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ようこそいらっしゃいました。すてきな書物と美味しい食べ物をどうぞ。

『黒猫の回帰あるいは千夜航路』森 晶麿 




『黒猫』シリーズ第六弾。
パリで大規模な事故が発生したとのニュース、付き人は黒猫の安否を気遣う。
イタリアでふたりの距離は一度縮まったものの、黒猫との距離は、日常に戻れば遠くぎこちないものに。
後輩の戸影が持ち込んだ、ペルシア絨毯で失踪した教授の謎。人形作家と懐かしい人との再会。
美学にからめたふたりの謎解きが再びはじまる——。


『黒猫』シリーズの新刊!
文庫落ちを待たずに単行本を買って読んでいる、私にしてはかなり珍しいシリーズです。
だって待ちきれないんですもの。

幾千の夜を超えての、「回帰」。確かにタイトルの通りの物語であったと、ラストまで読んで感じました。

このシリーズ独特の、少しひんやりして美しくて知的な物語が、たまらないですね~。
一巻目にこれまた「帰ってきた」みたいに連作短編形式で、色々なお話の詰め合わせを楽しむことができたのが、良かったです。
美学講義の部分は相変わらず難しげなのですが、黒猫の語り方が上手なので、読んでいると私もなんとなくわかった気分になり、共に感嘆できるのが、良いですね(笑)。

黒猫のかたわらに付き人がいる、それが日常として、物語が進んでいくかたちに戻ってきたのが、嬉しい。
一巻目のふたりから、遠回りし時間を経て、時に手が離れつつも並んで歩き続け、この関係にようやくたどりついたのだと思うと、言葉にあらわしがたい充足感。

博士研究員になった付き人の成長が、前巻よりもさらにいくつもの場面で実感できて、嬉しくなったり。
前巻においてたしかに縮まった黒猫と付き人の関係。もうお互い意識せずに気楽に付き合えていたころには戻れず、かえってぎこちなく遠ざかったような付き人の心の焦燥感が、読んでいてとてももどかしかったり。

『空とぶ絨毯』
アラビアン・ナイトなモチーフと、男の苦悩に寄り添う妻の愛情と、ペルシア絨毯の世界と、パリの事故のざわざわ感。
色々な要素が調和していて夜の大人のおとぎ話、純愛の物語で、とても私好みでした。
駆けずり回る付き人に奇跡のように届いた声。なんてずるいタイミング!(笑)
黒猫がこんなかたちでするりと以前の日常に戻ってくることになるとは思っていなかったので、とても嬉しかった。
唐草教授がいて、戸影君が付き人のかたわらで頑張っていて、キャンパスには学生や教職員や関わりのある人々がいて。
大学の日常の物語のかたちが、好き。
付き人はさらりと流しているけど、苺オ・レをスプーンでひとくち……甘い!

『独裁とイリュージョン』
ミナモさんとはまたお懐かしい(笑)。彼女の性格と口調で非常勤講師をやっているというのがなんかまたしっくりきます。
ミナモさんが黒猫になぞかけをして、そこからの黒猫の返し、ミナモさんの想いの向かう先、ミナモさんらしい愛の物語でした。
人形師の愛も、からくりが解ければ、純粋でシンプルなもので、ふたりお似合いだと感じました。最後のお互い気持ちを通じ合わせた場面に垣間見えたミナモさんの愛情深さがとても好きでした!
一瞬空気になってしまった戸影君が非常に哀れでした(笑)。でも付き人の近くにずっといたのは彼なんだよな。一緒に雑用している場面の気安いやりとりも好きでした。付き人のメガネはたしかにツボですね……。

『戯曲のない夜の表現技法』
女優の卵の娘と、彼女を見出した劇作家の紳士の物語。ふたりの関係性がとても素敵で切なくて良かったです。
何もかもがかけ離れていて重ならない(と、お互い思い込んでいる)ふたりが、少しずつ惹かれあいときに揺らいでいる様が、もう。
鞍坂氏が最後に残したものに涙。岸田さんもいい仕事してました。
キャンディ売りの娘というそれだけのシチュエーションがとてもはまっていて美味しい。

『笑いのセラピー』
黒猫の姉の冷花さんが語り手の異色作。
小学生の黒猫だ……!理屈っぽくて頭の回転が速すぎるのはやっぱりだけど、今より脇が甘くて姉には逆らえない彼が、非常に新鮮で楽しかったです。
笑いのセラピーと言うタイトルの割にはシビアな事件となりひやりとしましたが、それでも収まるべきところに収まったのは確かみたいで、良かったです。
冷花さん視点から見る付き人の人となりがとても素敵で、やっぱりこのふたり、客観的に見て恋愛に不器用すぎますね……そこが好きです。

