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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『花を追え 仕立屋・琥珀と着物の迷宮』春坂 咲月 




仙台の篠笛教室に通う女子高生・八重は、夏の夕暮れふとしたきっかけで、仕立屋の美青年・宝紀琥珀と出会う。
その後篠笛教室にやってきた琥珀と八重は、着物にまつわる様々な謎を共に読み解いてゆくことに。
ドロボウになる祝着、端切れのシュシュの呪い、そして幻の古裂「辻が花」。
やがて八重と琥珀の前には、ひとつながりの大きな謎が浮かび上がり——。


はじめて読みの作家さん。
絢爛豪華な着物の世界の謎を追いかけていく日常の謎仕立ての一冊でした。
華やかで美しい表紙イラストとあらすじが私好みで気になって購入し(なんといってもヴィクロテの影響で「仕立屋」というワードにいちいちすべて反応せずにいられない)、そのすぐあとでTwitterのフォロワーさんにおススメもいただき、これはぜひとも読まねばと手に取りました。

なんといってもお着物の薀蓄がとても充実していていちばんの読みどころ。
その辺に関してほぼ知識ゼロの私ではありますが、具体的にイメージできないまま読んでいても、十分楽しめました。
なにしろ琥珀さんが、ほんっとうに楽しそうに着物の薀蓄を八重さんに細やかに語り続けているので、その楽しさにつられてしまったというのもあると思いました。
実際の描写も言葉が一つ一つ美しくてみやびで、読んでいてうっとりしました。各種謂れや和歌の言葉遊びとかもさらりと織り込まれていて楽しい。

着物を着るとドロボウになるとはなんぞや?とか、微妙な仲の友人に贈った手作りシュシュが呪いの品なのでは?とか、着物の知識がないと全くちんぷんかんぷんな謎ばかりでしたが(そして微妙に不気味)、さらっと解き明かしてゆく琥珀さんすごい。
序盤からのひとつひとつのささやかな謎が、後々の展開の大きな謎にひとつひとつ伏線としてつながっていっていて、あとから読み返したときにおおお、と何度もびっくり。
琥珀さんは序盤から謎めいた雰囲気ばりばりでしたが、ヒロインのごく普通の女子高生八重の過去が、実は物語最大の謎そのものになっていて、八重を中心に老獪な大人たちがぐるぐる策略をめぐらしていて、どうなることやらどきどきでした。
特に三章『花の追憶』からはその一つの大きな謎に向けて物語がぐいっと勢いづき、舞台が全国各地に飛び時間軸も行ったり戻ったり、引きこまれて最後まで一気読みしてしまいました。
なるほど、『花を追え』というタイトルにふさわしいお話だったなあと、最後まで読み切っての感想。
幻の花の古裂を追っかけてゆくという構図がとてもロマンティック。

着物をめぐる大人たちの策略が不気味で若干ほの暗い雰囲気になりそうなものだったのですが、八重と琥珀さんの十歳年の差カップルのロマンスパートはとっても一途でひたむきで可愛らしくて(←琥珀さんが)、そっちにほとんど印象持って行かれました!
着物のことが大好きでかつ八重のこともとっても大好きな、そこそこいい年した琥珀さんが、なんというか微笑ましい~。
黙ってたたずんでいれば女性に熱い視線をかけられる端正な和風美青年で、超一流の仕立て屋かつ冴えわたる頭脳の持ち主。なんですけどねえ。着物と八重さんへの愛がとにかく重たくて……(苦笑)。
いつどこの場面でも八重さん以外の女性は眼中にも入っておらず笑顔でさりげなくアプローチをし続け、八重さんのためなら主義に反する夜なべも惜しまずサの字を引っ張って日本各地におっかけてゆく琥珀さん。わがままで自分勝手な天才肌の芸術家のイメージそのものといいますか。愛すべきお人です。
あと結び文とタフタの意味深な組み合わせ!絶妙に面倒くさい!(笑)

人魚姫のつもりが自分が人魚だったというのは、うまい言い回しだったなと思いました。確かに琥珀さんが報われない。
というか、さらりと流されている感があるけれど、幼い日に八重さんが受けた仕打ちがひどすぎないですか……?犯人はもっときつくお灸をすえられるべきだと思うのですが。
このあたりは、コレクターの世界ってすごいなー怖いなーと思いました。
篠笛教室の銀さん、由依さんペアがお気に入りだったので、中盤の展開はこれまた辛かったのですが、からくりが分かってホッとしました。
最後の最後に登場した花の着物の豪華さは感動的でした。お父さんのことも救いがあって、良かった。
表紙イラストに帰ってきて、描かれていた花に改めて納得。

脇役キャラでは上にも挙げた由依さんが好きでした。八重と年の差を超えてお稽古仲間として友情を育んでいるところが好きでした。
八重の友人達も好きだったので、もっと出番があるとより良かったかなあ。基本的にヒロイン以外は年配の登場人物が多めの落ち着いたお話でした。
八重の母親と義理の父親のエピソードはもっと詳しく読みたかったかも。八重が陸朗さんに想いを寄せていた理由が個人的にちょっと弱く感じたのもあり。あと実の父親のエピソードも。
どこまでも琥珀に振り回され続ける祭文さん不憫でした。しっかりしたたかな商売人であることは感じましたが。彼のほんのりしたロマンスの気配はその後どうなったんだろう。というか年下の娘っ子って全然人のこと言えないじゃない(笑)。
あと篠笛もお気に入りアイテムだったので、篠笛がもう少し物語にしっかり絡んできてくれるとより良かったかな。

とか、若干突っ込みどころもありつつ、「仕立屋・琥珀と着物の迷宮」、というサブタイトルで、最終的にはまあそんな感じでいいのかもね、と色々納得。語られていない部分は迷宮の中にあるのでしょう。ということで。
総合的にとても楽しく読めた和風ミステリーでした。良かったです!

