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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『君の名残を』浅倉 卓弥 

君の名残を君の名残を
(2004/06/15)
浅倉 卓弥

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白石友恵と原口武蔵は、高校の同級生で幼馴染みで、武蔵の家の道場での剣道仲間。
ある日の下校途中、ふたりは不思議な落雷に遭い、気づくと平安時代末期・源平の時代に離れ離れで飛ばされていた。
友恵は山中で駒王丸という少年に助けられ、やがて「巴」として、彼――木曽義仲と結ばれ、彼を守り通す決意をする。
一方武蔵はわが身を置いてくれた寺の和尚と子どもたちを惨たらしい殺戮で失った後、京で牛若という少年と出会い、生涯行動を共にすることに。
そしてもう一人、友恵の親友の弟・志郎もまた同じ時代に飛ばされ、北条四郎義時としての人生を歩むことに。
源平の戦が各地をうねりかけ抜けていく中で、友恵や武蔵、周りの人々も、複雑に絡まり合う運命に立ち向かい、各々の人生を必死に生きてゆく――。


『活字倶楽部』2011春号の京都・平安特集で取り上げられていて存在を知り、そしてツイッターでもフォロワーさんにおすすめしていただいて、手にとって読んでみた一冊。
『平家物語』の世界にタイムスリップする女子高生!しかも義仲と結ばれて巴御前に……『平家物語』もタイムスリップものも好きな私(というか、倉本由布さんの歴史ものコバルト文庫を愛読してきた私、と言った方がいいかな。笑)、設定にとても心惹かれまして(笑)。

実際に手にして読みはじめてみると、ずっしり分厚い本で、しかも一部を除いて文章二段組みで、かなりの文章量の壮大な物語でした。
読み終えるのに、ええと、四日間はかかったのかな。
それでも文章自体は読みやすく、読むごとに続きが気になるお話の展開で、空き時間を見つける毎に続きを開いて少しでも読むという繰り返しで、読み切ってしまいました。
『平家物語』を下敷きに進んでいくお話なので、章の名前も有名な戦いの名前で、先に起こる出来事は常にうっすら分かった上で読んでいた訳ですが…、それでもやっぱり気になるものは気になる!

それぞれ巴御前と弁慶になった友恵や武蔵の行く末が、やっぱり一番はらはらどきどきでしたし、それに、この物語の中に生きる登場人物たちが、皆いとおしくって、彼らの人生を、見届けたかったのです。
いとしいゆえに、避けられない悲しい運命に、頁をめくるのがゆっくりになったりもしたのですが…。
ラストまで読むと、読み切った!という満足感と、複雑な切なさといとおしさに、しばし、放心状態。

なんと言い表したら良いのかよく分からないんですけど、歴史、時代の流れというものが、自らの意思さえもっていて、それが物語の中でうねりをあげて駆け抜けていく様が壮大で、情け容赦なさすぎで、存在が大きくて、読んでいてただただ圧倒されました。
友恵や武蔵がこの時代に飛ばされ、巴御前に弁慶になったのは、ただ、この歴史の流れを正しくするために、必要な役割を担っていたから。
はー、なるほどねえ……。(ざーっと一読しただけでは、ひたすらうなり声しか出てこない…苦笑。)

動乱の世の中の物語で、戦いは情け容赦なく、残酷な運命が人々を襲い、読んでいて何とも言えない気分になったりもしました。
特に武蔵が最初に身をおいたお寺の和尚さんと子どもたちを襲った殺戮は…惨たらしすぎる。鈴もリキもあんなにいいこたちだったのに…あんなに必死に戦ったのに…(涙)。
倶梨伽羅峠の戦いも…、壮絶、だったなあ。
物語の後半の平家滅亡までの物語も、先は分かってはいるけれども、やはり滅びゆく影が切なくて。
壇ノ浦の戦いの入水の場面が特に、昔読んだ子ども向けの『平家物語』も重ね合わせ、涙ぐんでしまいました。
それでもただ惨たらしいだけのお話じゃないんですよ。皆それぞれの生を精いっぱい生きていて、迷ったり間違ったりもいっぱいするけれど、人を愛して、信念を貫き、全力で戦っていて、最後まで読んできて思い返すと、皆きらきら輝いてる。

そんな物語の中、私が一番好きだったのは、友恵と駒王(義仲)の、ゆるぎない夫婦の愛情、お互いを支え合い共に戦う姿でした。
そこまで強調されて書かれていた訳でもないんですが、ときに惨たらしい物語の中、この夫婦の仲睦まじさが、読んでいていつも清涼剤のようでした。とても心地よかった。
木曽の山の中の出逢いから粟津の戦いの最期まで、ひたすら大好きなふたりでした。
特にはじめの方、笛を吹く友恵に駒王がプロポーズするあたりの下りが好きです…たまらない。駒王の一見尊大な愛の言葉が格好良くって、未来での友人にやきもち妬く姿がかわいい(笑)。
義高が生まれたあたりのお話も好き。
ずっとこのまま平和だったらいいのになあ、と、私も本当に願いましたけれど。
義仲の本名とその運命を、元服のときに悟って、分かった上で彼に添い遂げる運命に苦しみつつも、ならば、私は彼を死なせないために生きるんだ!と決意して、本当にその通りに戦いに生きることを選んだ友恵。格好良かったです。