『男と箱と最後の晩餐』
オイスタークリームソースのお肉がものすごく!おいしそうです。
そしてそっと幕を下ろした、幸福でせつない恋の物語。
黒猫が食べていたぶどうのパフェがまた美味しそうでした。
ドレスをめぐるやりとりで拗ねる付き人に「君が大人になったのさ」という黒猫の台詞にどきどき。

『涙のアルゴリズム』
新しい音楽の試みに隠された、冷静沈着な荒畑教授の愛情に、私もほろりときました。
弓月氏の態度も種を明かされてしまえば納得のいくもので。不器用な彼を包み込む愛情がまたよい。
おかあさまのことで不安に揺れる付き人、でも黒猫には上手く伝えられなくて。
そんな彼女に帰宅後黒猫が贈った愛情のひとときがとても素敵で心にしみいりました。
ラテスト教授。そうか。寂しくなりました……。
ここでもパフェとバニラアイスのあれこれが甘くてちょっとやられました。なぜ付き人はスルーしているんだ。

最終話~エピローグにかけての、黒猫と付き人のやりとり。
今までのすべてがこのやりとりに持っていかれたかのような読後感!
黒猫と付き人、ようやくここまで。鍵をわたすときの黒猫のまなざしにやられてしまいました。

愛するものと、死と別れと。時間と。
そんなモチーフが多く、黒猫と付き人の関係にもどこかで重なり合うものがあり、構成が心にくく、堪能しました。

そしてこの作品、作者さんと絵師さんによる、クイズ正解者への特典プレゼントがおこなわれていまして。
あまりの甘さと完成度の高いおまけに読んでいてひっくり返りそうになりました。悶絶です。
期限があるようですので、ご希望の方は早めにチェックされると良いと思います!
黒猫の回帰あるいは千夜航路』飼い主様向け特典クイズのお知らせ

この特典の話の感想もちょっと書かせていただいてもよいでしょうか……。
追記に反転文字で書かせていただきます。久しぶりに使ったな。

この甘い二人の断片集を読んで、本編を読み返してこそ、ふたりがふたり、帰ってきたんだなあ。
お互いが、お互いの帰る場所になったんだな。
と、しみじみ胸がいっぱいになったのでした。
あああ、なんか全然上手く書き表せない。
こんなに素敵でロマンティックな小説なのに。

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カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

『黒猫の約束あるいは遡行未来』森 晶麿 

黒猫の約束あるいは遡行未来黒猫の約束あるいは遡行未来
(2014/09/25)
森 晶麿

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『黒猫』シリーズ本編第4弾。
フランス滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの依頼で、イタリアの「遡行する塔」の調査に向かう。
一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先でなぜか突然映画への出演を打診される。
異国の地、離れ離れの状態で、ふたりの新しい物語がはじまる——。

『黒猫』シリーズの本編の続きが出ました!
本当は私、文庫化するまで買うのは見送ろうかなあ……と思っていたのですが、ネット上の皆さまの評判がとても良く気になって気になって、結局単行本で買ってしまったのでした。
丹地陽子さんの表紙イラストが相変わらず秀逸。
すれ違い歩く黒猫と付き人の構図が良いです。付き人の歩く姿勢はリズミカルで見ていて気持ちがいいなあ!鮮やかなレモン色もアクセント。

そして本編もやっぱりとても良かったです♪
静かで上品で少しひんやりしていて理屈っぽくて、読んでいると不思議と心安らぎます。(美学の講義部分は理解するのに頭使いますが……。)
遡行する塔と映画にまつわる謎もロマンティックでひやりとした狂気もはらんでいてすべてふくめて魅力的だったし、異国で偶然再会した黒猫と付き人のふたりの関係にも、進展が!
後半部分のふたりのやりとりにはきゅんきゅんし続けてました。

お話の語り手は、前半パートはラテスト教授の孫娘・マチルドが再び登場で、後半パートは付き人ちゃん。
黒猫とマチルドがイタリアの奇妙な塔に調査に乗り込むところからのスタートです。
相変わらずマチルドは黒猫好きだな……私は付き人派(?)なのでちょっとはらはら。身内思いの良い子なのに、ごめん、マチルド。
相変わらずパフェを愛好している黒猫の姿にくすりと。キャラメルジェラートパフェ?おいしそう……!
ヒヌマ邸の人々の様子はかなり不審な感じで。
そして衝撃の再会の場面。盛り上がります!