大学生になった八重は琥珀さんの着せ替え人形になる未来しか見えないけれど、高2にして大学生に間違われる大人びたしっかり者の八重なので、琥珀さんをびしびし操縦してうまい具合に仲良くやっていくのではないかと思っています。
でも琥珀さんはようやく八重を公然と恋人にできてすごい嬉しいだろうな……。やっぱり八重は苦労しそうだな。
とかなんとか、色々勝手な妄想が膨らんでしまいました。
(それにしても年の差カップル率が高いお話だったな……年の差ロマンス好きな私にはとても美味しかったです。)

お着物をめぐる和風日常の謎ものといえば、白川紺子さんの『下鴨アンティーク』シリーズも傑作なので、どちらかお気に召された方は、もう一方を読まれるのも良いのではないかと思います。
『下鴨アンティーク』もまた、高校生の女の子と大学の先生の年の差カップルのじれじれが美味しくときめくお話ですので。(そこですか)

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 春坂咲月 

『アンと青春』坂木 司 




『和菓子のアン』の続編。
デパートの和菓子屋『みつ屋』でアルバイトしているアンちゃんこと杏子さん。
美人で頼りがいのある椿店長、乙女な好青年立花さん、元ヤン人妻大学生の桜井さん、個性豊かなメンバーと一緒に、今日も店頭に立ち、和菓子をめぐる謎を解いてゆく——。

デパ地下の和菓子屋さんを舞台に、アルバイトの女の子ががんばる和菓子メインの日常ミステリー、嬉しい続編!
続きが読みたいなあとずーっと思っていたのでとっても嬉しいです。

それでもハードカバーで買うべきか、実のところちょっと迷っていたのですが。
表紙のお餅菓子が、それはまあ、素晴らしく美味しそうで。この半透明でぷるんとしているお餅の質感と、なんともいえないきれいでやわらかな餡の色、梅の花のアクセントもすべてがさりげなく美味しさを主張してきて、ねえ。
あとは『アンと青春』というタイトルが、本家(?)アン・シリーズの第二作目タイトル『アンの青春』とばっちり重なっていて、『和菓子のアン』も『アン・シリーズ』も大好きな私は、やっぱり手に取って読まずにはいられなかったのでした。

カバー裏の本体や見返しの紙や色遣いがまた斬新で和菓子のイメージぴったりで、心にくい演出にうなってしまいましたよ。

坂木さんのお仕事青春もの小説、しかも女の子が主人公のお話が、私はやっぱり大好きだなあ!!と改めて認識しました。
色々思い悩みつつも頑張るアンちゃんの姿に、読んでいる私もたいへん元気づけられて、ああ、私も明日もお仕事頑張らないとなあ、と前向きな元気を分けてもらえました。すごく良かった。
帯のコピーの「果てしない未来と、果てしない不安。甘いお菓子が、必要だ。」というのもとてもうなずいてしまうメッセージ。
今回出てきた和菓子(ときどき洋菓子)も、どれもこれも美味しそうで付随しているエピソードも素敵で、読んでいるだけでも甘さいろどり質感を想像しては、うっとり幸せに浸れたりして。(でもやっぱり実際にも食べてみたいんですけれど。)
みつ屋さんのレギュラーメンバーさんたちも相変わらず面白くて頼れるいい方ばかりで、ときに壁にぶつかったりちょっと気まずくなったりしつつも(お仕事やってたらそういうのあるの当たり前ですもんね)、わいわいにぎやかにお仕事に誇りを持ち働いている様が、読んでいていいなあ、素敵だなあとしみじみ思いました。
美味しいものを本当に美味しそうに楽しそうに食べるアンちゃんが、やっぱりいっとう愛おしいです。
デパ地下お仕事裏事情をのぞけるワクワク感も健在です!

