたようで、よかったよかった(笑)。

これは、続きが楽しみなお話だなあ。
千鶴ちゃんと要さん、いつか本当の夫婦になれるのか、というかお互いに想いを通じ合わせられるか、どきどきです。恋する要さんが正直上手く想像できないんですが…期待しておきます(笑)。
要さんたちの職業が、今後のお話にどうからんでくるのかも、かなり楽しみ。大正時代の少女小説、未知の世界ですが興味はあるので、これからいろいろ書かれると嬉しいなと思います。
緋桜お兄ちゃんの日常ももう少し読んでみたい。
蘭子ちゃんと小夜ちゃん、千鶴ちゃんはもう女学校やめちゃっているけれど、これきりの出番ではないよね…?せっかく良いお嬢さんたちなので、彼女たちのことももっと読んでみたいです。

前作では「桜」の花がとても印象的でしたが、今回のお話も「なでしこ」の花が印象的で良かったです。
渋い色合いの表紙に散るなでしこ模様もきれいねえ。


大正時代が舞台じゃないけれど、斎藤けんさんの漫画『花の名前』が、設定的にちょっと似ていたかなと思いました。
大正ロマン(?)のかわいらしくハイカラな雰囲気的には、石原ケイコさんの漫画『お嬢さまの運転手』にも通じるものがあったかな。


ここ一週間の間にそれぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪
コメントもどうもありがとうございました!全然更新できていなかったのにぽちりといただけて、本当に嬉しかったです。
お返事、もう少しだけお待ちくださいね~。

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カテゴリ: ルルル文庫

タグ: 深山くのえ 

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