そしてその場面にいたるまで少し時間が戻って、付き人視点からの物語。
唐草教授とエドワード教授とのやりとりの中で、付き人の成長を感じました。目を見張るようです。
そして突然映画にスカウトされてしまった付き人の運命やいかに。トッレさんの思惑が分かるようで分からなくてどきどき。
ふたりの再会は、心ふるえました。

マチルドと付き人が直接顔を合わせて、どうなることやら……とちょっとはらはらしていたのですが、あれ、意外と気が合っている(笑)。ふたりで黒猫に挑戦して一緒にやり込められている感じで、ふたり共感めいたものも覚えているようで、なんだか良かったです。マチルドが本当に素直でよいこでした。
マチルド視点から、付き人の魅力がはじめて客観的な言葉で表されて、今までのストーリーを振り返って彼女の人物像にすごく納得できて気持ちが良かったです。

見ていて気持ちのいい人だった。大人しいし、少しおっとりしてもいるけれど、潮風のようなきりりとしたところがある。芯の強さと透明感。 (272頁)

再会したふたりの一夜は、すべてのやりとりが意味をはらんでいて濃密でした。
「タコは泳いでいる間はアボカドのことなんか知りもしないのに」云々のやりとりがおかしくて視点がこのふたりらしくてお気に入り。
戸影君のこと、さりげなく聞き出している黒猫と、まるで無自覚な付き人のかみ合わなさも、おかしかった。彼も彼で頑張ってるようです。それは黒猫もあせるでしょう。
そしてこれまでのシリーズ史上でもっとも糖度の高いやりとり。もどかしさとのバランスがまたこのふたりらしくて、くうっとうなってしまいました。しかし甘いです。最高です。
普段化粧っ気がない付き人だからこその口紅の使われ方がお上手でした。特に翌朝のやりとりが、たまらない。

またそんなそっけない別れ方を……と後ろ髪ひかれる帰り道で、まさかの再会もあり。
遡行する塔に主役としてかかわった人々のドラマは、そう簡単に白黒つけられないけれど、なんだかとても鮮やかなものが私の心の中に残りました。表紙のくっきりしたレモン色とドレスの赤。

そしてエピローグの再びマチルド視点、あああ、そういうことだったのかーー!!心の中で叫びました。
怪しさ全開だったマルタさんたちが、ふふふっと種明かしの茶目っ気ある笑顔を浮かべたような錯覚が。
そしてマチルドの目に映った、黒猫の想いの真実。
黒猫と付き人の約束を想うマチルドが健気でひりひりとせつなかったです。
マチルドにとっては、憧れ半分の恋だったのかもしれないけれど、それでも。

映画をみるときには、日常を置き去りにする、という感覚、よくわかるなあと思いました。
遡行して崩壊する塔、恋人同士のドラマも内包していて、ロマンティックでした。建築学なんて全然専門外ですが、分からないなりに感じるものもありました。

美学ミステリーというか、ほとんどラブロマンスとして楽しんでいる私。
学があり理屈っぽいふたりだからこそ、あれこれ考えすぎて結果遠回りし続けざるをえないのかなあ、とかちょっと考えたり。(『黒猫の薔薇~』の過去の恋人たちもそんな感じだった気がするので……いかん、がんばれ、黒猫!)


昨日記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 森晶麿 

『探偵・日暮旅人の壊れ物/日暮旅人の笑い物』山口幸三郎 

探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の壊れ物 (メディアワークス文庫)
(2013/05/25)
山口幸三郎

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探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の笑い物 (メディアワークス文庫)
(2014/04/25)
山口幸三郎

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『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズン第二弾、第三弾。
日暮旅人が経営する探偵事務所に、旅人の学生時代の先輩だという美しい女性・見上美月が現れる。
美月の親しげな態度に陽子は気が気でなく……(『日暮旅人の壊れ物』)

先週の週末に一気読みしてしまった、セカンドシーズンの続き。現時点での最新刊に追いついてしまいました。
特に最新刊の『日暮旅人の笑い物』は、良かった。シリーズの中で一番のお気に入りになり、読み返してはひたっていました。

まず『日暮旅人の壊れ物』から。
前巻の『宝物』から一転、またダークな面が前面に押し出されてきた巻でした。
旅人さん、復讐心からは解放されても、過酷な運命からはそう簡単には逃れられないんだな……。それゆえ愛する女性とあくまで一線を引いて接する姿勢に、読んでいてせつなくなりました。