『空の春告鳥』
『和菓子のアンソロジー』にて既読のお話からスタート。
うんうん、お菓子の催事も楽しいし、駅弁の催事も楽しいんですよねえ。
「飴細工の鳥」のイメージが二転三転してふむむ、とわが身にもつまされるような気持ちになったところで、乙女ふたりの中華街の食べ歩き、美味しそう!飲茶もミルクティーもカフェのクレープも最高にセンスがいいです。乙女の味覚に鎖国は存在しないのです。

『女子の節句』
まずは、アンちゃんと友人たちの京都女子旅行が、とっても楽しそうで良かったです!いいないいな~。
アンちゃんの性格、美質をよく理解してくれてて話を聞いてくれたり適切なアドバイスをくれたりする友人の存在に、私はなんだかとてもほっとしてしまったのでした。ふだんアンちゃんの近くに同級のお友達っていないから、ね。普通の女の子としてのアンちゃんの姿を見られてほっとした、といえばいいのかしら。
ちょっと買うのにステップが必要なお店の上生菓子も、やっぱりパフェも、乙女はみんな大好物なのです!作者さんはよーく分かっていらっしゃる。
柚子シャーベットと和三盆のアイスクリームにあたたかな塩キャラメルソースをかけた冬パフェなんてきたら、寒い夜でもいただかずにはいられないのですよ。
アンちゃんが語るお姑さんのお菓子のお話は、ソフトに黒いものを感じて、でも悪と言い切ってしまうにはためらいがあり、もやもや。でも最後の友人達の意見に出てきたけど、お嫁さんだって実はけっこう強いんじゃないかな。そう思いたいな。あと桜井さんと椿店長それぞれの女の意見にも救われた感が。
蓬莱山って不思議なつくりのお菓子があるものだなあ~と以前思った記憶がありますが、こういう場面のお菓子だったのですね。

『男子のセック』
章タイトルが対になっていてなんだかおもしろい。
今度のセックは、洋菓子のセック。粉と油脂と砂糖の配合が絶妙の、バターが焦げるまでしっかり焼かれたアクセントの強いお菓子。うわあ、みつ屋の和菓子とは全く別方向から攻めてくるこういう洋菓子もたまらないですねえ。食べたいよー!
ここにきて『春告鳥』の店員さんをしていた柏木さんが再登場とは思いがけないつながり。
そしてアンちゃんに思いがけない暗雲が。
私自身も考えなくちゃいけないのに目をそらしていることを、しっかり考えてぐるぐる悩んでいるアンちゃん、そして柏木さん。
上から目線でなんて失礼ですが、悩むことばかりでも、やっぱりアンちゃんのお仕事にどこまでも真摯な姿勢が、私は読んでいて気持ちがいい。
立花さんのわだかまり、どうしちゃったんだろうと思いましたが、アヒルとか、そういうことか。このひともまた仕事に関して真摯で私はもう憧れるしかない。
ちょっと人間関係が辛かった時もあり、そんなとき桜井さんのガッツがなんか救いでした(笑)。頼もしい!
アンちゃんたちが食べていたホットサンドが何気に美味しそうで食べたくなりました。確かに食べにくそうですけれど(笑)。美味しくいただこうとするとどうしても見苦しくなっちゃうんですよね。柏木さんがその点うらやましい。

『甘いお荷物』
デパ地下でジュースを買おうとした女の子とお母さん。
うん、これもまた難しい問題ですよね……。読んでいてうなってしまいました。表面的に見るとあれかもしれないけれど、このお母さんは実は、気遣いのひとなのだなあ。
アンちゃんと立花さん、柏木さん、そして師匠が顔をそろえて、また少し人間関係がぎくしゃくと。
ううう、個人的にはアンちゃんが辛い立場に立たされるのが嫌なので、前のお話との連続もあり、若干立花さんに怒りが……。
甘酒、久しぶりに飲みたくなってきました。インスタントじゃないやつを。
そして梅本家の朝ごはんもおいしそうですねえ。

『秋の道行き』
ちょっと重ための読み口のお話が続いて、こちらは秋の晴れた空のように明るく澄んだ読み心地のお話で良かったです。
立花さんがアンちゃんに贈ったお菓子の謎解きに加え、アンちゃん自身の悩みにも、一区切りが。
『秋の道行き』も『はじまりのかがやき』も、描写が魅力的で素敵すぎる。
福島県の五色沼や金沢の美術館や、美しい色彩が和菓子のイメージに次々と重ね合わされていく展開も、みやびな感じでとても楽しかったです。
師匠とアンちゃんの会話場面も良かった。金沢にはとても素敵なお菓子があるのですね。
そして立花さん、アンちゃんが駅に迎えに来てくれて、嬉しかっただろうな。ふふふ。
桜井さんへの贈り物もあり、心がまあるく収まったところで。ラストの「甘酒屋の荷」の意味。
『男子のセック』あたりから、なんとなくそうなのかなあ?と思っていた雰囲気に、一気に色が付いた感じで、師匠の言葉も重ね合わせてきゅん、ときて、落ちてしまいました(笑)。
やっぱり、やっぱり、そういうことなんですよね。ね?
不意打ちの糖分投入(お菓子のではない)に、ときめきがとまらないラストでした。
思えば元祖『アンの青春』も、あの時点での糖分は、これくらいだった気がして、さらににまにま。
(あっちのお話もアンのお仕事奮闘記、友人たちとの語らいがメインで、恋愛に関しては、アンはまだ自覚していなかったよね。)
乙女な立花さんのこと、どうなるのかとも思いますが、よくよく考えてみるとギルバートもたいがいロマンティックな男性だったのではないかと……。

この流れでいくと、さらに三作目以降も、読めることを期待して良いのでしょうか。
読めるのだとしたら、とてもとても嬉しい。
今度も『アンの愛情』がモチーフになってくるのかしら。

さて、美味しいあんこのお菓子を(も)いただくために、明日からも、がんばりましょうかね!