義仲がまた凛々しくて格好良い人だったんですよねー。ここまで義仲に肩入れして、木曽勢視点で『平家物語』の世界を読んでいったのは、そういえば私、はじめてだなあ。
正直義仲には、源平の争いの半ばであっけなく命を散らしてしまった武骨のひと…みたいなぼんやりとしたイメージしかなかった私、読んでいて色々本当に新鮮でした。倶梨伽羅峠の戦いとか、そういえば名前は知っていても実際はどんなものだったのか、全然知らなかったんだな。
巴との絆も良かったし、兼光・兼平兄弟との絆もとても好きでした。
法皇を攻める直前の辺りの夫婦のシーンが、悲しくも良かったな。
粟津の地で、最期まで友恵を思って行動する義仲に泣けてきました…。
四人で木曽へ、平和な時代を過ごしたあの地へ帰れたら、どんなに良かったことか。私も思わずにいられませんでした。

そして友恵と武蔵の再会、不吉な予感に気をもんでいましたが…案の定。
義仲の妻の巴御前以外の何者でもなくなってしまった友恵が、武蔵にもためらいなく刃を向ける辺りが、辛く切なくって、一方タイムスリップ後にふたりそれぞれに流れた時の流れを思うと、リアルだなあとも思い。
なんというか、義仲も、友恵も、武蔵も、あんまりにやりきれないよなあ…と泣きたくなりつつ、先を読んでいたのですが。
ラスト、平泉の章の最後まで読んで……、ああ、そうか。そういうことだったのね。
正直なところ、完全に納得できるかと言われると少し首をひねってしまうんですが(笑)、でもひとすじ救いがある、と言っても良いよね。読み返したらまた印象が違ってくるかもしれません。

ところでこのお話、私は実は、義仲の他の奥さんはいつ出てくるのか…と悲劇への展開とはまた別にはらはらして読んでいたのですが(笑)、結局最後まで、義仲はただ友恵ひとりを愛しぬく旦那さまでした。それは正直、私にとってかなりの救いで、ほっとしました。
史実を考えるとあり得ない展開なんでしょうけれど…、やっぱり友恵には、これ以上苦しんでほしくはなかったのよ。

(同じように、義経の妻も、静御前ただひとりでしたね。義経のお話はこれまで少し読んできた私、正直それまでの彼のイメージとはちょっと違ってましたが…、一途にひとりの女を愛する義経も、これはこれで人物のイメージ通りかな、とか読んでて思いました。
この辺語りだすと、静の人生、結局あんまりにかわいそうすぎる…とか色々また思うことあるんですが、終わらないので。汗)

義仲と友恵の絆が濃密で、彼らふたりのお話として読んでいるとさらっと流されそうにもなりましたが(汗)、彼らの息子の義高も、また切ない子だったなあ、とため息が出てきました。
大姫と義高のふたり、あまり書かれていなかったけれど、どんな暮らしをしていたのかしら。
大姫と友恵が、すべて終わったあとに睦まじく語りあう場面が、印象的でした。
ま、義高と大姫は、上にも書いた倉本由布さんのコバルト文庫の物語で何パターンも読んできたので(笑)、それで自分の中でイメージをおぎなうこともできるんですけどね。


うーん、なにぶん物語が壮大すぎて、感じたこと、いとしい人たちを、感想にとてもすべて語りきれないのが、残念(苦笑)。
それに何日もかけて読んできた物語を今日読み切ったばかりなので、まだ読み終えた放心状態の中というか。消化しきれてないよなあ…。
色々感じたことはあるけれど、読むことができて、本当に良かったなと思える、素敵な作品でした。これは確か。
冬に読めたのも、良かったなと思います。物語の重要な場面で、雪の白さの光景が、とても印象的だったから。


一昨日と昨日、それぞれの記事に拍手下さった方々、どうもありがとうございました♪

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カテゴリ: 歴史もの

タグ: 浅倉卓弥 

この記事に対するコメント

これもぜひ読みたいです♪(^^)

fallcloverさん、おひさしぶりです。

木曽義仲と巴御前といえば高校の古文の教科書を思い出してしまうのですが、歴史モノ大~好きなので、これもぜひ読んでみたいと思います。

そう、『はるかな空の東』とってもステキなお話でした~

他にもおすすめがあったらまた教えてくださいね!(^^)

URL | いくら丼▲ら #-
2011/12/05 23:17 * 編集 *

Re: これもぜひ読みたいです♪(^^)

>いくら丼▲らさん
コメントありがとうございます。

こちらこそ、お久しぶりです♪最近ABC関係の記事がすくなくてごめんなさい…(汗)。
本の話題の方でもいくら丼さんにコメントいただけて、嬉しいですーありがとうございます♪

はい、『君の名残を』素敵なお話でした。
文庫版も出ているようなので、いくら丼さんも興味を持たれましたらぜひぜひ!

そして『はるかな空の東』、お気に召してくださったようで、すごく嬉しいです!昔からずーっと大好きなお話なので…。
村山早紀さんの本は、最近もいくつか読んでいるのですが、どれも良いお話で満足です♪

URL | fallclover #SvKcs0as
2011/12/07 22:15 * 編集 *

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