『傷の奮え』『憧憬の館』
久々に黒い旅人さん全開。え、えぐい……。
朋美さんと旅人さんの交流、結果的に朋美さんはこれで救われて良かったんでしょうけれど、手段がわりとえげつないです。というかこのご両親いやだな……。旅人さんの過去を思えば必要以上に嫌悪してしまうのも仕方ない気もしますが。
憧憬の館がまた読んでいてぞくぞくしてくるお話でした。最初から救いがなくてあまりにやりきれない。
似た立場でそれでもまっとうな精神を保ち続けている雪路の存在が救いといえば救いかもしれませんが。

『竹馬の友』
他の話とは少し毛色の違う、過去の仲良し少女たちの絆の物語。
回想シーンからはじまる志のさんと緑さんとあやめさんの友人三人組が、本当に仲良しさんでお互いを愛する心がよくつたわってきて、せつなく幸せ感でいっぱいになりました。
女の子同士の友情って確かにこういう一面あります。そういうの、悪くは書かれていないのが、良かった。
灯衣ちゃんとの年の離れた友情もまたよし。

『箱の中』『昔日の嘘』
中学生時代、親戚の家を転々としていた頃の旅人と、旅人の先輩で彼になにかと構っていた美月さん、旅人の先生で従兄にもあたる甲斐先生の物語、そして今に続く物語。
中学生時代、刺々しさ全開の旅人の姿が、現在の穏やかで人当たりのいい(一見)姿を知るものからすると、かなり新鮮というか。
まあ、身に降りかかった悲劇を思うと無理ないとはいえ、辛い子ども時代を過ごしてきたんだなあと思うとやりきれなかったです。大杉君へのアドバイスも凄惨な……。
美月さんと先生に見守られてはじめて探偵役をかってでた姿が、それまでと比べるといきいきちょっと楽しそうだったのは、良かったな。
現在に至っての、先生と旅人さんの「会話」には、胸がいっぱいになりました。
開き直った(その方向を深く考えるとまた辛いですが)旅人さんの、唐突なデートのお誘いに、きゅんきゅんしました!
彼の気持ちは、プロローグのお墓参りの場面で、すでに答えは出ていましたよね。
灯衣ちゃんや雪路よりも先に連れてくる時点で。


次『日暮旅人の笑い物』。
「笑い」……、微笑み、愛情表現のひとつ、愛おしいと思う気持ち。(あとがきより。)素敵なタイトルだな。
表紙のイラスト、これまでのシリーズではお話に出てくるモチーフの組み合わせだったのに、今回はなんか、違うなあ。
旅人さんのファッションはまあ、クリスマスの装いなんですが。花束も完全に様になるきざないい男だな……。
よくよく観察してみると、『幸福の王子』とか?深読みすると旅人さんせつない。
そして鏡の中の女性の影が不気味です。
カラー口絵のおめかしした陽子先生、きれいです!初々しいとまどいの表情もすてき!

陽子先生との関係が激しく揺れ動き、そしてひたひたと迫りくる黒い影が。

『家の灯り』
クリスマスデートのラブラブさが素晴らしかったです。陽子さんもだけど、旅人の方もまた緊張して浮かれているのがはっきりつたわってきて、二重にときめきました。あまりに正統派にクリスマスを満喫するカップルなふたりに、読んでいて罠なんじゃないか……なんて思ってしまったり。うん、ある意味正解でした。
智子先生の立場からみれば、旅人が陽子に気があるのなんてバレバレだったそうで、あ、やっぱり……(笑)。
旅人さんは誰にでもおだやかで優しいって、いや、それは陽子先生限定ですって。読者ならではの視点で陽子先生につっこみを(笑)。
頂点までいったからこそ、告白の後の旅人の宣言が、あまりに辛く悲しくやるせなくって。ずるいです。
日暮家のクリスマスパーティー&バースデーパーティーの場面の楽しい雰囲気も良かったです。
亀吉のエピソードにうるっときてしまいました。だんだんテイちゃんといいコンビになってきました。

『組織の礎』『最良の一日』
新年早々因縁浅からぬテロリスト集団のたくらみに巻き込まれ、あろうことか暗躍している旅人さん。いったい何やってるんだ……。
旅人さんと面識があるばっかりに妙な気遣いをさせられてる増子さんと、彼女さんとのデートをつぶされたという気の毒な同僚さんに同情。
テロに身を投じた若者たちひとりひとりのエピソードが、少しずつ理解できるものもあって、なんだかやりきれないなあと複雑な心境になったり。
そして暴力団の幹部とも普通にやりとりしている旅人さん、本当になにやってるんだ。