昨日それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 坂木司 

『黒猫の回帰あるいは千夜航路』森 晶麿 




『黒猫』シリーズ第六弾。
パリで大規模な事故が発生したとのニュース、付き人は黒猫の安否を気遣う。
イタリアでふたりの距離は一度縮まったものの、黒猫との距離は、日常に戻れば遠くぎこちないものに。
後輩の戸影が持ち込んだ、ペルシア絨毯で失踪した教授の謎。人形作家と懐かしい人との再会。
美学にからめたふたりの謎解きが再びはじまる——。


『黒猫』シリーズの新刊!
文庫落ちを待たずに単行本を買って読んでいる、私にしてはかなり珍しいシリーズです。
だって待ちきれないんですもの。

幾千の夜を超えての、「回帰」。確かにタイトルの通りの物語であったと、ラストまで読んで感じました。

このシリーズ独特の、少しひんやりして美しくて知的な物語が、たまらないですね~。
一巻目にこれまた「帰ってきた」みたいに連作短編形式で、色々なお話の詰め合わせを楽しむことができたのが、良かったです。
美学講義の部分は相変わらず難しげなのですが、黒猫の語り方が上手なので、読んでいると私もなんとなくわかった気分になり、共に感嘆できるのが、良いですね(笑)。

黒猫のかたわらに付き人がいる、それが日常として、物語が進んでいくかたちに戻ってきたのが、嬉しい。
一巻目のふたりから、遠回りし時間を経て、時に手が離れつつも並んで歩き続け、この関係にようやくたどりついたのだと思うと、言葉にあらわしがたい充足感。

博士研究員になった付き人の成長が、前巻よりもさらにいくつもの場面で実感できて、嬉しくなったり。
前巻においてたしかに縮まった黒猫と付き人の関係。もうお互い意識せずに気楽に付き合えていたころには戻れず、かえってぎこちなく遠ざかったような付き人の心の焦燥感が、読んでいてとてももどかしかったり。

『空とぶ絨毯』
アラビアン・ナイトなモチーフと、男の苦悩に寄り添う妻の愛情と、ペルシア絨毯の世界と、パリの事故のざわざわ感。
色々な要素が調和していて夜の大人のおとぎ話、純愛の物語で、とても私好みでした。
駆けずり回る付き人に奇跡のように届いた声。なんてずるいタイミング!(笑)
黒猫がこんなかたちでするりと以前の日常に戻ってくることになるとは思っていなかったので、とても嬉しかった。
唐草教授がいて、戸影君が付き人のかたわらで頑張っていて、キャンパスには学生や教職員や関わりのある人々がいて。
大学の日常の物語のかたちが、好き。
付き人はさらりと流しているけど、苺オ・レをスプーンでひとくち……甘い!

『独裁とイリュージョン』
ミナモさんとはまたお懐かしい(笑)。彼女の性格と口調で非常勤講師をやっているというのがなんかまたしっくりきます。
ミナモさんが黒猫になぞかけをして、そこからの黒猫の返し、ミナモさんの想いの向かう先、ミナモさんらしい愛の物語でした。
人形師の愛も、からくりが解ければ、純粋でシンプルなもので、ふたりお似合いだと感じました。最後のお互い気持ちを通じ合わせた場面に垣間見えたミナモさんの愛情深さがとても好きでした!
一瞬空気になってしまった戸影君が非常に哀れでした(笑)。でも付き人の近くにずっといたのは彼なんだよな。一緒に雑用している場面の気安いやりとりも好きでした。付き人のメガネはたしかにツボですね……。

『戯曲のない夜の表現技法』
女優の卵の娘と、彼女を見出した劇作家の紳士の物語。ふたりの関係性がとても素敵で切なくて良かったです。
何もかもがかけ離れていて重ならない(と、お互い思い込んでいる)ふたりが、少しずつ惹かれあいときに揺らいでいる様が、もう。
鞍坂氏が最後に残したものに涙。岸田さんもいい仕事してました。
キャンディ売りの娘というそれだけのシチュエーションがとてもはまっていて美味しい。

『笑いのセラピー』
黒猫の姉の冷花さんが語り手の異色作。
小学生の黒猫だ……!理屈っぽくて頭の回転が速すぎるのはやっぱりだけど、今より脇が甘くて姉には逆らえない彼が、非常に新鮮で楽しかったです。
笑いのセラピーと言うタイトルの割にはシビアな事件となりひやりとしましたが、それでも収まるべきところに収まったのは確かみたいで、良かったです。
冷花さん視点から見る付き人の人となりがとても素敵で、やっぱりこのふたり、客観的に見て恋愛に不器用すぎますね……そこが好きです。

『男と箱と最後の晩餐』
オイスタークリームソースのお肉がものすごく!おいしそうです。
そしてそっと幕を下ろした、幸福でせつない恋の物語。
黒猫が食べていたぶどうのパフェがまた美味しそうでした。
ドレスをめぐるやりとりで拗ねる付き人に「君が大人になったのさ」という黒猫の台詞にどきどき。

『涙のアルゴリズム』
新しい音楽の試みに隠された、冷静沈着な荒畑教授の愛情に、私もほろりときました。
弓月氏の態度も種を明かされてしまえば納得のいくもので。不器用な彼を包み込む愛情がまたよい。
おかあさまのことで不安に揺れる付き人、でも黒猫には上手く伝えられなくて。
そんな彼女に帰宅後黒猫が贈った愛情のひとときがとても素敵で心にしみいりました。
ラテスト教授。そうか。寂しくなりました……。
ここでもパフェとバニラアイスのあれこれが甘くてちょっとやられました。なぜ付き人はスルーしているんだ。

最終話~エピローグにかけての、黒猫と付き人のやりとり。
今までのすべてがこのやりとりに持っていかれたかのような読後感!
黒猫と付き人、ようやくここまで。鍵をわたすときの黒猫のまなざしにやられてしまいました。

愛するものと、死と別れと。時間と。
そんなモチーフが多く、黒猫と付き人の関係にもどこかで重なり合うものがあり、構成が心にくく、堪能しました。

そしてこの作品、作者さんと絵師さんによる、クイズ正解者への特典プレゼントがおこなわれていまして。
あまりの甘さと完成度の高いおまけに読んでいてひっくり返りそうになりました。悶絶です。
期限があるようですので、ご希望の方は早めにチェックされると良いと思います!
黒猫の回帰あるいは千夜航路』飼い主様向け特典クイズのお知らせ

この特典の話の感想もちょっと書かせていただいてもよいでしょうか……。
追記に反転文字で書かせていただきます。久しぶりに使ったな。

この甘い二人の断片集を読んで、本編を読み返してこそ、ふたりがふたり、帰ってきたんだなあ。
お互いが、お互いの帰る場所になったんだな。
と、しみじみ胸がいっぱいになったのでした。
あああ、なんか全然上手く書き表せない。
こんなに素敵でロマンティックな小説なのに。

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

『黒猫の約束あるいは遡行未来』森 晶麿 

黒猫の約束あるいは遡行未来黒猫の約束あるいは遡行未来
(2014/09/25)
森 晶麿

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『黒猫』シリーズ本編第4弾。
フランス滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの依頼で、イタリアの「遡行する塔」の調査に向かう。
一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先でなぜか突然映画への出演を打診される。
異国の地、離れ離れの状態で、ふたりの新しい物語がはじまる——。

『黒猫』シリーズの本編の続きが出ました!
本当は私、文庫化するまで買うのは見送ろうかなあ……と思っていたのですが、ネット上の皆さまの評判がとても良く気になって気になって、結局単行本で買ってしまったのでした。
丹地陽子さんの表紙イラストが相変わらず秀逸。
すれ違い歩く黒猫と付き人の構図が良いです。付き人の歩く姿勢はリズミカルで見ていて気持ちがいいなあ!鮮やかなレモン色もアクセント。

そして本編もやっぱりとても良かったです♪
静かで上品で少しひんやりしていて理屈っぽくて、読んでいると不思議と心安らぎます。(美学の講義部分は理解するのに頭使いますが……。)
遡行する塔と映画にまつわる謎もロマンティックでひやりとした狂気もはらんでいてすべてふくめて魅力的だったし、異国で偶然再会した黒猫と付き人のふたりの関係にも、進展が!
後半部分のふたりのやりとりにはきゅんきゅんし続けてました。

お話の語り手は、前半パートはラテスト教授の孫娘・マチルドが再び登場で、後半パートは付き人ちゃん。
黒猫とマチルドがイタリアの奇妙な塔に調査に乗り込むところからのスタートです。
相変わらずマチルドは黒猫好きだな……私は付き人派(?)なのでちょっとはらはら。身内思いの良い子なのに、ごめん、マチルド。
相変わらずパフェを愛好している黒猫の姿にくすりと。キャラメルジェラートパフェ?おいしそう……!
ヒヌマ邸の人々の様子はかなり不審な感じで。
そして衝撃の再会の場面。盛り上がります!

そしてその場面にいたるまで少し時間が戻って、付き人視点からの物語。
唐草教授とエドワード教授とのやりとりの中で、付き人の成長を感じました。目を見張るようです。
そして突然映画にスカウトされてしまった付き人の運命やいかに。トッレさんの思惑が分かるようで分からなくてどきどき。
ふたりの再会は、心ふるえました。

マチルドと付き人が直接顔を合わせて、どうなることやら……とちょっとはらはらしていたのですが、あれ、意外と気が合っている(笑)。ふたりで黒猫に挑戦して一緒にやり込められている感じで、ふたり共感めいたものも覚えているようで、なんだか良かったです。マチルドが本当に素直でよいこでした。
マチルド視点から、付き人の魅力がはじめて客観的な言葉で表されて、今までのストーリーを振り返って彼女の人物像にすごく納得できて気持ちが良かったです。

見ていて気持ちのいい人だった。大人しいし、少しおっとりしてもいるけれど、潮風のようなきりりとしたところがある。芯の強さと透明感。 (272頁)