『微笑みの代償』
『最良の一日』からつながってくる物語。とても好きなお話です。
図書室にての高校生カップルの微笑ましい純愛と、彼らの関係の終焉に泣きました。頼子さんの座右の銘がよい。
進介と頼子の愛の行方の物語と同時進行で、旅人と陽子のふたりの関係の決着も、ふたたび。
自暴自棄になっていた旅人さんに必死にくらいついて笑顔の仮面を引っぺがして本音を引きずり出して抱きしめた陽子さん、本当によくやった!旅人のそばにはなぜ陽子さんでなければならなかったのか、納得でした。
黄昏時に近くなった郊外の地での夢のような風景が思い浮かんだラストでした。

『魔の手』
旅人がついに目の手術の決意を。陽子さん、本当にえらい!(涙)
すっかり甘えん坊になった旅人と、母親のような愛情で彼をくるみこむ陽子のふたりの姿が、それまでとギャップがありすぎて、新鮮で、かなりときめきました。旅人さんかわいいな……。腹をくくった陽子さんの名前通りお日様のような力強い明るさもよいです。
反面、灯衣ちゃんの態度も、それはそれで無理ないです。この子、陽子先生のこと、それでも嫌いじゃないんだよなあ。雪路が理解者であってくれてよかった。
雪路の方にも恋愛っぽい動きがあり、このあたりだけなら、時がたてば、解決することであったでしょうに。
つかの間のこのメンバーの幸福を、ことごとく壊していってしまったラスト一連が、ほんっとうにもう、やりきれない。
意外な人の豹変に、ついていけてません。なんで?彼のことを気遣っていたのは、どこまで嘘だったの?
そしてストーカーの正体、読み返しても分からないです……しくしく。
復讐といっても、これまでの旅人さんがやってきたことを思い返すと、恨んでいそうな人いっぱいいるから絞り込めそうな気がしませんし……。
旅人さん、わかってはいたけれど、本当に黒いヒーローだなあ。苦笑い。
いつの間にか慣れちゃいましたが。この黒さがスパイスできいていてこその、日暮旅人シリーズです。

うわーん、最終巻は、本当にいつ出るんでしょう?待てません。
ハッピーエンドを切望しています。

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タグ: 山口幸三郎 

『探偵・日暮旅人の宝物』山口 幸三郎 

探偵・日暮旅人の宝物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の宝物 (メディアワークス文庫)
(2012/08/25)
山口 幸三郎

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『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズン第一弾。
一連の事件が解決した後も、陽子は旅人と灯衣親子の世話を焼くため、相変わらず探偵事務所に通う日々を送っている。
ある日、大学時代の友人の地元に出かけることになった陽子は、なぜか彼の恋人のふりをしてほしいと頼まれ——?(『夏の日』)
雪路と兄妹の物語『愛しの麗羅』、増子さんとの出会いの物語『花の名前』等、全五編収録。

先週の週末に四冊一気読みした『日暮旅人』シリーズ、セカンドシーズンを読みたくて読みたくてうずうずしていました。ようやく入手してきて一冊読了!
今回の表紙もとてもすてき。旅人さんと陽子先生の背中合わせの構図がふたりともおだやかに幸せそうで眺めているこちらも幸せです。花火と星空もきれいだなあ。
カラー口絵の花嫁さんとウサギさんもきれいだったし、裏側のおかっぱお着物姿の麗羅ちゃんが、もうそれはそれは可愛くてじたばたしました(笑)。

ファーストシーズンの脇役がメインのお話だったり、これまでの出来事の補足的なお話だったり。
いやあ、楽しかったです!
今回は特に大きな事件で引っ張られることもなく各話ほぼ独立したスタイルだったのですが、やっぱり途中で読むのをどうしてもやめられずに一気読みしてしまったのでした。

旅人さんが「復讐」という人生の重い枷からようやく解き放たれて、少しずつ普通の人間らしくなっていく様に、読んでいてほっとできました。
ダークな要素も控えめで、心ぬくもるおだやかなお話が多くて、読んでいて心にも優しかったです。
主に最終話、陽子先生と旅人さんのもどかしい恋愛模様もたまりませんでした。きゅんきゅん!

『六月の花嫁』
ゲストキャラ・お嫁さんになったばかりの愛歌さんが、男手ひとつで自分を育て上げてきてくれた父親の軌跡をたどっていく物語。
愛歌さんとお父様の関係がとても心ぬくもるもので、お父様がかつてこっそり仕掛けていたあれこれがとてもロマンティックで愛情にあふれていて、うん、良いお話でした。
旅人と灯衣親子と彼女とのやりとりの端々から、愛歌さんが、お父様の愛情をたっぷり得て育ってきた素直で人好きする方なんだなあ……と伝わってくるのが、読んでいてまたほっこりできました。
現在のしかめつらしいお父様と、思い出語りの中の年下純情少年・健也さんの人物像にギャップがありすぎて、微笑ましかった(笑)。

『犬の散歩道』
野良犬テリーが、私の中で川原泉さんの『笑う大天使』に出てくるふてぶてしい野犬・ダミアンに脳内変換されてしまう……(笑)。
子どもらしく駄々をこねているけど心優しい灯衣ちゃん、可愛いなあ。
また灯衣ちゃんが陽子先生に少しずつ心をゆるし懐いてきていて、微笑ましく思いました。
名前のセンスがすごいな。

『愛しの麗羅』
雪路と兄・勝彦、妹・麗羅の三人の不器用な兄妹関係が、切なくてでも愛情が確かににじんでいてとても良かったです。
麗羅ちゃんと猫の取り合わせがとても愛らしい。
兄二人とはまた別の賢さと芯の強さを持っている麗羅ちゃんがよいキャラだなと改めて思いました。
雪路の妹へのぶっきらぼうな優しさがとても良いです。ふたりの勝彦へのブラコンっぷりが読んでいて気持ちいい(笑)。
例の手帳の謎も、少しだけ補足されたり。

『花の名前』
旅人と雪路、増子すみれさんの、出会いの物語。
過去エピソードということで、黒い旅人さんが全開……正直殺人犯より誰より旅人さんが怖かったです。さくらちゃんにかつての自分を重ねる旅人さんが痛々しくて切なかった。
増子さんと旅人の緊迫感あるかけひきに、にやにや。

『夏の日』
智子先生に強引に巻き込まれて大学時代のサークルの同級生・牟加田君の田舎に旅行に行くことになり、そこでなぜか彼の恋人役を演じるよう頼まれ……そんな陽子先生の夏休みの物語。
牟加田君の陽子先生への態度は、最初から思わせぶりなものがあった……やっぱり。
まさかあそこでぴったりのタイミングで旅人さんが現れるなんて、思わないですよね!一瞬それこそ旅人さんが超能力をつかったのかとか思ってしまいました。
めちゃくちゃ格好良かったです。そのあと視線をあわせたふたりに拗ねたような態度をとる旅人さんもまたとても可愛かった(笑)。
確かに、ここまではっきりした行動と態度に出られると、旅人さんも陽子先生を憎からず思っていることは、間違いないなと。肝心の陽子先生本人は色々まだわかってないみたいですが(苦笑)。
帰り道の電車の場面も、ときめきました。
マコちゃんへの手紙のスタイルがだんだん変わっていってしまう様が、読んでいて切なかった。
花火と星空の美しさが印象的でした。

そして恒例のラストの引き。
うわあ、セカンドシーズンは時間をかけてゆっくり読み進めていこうと思っていたのに、もう続きが気になって気になって仕方がなくなってきました……。

旅人さんも陽子さんも、みんなみんな、曇りなく幸せになってほしい。


この一週間それぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

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『探偵・日暮旅人の探し物』シリーズ 山口 幸三郎 

探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)
(2010/09/25)
山口 幸三郎

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保育士の山本陽子は、保護者の帰りの遅い百代灯衣の面倒を見たことから、名字の違う不思議な父娘と巡り合う。
父親の日暮旅人は奇妙な能力の持ち主で、探し物専門の探偵事務所を営んでいた。
澄んだ哀しい目をした青年・旅人と、人形のように美しく大人びた娘・灯衣。
彼らに興味を惹かれた陽子は事務所をたびたび訪れるようになり、旅人の目に見えないものが視える能力と、彼にかかわる世界に足を踏み入れることに——。

それは、目には決して見えない「愛」を探し求める探偵・日暮旅人の物語。

『日暮旅人』シリーズ、ファーストシーズン全4巻。
この三連休で読み始めて一巻目ではまり込み、気がついたら四巻目まで全部読んじゃってました。
続き物の本をこんなに一気読みするのひさしぶりだな……すごく充実したときをすごせました。どっぷりひたってしまいました。

ふとしたことからこのシリーズの表紙を目にして、表紙イラストの旅人さんに一目惚れしたのが、読みはじめたきっかけ。
この表紙で美しく洗練されたひとつの世界として存在していて、雰囲気がすごくよい。
特に一冊目の『探し物』と四冊目の『贈り物』が良いですね。
旅人さんの身ごなしが端正で、とくに瞳が秀逸だと思うのです。
灯衣ちゃんの赤いワンピース姿も、可愛いっ!