再会したふたりの一夜は、すべてのやりとりが意味をはらんでいて濃密でした。
「タコは泳いでいる間はアボカドのことなんか知りもしないのに」云々のやりとりがおかしくて視点がこのふたりらしくてお気に入り。
戸影君のこと、さりげなく聞き出している黒猫と、まるで無自覚な付き人のかみ合わなさも、おかしかった。彼も彼で頑張ってるようです。それは黒猫もあせるでしょう。
そしてこれまでのシリーズ史上でもっとも糖度の高いやりとり。もどかしさとのバランスがまたこのふたりらしくて、くうっとうなってしまいました。しかし甘いです。最高です。
普段化粧っ気がない付き人だからこその口紅の使われ方がお上手でした。特に翌朝のやりとりが、たまらない。

またそんなそっけない別れ方を……と後ろ髪ひかれる帰り道で、まさかの再会もあり。
遡行する塔に主役としてかかわった人々のドラマは、そう簡単に白黒つけられないけれど、なんだかとても鮮やかなものが私の心の中に残りました。表紙のくっきりしたレモン色とドレスの赤。

そしてエピローグの再びマチルド視点、あああ、そういうことだったのかーー!!心の中で叫びました。
怪しさ全開だったマルタさんたちが、ふふふっと種明かしの茶目っ気ある笑顔を浮かべたような錯覚が。
そしてマチルドの目に映った、黒猫の想いの真実。
黒猫と付き人の約束を想うマチルドが健気でひりひりとせつなかったです。
マチルドにとっては、憧れ半分の恋だったのかもしれないけれど、それでも。

映画をみるときには、日常を置き去りにする、という感覚、よくわかるなあと思いました。
遡行して崩壊する塔、恋人同士のドラマも内包していて、ロマンティックでした。建築学なんて全然専門外ですが、分からないなりに感じるものもありました。

美学ミステリーというか、ほとんどラブロマンスとして楽しんでいる私。
学があり理屈っぽいふたりだからこそ、あれこれ考えすぎて結果遠回りし続けざるをえないのかなあ、とかちょっと考えたり。(『黒猫の薔薇~』の過去の恋人たちもそんな感じだった気がするので……いかん、がんばれ、黒猫!)


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

『探偵・日暮旅人の壊れ物/日暮旅人の笑い物』山口幸三郎 

探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)
(2013/05/25)
山口幸三郎

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探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)
(2014/04/25)
山口幸三郎

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『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズン第二弾、第三弾。
日暮旅人が経営する探偵事務所に、旅人の学生時代の先輩だという美しい女性・見上美月が現れる。
美月の親しげな態度に陽子は気が気でなく……(『日暮旅人の壊れ物』)

先週の週末に一気読みしてしまった、セカンドシーズンの続き。現時点での最新刊に追いついてしまいました。
特に最新刊の『日暮旅人の笑い物』は、良かった。シリーズの中で一番のお気に入りになり、読み返してはひたっていました。

まず『日暮旅人の壊れ物』から。
前巻の『宝物』から一転、またダークな面が前面に押し出されてきた巻でした。
旅人さん、復讐心からは解放されても、過酷な運命からはそう簡単には逃れられないんだな……。それゆえ愛する女性とあくまで一線を引いて接する姿勢に、読んでいてせつなくなりました。

『傷の奮え』『憧憬の館』
久々に黒い旅人さん全開。え、えぐい……。
朋美さんと旅人さんの交流、結果的に朋美さんはこれで救われて良かったんでしょうけれど、手段がわりとえげつないです。というかこのご両親いやだな……。旅人さんの過去を思えば必要以上に嫌悪してしまうのも仕方ない気もしますが。
憧憬の館がまた読んでいてぞくぞくしてくるお話でした。最初から救いがなくてあまりにやりきれない。
似た立場でそれでもまっとうな精神を保ち続けている雪路の存在が救いといえば救いかもしれませんが。

『竹馬の友』
他の話とは少し毛色の違う、過去の仲良し少女たちの絆の物語。
回想シーンからはじまる志のさんと緑さんとあやめさんの友人三人組が、本当に仲良しさんでお互いを愛する心がよくつたわってきて、せつなく幸せ感でいっぱいになりました。
女の子同士の友情って確かにこういう一面あります。そういうの、悪くは書かれていないのが、良かった。
灯衣ちゃんとの年の離れた友情もまたよし。

『箱の中』『昔日の嘘』
中学生時代、親戚の家を転々としていた頃の旅人と、旅人の先輩で彼になにかと構っていた美月さん、旅人の先生で従兄にもあたる甲斐先生の物語、そして今に続く物語。
中学生時代、刺々しさ全開の旅人の姿が、現在の穏やかで人当たりのいい(一見)姿を知るものからすると、かなり新鮮というか。
まあ、身に降りかかった悲劇を思うと無理ないとはいえ、辛い子ども時代を過ごしてきたんだなあと思うとやりきれなかったです。大杉君へのアドバイスも凄惨な……。
美月さんと先生に見守られてはじめて探偵役をかってでた姿が、それまでと比べるといきいきちょっと楽しそうだったのは、良かったな。
現在に至っての、先生と旅人さんの「会話」には、胸がいっぱいになりました。
開き直った(その方向を深く考えるとまた辛いですが)旅人さんの、唐突なデートのお誘いに、きゅんきゅんしました!
彼の気持ちは、プロローグのお墓参りの場面で、すでに答えは出ていましたよね。
灯衣ちゃんや雪路よりも先に連れてくる時点で。