お話も良かったです。
視覚以外の、音、におい、味、感触、重さ、痛み、それらの感覚がすべて失われていて、その代わりにそのすべてを「視覚」としてとらえる、人には見えない感情も視える、かなり特殊な能力の持ち主・旅人さん。
優しくおだやかでお人好しな旅人さんの特殊能力を生かして、人々の悩み事を解決していくほのぼのミステリー……と最初は思っていたのですが、確かにそれもこの物語の一面だったのですが、全然違った。
読んでいくごとに、旅人さんがふつうの感覚を失った過去にまつわるあれこれは、悲惨で重苦しくて。修羅を潜り抜けてきた旅人さんも、ときどきぞっとするほど黒くて。
それでも彼の近くの人々、血のつながりはなくても「家族」といって差し支えない皆の存在が、闇にかかわる旅人の身を真摯に案じる彼らの存在が、あたたかくて優しくて、きゅっとしました。

黒い面も持ちつつも、困っている人は放っておけない優しい旅人さんが、危ういバランスも相まって、本当に魅力的なんですよね。
あれです。私、澄んだ哀しい瞳の持ち主に弱いんです。きっと。『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』のクリスとか。

お話のヒロイン・若き保育士の陽子さんも、明るく良い意味で普通な女の人で、読んでいくごとに好きでした。
旅人さんと陽子さんの間のもどかしい関係も、読みどころでした。
周りが勘ぐるほど恋愛モードにならない、旅人さんと灯衣ちゃん親子をまっさらな感情で大切に思う陽子さんが好印象。かえって応援したくなりますよね!(笑)

たいへんなおませさんですがパパ大好きで年相応の可愛い面もちゃんと持ってる灯衣ちゃんや、一見ガラが悪いチンピラさんですが旅人さんのことを心身共に案じる頼れる年下パートナー・雪路さん、肝がすわったドクターに増子さんに、皆すごく良かったです!
雪路さんと旅人さんの関係もなんか良い感じ。
パパを取られる!ときゃんきゃん騒いでいる割に、陽子先生に素直じゃないけどなんだかんだなついている灯衣ちゃんも、微笑ましく可愛いのです。

一作目の『日暮旅人の探し物』
陽子先生の探し物とかつて仲良しだったお友達。ここだけでもしみじみした良いお話でしたが、後々ここまでかかわってくるとは。
『地中の詩』の旅人の真意が見えずにちょっとぞっとしました。
一番初めの椅子の話も良かったです。
この巻は思えばまだほのぼの平和でした。ラストの不穏な引き以外は。

二作目『日暮旅人の失くし物』

探偵・日暮旅人の失くし物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の失くし物 (メディアワークス文庫)
(2011/01/25)
山口 幸三郎

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読み終えてから改めて表紙とカラー口絵をまじまじ見ていると、さりげなくグロテスク……。
最初の『老舗の味』があたたかくまろやかな味わいがあって良かったです。おいちゃん、おじさんと甥っ子の絆がほろ苦くて優しい。ハヤシライスを食べたくなりました。
『死体の行方』は旅人さんの黒さにぞぞっ。
『母の顔』、テイちゃんの年相応の顔が見られてほっとしつつも切ない気持ちになりました。
ミアちゃんのお母さんは、母親としてはどうよという感じでしたが、彼女の切実な気持ちもまたわかって、最後に歩み寄れて、本当に良かったです。

三作目『日暮旅人の忘れ物』

探偵・日暮旅人の忘れ物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の忘れ物 (メディアワークス文庫)
(2011/07/23)
山口 幸三郎

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『隣の静寂』と『森の調べ』は、続き物の短編で、どちらもしみじみとても素敵な愛の物語でした。
ストリートミュージシャンの哲と、目立たないOL静香さんのふたりの関係が、読んでいてとても良かったです。幸薄い静香さんの哲への健気な思いにほろりときました。過ちをおかしてやさぐれていた哲を軌道修正させた旅人さん、ナイス。お話の最後の静香さんの幸せそうな様子に心からほっとしました。
『爆弾魔の憂鬱』テロリスト爆弾魔よりもよほど真黒な旅人さんが怖い怖い。テイちゃんもただものじゃないな……。
『雪の道』雪路さんの過去話。雪路の兄の話が切なくて。本当にいいやつだな。雪路。「お兄様」呼びにちょっとびっくり(笑)。
『夢のぬくもり』前の巻とあわせて、旅人さんの過去が悲惨で澄み切った復讐心がしみじみせまってきます。やりきれない。陽子先生、頑張りました。