次『日暮旅人の笑い物』。
「笑い」……、微笑み、愛情表現のひとつ、愛おしいと思う気持ち。(あとがきより。)素敵なタイトルだな。
表紙のイラスト、これまでのシリーズではお話に出てくるモチーフの組み合わせだったのに、今回はなんか、違うなあ。
旅人さんのファッションはまあ、クリスマスの装いなんですが。花束も完全に様になるきざないい男だな……。
よくよく観察してみると、『幸福の王子』とか?深読みすると旅人さんせつない。
そして鏡の中の女性の影が不気味です。
カラー口絵のおめかしした陽子先生、きれいです!初々しいとまどいの表情もすてき!

陽子先生との関係が激しく揺れ動き、そしてひたひたと迫りくる黒い影が。

『家の灯り』
クリスマスデートのラブラブさが素晴らしかったです。陽子さんもだけど、旅人の方もまた緊張して浮かれているのがはっきりつたわってきて、二重にときめきました。あまりに正統派にクリスマスを満喫するカップルなふたりに、読んでいて罠なんじゃないか……なんて思ってしまったり。うん、ある意味正解でした。
智子先生の立場からみれば、旅人が陽子に気があるのなんてバレバレだったそうで、あ、やっぱり……(笑)。
旅人さんは誰にでもおだやかで優しいって、いや、それは陽子先生限定ですって。読者ならではの視点で陽子先生につっこみを(笑)。
頂点までいったからこそ、告白の後の旅人の宣言が、あまりに辛く悲しくやるせなくって。ずるいです。
日暮家のクリスマスパーティー&バースデーパーティーの場面の楽しい雰囲気も良かったです。
亀吉のエピソードにうるっときてしまいました。だんだんテイちゃんといいコンビになってきました。

『組織の礎』『最良の一日』
新年早々因縁浅からぬテロリスト集団のたくらみに巻き込まれ、あろうことか暗躍している旅人さん。いったい何やってるんだ……。
旅人さんと面識があるばっかりに妙な気遣いをさせられてる増子さんと、彼女さんとのデートをつぶされたという気の毒な同僚さんに同情。
テロに身を投じた若者たちひとりひとりのエピソードが、少しずつ理解できるものもあって、なんだかやりきれないなあと複雑な心境になったり。
そして暴力団の幹部とも普通にやりとりしている旅人さん、本当になにやってるんだ。

『微笑みの代償』
『最良の一日』からつながってくる物語。とても好きなお話です。
図書室にての高校生カップルの微笑ましい純愛と、彼らの関係の終焉に泣きました。頼子さんの座右の銘がよい。
進介と頼子の愛の行方の物語と同時進行で、旅人と陽子のふたりの関係の決着も、ふたたび。
自暴自棄になっていた旅人さんに必死にくらいついて笑顔の仮面を引っぺがして本音を引きずり出して抱きしめた陽子さん、本当によくやった!旅人のそばにはなぜ陽子さんでなければならなかったのか、納得でした。
黄昏時に近くなった郊外の地での夢のような風景が思い浮かんだラストでした。

『魔の手』
旅人がついに目の手術の決意を。陽子さん、本当にえらい!(涙)
すっかり甘えん坊になった旅人と、母親のような愛情で彼をくるみこむ陽子のふたりの姿が、それまでとギャップがありすぎて、新鮮で、かなりときめきました。旅人さんかわいいな……。腹をくくった陽子さんの名前通りお日様のような力強い明るさもよいです。
反面、灯衣ちゃんの態度も、それはそれで無理ないです。この子、陽子先生のこと、それでも嫌いじゃないんだよなあ。雪路が理解者であってくれてよかった。
雪路の方にも恋愛っぽい動きがあり、このあたりだけなら、時がたてば、解決することであったでしょうに。
つかの間のこのメンバーの幸福を、ことごとく壊していってしまったラスト一連が、ほんっとうにもう、やりきれない。
意外な人の豹変に、ついていけてません。なんで?彼のことを気遣っていたのは、どこまで嘘だったの?
そしてストーカーの正体、読み返しても分からないです……しくしく。
復讐といっても、これまでの旅人さんがやってきたことを思い返すと、恨んでいそうな人いっぱいいるから絞り込めそうな気がしませんし……。
旅人さん、わかってはいたけれど、本当に黒いヒーローだなあ。苦笑い。
いつの間にか慣れちゃいましたが。この黒さがスパイスできいていてこその、日暮旅人シリーズです。

うわーん、最終巻は、本当にいつ出るんでしょう?待てません。
ハッピーエンドを切望しています。

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『探偵・日暮旅人の宝物』山口 幸三郎 

探偵・日暮旅人の宝物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の宝物 (メディアワークス文庫)
(2012/08/25)
山口 幸三郎

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『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズン第一弾。
一連の事件が解決した後も、陽子は旅人と灯衣親子の世話を焼くため、相変わらず探偵事務所に通う日々を送っている。
ある日、大学時代の友人の地元に出かけることになった陽子は、なぜか彼の恋人のふりをしてほしいと頼まれ——?(『夏の日』)
雪路と兄妹の物語『愛しの麗羅』、増子さんとの出会いの物語『花の名前』等、全五編収録。

先週の週末に四冊一気読みした『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズンを読みたくて読みたくてうずうずしていました。ようやく入手してきて一冊読了!
今回の表紙もとてもすてき。旅人さんと陽子先生の背中合わせの構図がふたりともおだやかに幸せそうで眺めているこちらも幸せです。花火と星空もきれいだなあ。
カラー口絵の花嫁さんとウサギさんもきれいだったし、裏側のおかっぱお着物姿の麗羅ちゃんが、もうそれはそれは可愛くてじたばたしました(笑)。

ファーストシーズンの脇役がメインのお話だったり、これまでの出来事の補足的なお話だったり。
いやあ、楽しかったです!
今回は特に大きな事件で引っ張られることもなく各話ほぼ独立したスタイルだったのですが、やっぱり途中で読むのをどうしてもやめられずに一気読みしてしまったのでした。

旅人さんが「復讐」という人生の重い枷からようやく解き放たれて、少しずつ普通の人間らしくなっていく様に、読んでいてほっとできました。
ダークな要素も控えめで、心ぬくもるおだやかなお話が多くて、読んでいて心にも優しかったです。
主に最終話、陽子先生と旅人さんのもどかしい恋愛模様もたまりませんでした。きゅんきゅん!

『六月の花嫁』
ゲストキャラ・お嫁さんになったばかりの愛歌さんが、男手ひとつで自分を育て上げてきてくれた父親の軌跡をたどっていく物語。
愛歌さんとお父様の関係がとても心ぬくもるもので、お父様がかつてこっそり仕掛けていたあれこれがとてもロマンティックで愛情にあふれていて、うん、良いお話でした。
旅人と灯衣親子と彼女とのやりとりの端々から、愛歌さんが、お父様の愛情をたっぷり得て育ってきた素直で人好きする方なんだなあ……と伝わってくるのが、読んでいてまたほっこりできました。
現在のしかめつらしいお父様と、思い出語りの中の年下純情少年・健也さんの人物像にギャップがありすぎて、微笑ましかった(笑)。

『犬の散歩道』
野良犬テリーが、私の中で川原泉さんの『笑う大天使』に出てくるふてぶてしい野犬・ダミアンに脳内変換されてしまう……(笑)。
子どもらしく駄々をこねているけど心優しい灯衣ちゃん、可愛いなあ。
また灯衣ちゃんが陽子先生に少しずつ心をゆるし懐いてきていて、微笑ましく思いました。
名前のセンスがすごいな。

『愛しの麗羅』
雪路と兄・勝彦、妹・麗羅の三人の不器用な兄妹関係が、切なくてでも愛情が確かににじんでいてとても良かったです。
麗羅ちゃんと猫の取り合わせがとても愛らしい。
兄二人とはまた別の賢さと芯の強さを持っている麗羅ちゃんがよいキャラだなと改めて思いました。
雪路の妹へのぶっきらぼうな優しさがとても良いです。ふたりの勝彦へのブラコンっぷりが読んでいて気持ちいい(笑)。
例の手帳の謎も、少しだけ補足されたり。

『花の名前』
旅人と雪路、増子すみれさんの、出会いの物語。
過去エピソードということで、黒い旅人さんが全開……正直殺人犯より誰より旅人さんが怖かったです。さくらちゃんにかつての自分を重ねる旅人さんが痛々しくて切なかった。
増子さんと旅人の緊迫感あるかけひきに、にやにや。

『夏の日』
智子先生に強引に巻き込まれて大学時代のサークルの同級生・牟加田君の田舎に旅行に行くことになり、そこでなぜか彼の恋人役を演じるよう頼まれ……そんな陽子先生の夏休みの物語。
牟加田君の陽子先生への態度は、最初から思わせぶりなものがあった……やっぱり。
まさかあそこでぴったりのタイミングで旅人さんが現れるなんて、思わないですよね!一瞬それこそ旅人さんが超能力をつかったのかとか思ってしまいました。
めちゃくちゃ格好良かったです。そのあと視線をあわせたふたりに拗ねたような態度をとる旅人さんもまたとても可愛かった(笑)。
確かに、ここまではっきりした行動と態度に出られると、旅人さんも陽子先生を憎からず思っていることは、間違いないなと。肝心の陽子先生本人は色々まだわかってないみたいですが(苦笑)。
帰り道の電車の場面も、ときめきました。
マコちゃんへの手紙のスタイルがだんだん変わっていってしまう様が、読んでいて切なかった。
花火と星空の美しさが印象的でした。

そして恒例のラストの引き。
うわあ、セカンドシーズンは時間をかけてゆっくり読み進めていこうと思っていたのに、もう続きが気になって気になって仕方がなくなってきました……。

旅人さんも陽子さんも、みんなみんな、曇りなく幸せになってほしい。


この一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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