四巻目『日暮旅人の贈り物』

探偵・日暮旅人の贈り物 (メディアワークス文庫)探偵・日暮旅人の贈り物 (メディアワークス文庫)
(2011/10/25)
山口 幸三郎

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おんなのうででさしのべられた薔薇の花の構図がうつくしい。
最初から最後まで緊迫感漂う展開で一気読みしてしまいました。
かつての誘拐犯のひとりの白石の手で、陽子先生の身にも危険が。
善良な日暮家の人々が過去に巻き込まれた闇は、あまりに暗くて残酷で、読んでいて辛かったです。
山田さんと日暮父の友情は、なんか良かったんですけどねえ。お互い相容れないものを抱えつつ嫌いになれないあたりが、なんか!(笑)
山田さんも白石さんも、「父親」として見せる姿はごくふつうの人間の姿で、そこに救いがあったのが、良かった。
これまでさんざん黒い面を見せてきつつも、最後の最後で救えないお人好しさを発揮する旅人さん、安心しつつもえええ、どうなっちゃうのー!!という場面での、あの電話。とてもとても素敵でした。
ついに、「愛」に触れることができた旅人さん。彼の涙に、私の目もじわっとうるみました。
陽子先生の台詞の続きが気になります。
『愛の旅』後日談的に語られる、灯衣ちゃんの母親の事情。
まさかこんな風につながってくるとは……。絶句してしまいました。
灯衣ちゃんのお父さんが本当によいひとで、愛されて生まれてきた子どもで、そこはとてもほっとできました。
そして旅人さんの目について、意味深な会話が。
いわれてみれば。すごく不安になってきました。
「愛がある限り、この目は世界を映し出しますから」……それが完全に真実なら、確かに、大丈夫なのでしょうが。

たぶん、陽子先生が思っている以上に、旅人さんにとって陽子先生は、唯一無二の愛する人で。
(世間一般の恋愛と完全に同じものではないかもしれませんが)
二巻目のラストで、陽子さんの決意への答えに、娘の灯衣ちゃんを持ち出したのも、確信犯的なものじゃないか?と勘ぐってしまいます(笑)。だってやっぱりロマンスはほしいですもん、私的に。

この四冊を通して、ずっと旅人さんが探してきた愛、抽象的なモチーフは、陽子さん自身、とも取れる。
おひさまみたいに、明るくて影がなくておせっかいで愛情深い、素敵な女性。
暗い因縁と唯一関わりのない存在である陽子先生を大切に思う気持ち、それだけで、旅人さんには救いになっているんだろうなあ。

旅人さんや灯衣ちゃんや、固有名詞も美しく物語の雰囲気にあっています。
あと、冬の雪の白や透明感が似合うお話だな、と。

セカンドシーズンも三冊出ているみたいなので、読みます!!


ここ一週間くらいにそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

カテゴリ: ミステリー・日常の謎系

タグ: 山口幸三郎 

『黒猫の刹那あるいは卒論指導』森 晶麿 

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)
(2013/11/07)
森晶麿

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『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の三年前。
大学の美学科に在籍する「私」は先の見えない進路と卒業論文に悩む日々。
そんな折、唐草教授のゼミにて、いつも黒いスーツ、無愛想だが恐ろしく頭の切れる男子学生と出会う。
ある事件に巻き込まれたのを最初のきっかけに、彼と話をするようになり、美学とポオに関する「卒論指導」を受けることになるのだが。


少し前にシリーズまとめ読みしてすっかりはまりこんだ『黒猫』シリーズ、ちょうどいいタイミングで短編集が出ました!
しかも黒猫と付き人の過去、出会いから距離を縮めていくまでの物語って、まさに読みたかった部分そのものじゃありませんか。これはもう、買うしかないでしょう(笑)。
最初から文庫版ということで、手に取りやすくて嬉しい。

丹地陽子さんのステキな表紙も健在でとっても嬉しいです!
黒猫も付き人も顔立ちなど現在よりやや幼くて、面映ゆい気持ちになりました。
現在に比べるとスーツを完全には着こなしきれてない黒猫が可愛い。
あと付き人の髪も、本文に忠実に描かれていて、読み終えた後見返して、思わずにまにま(笑)。


さて本の中身は、黒猫と付き人の出会いから時系列順に話が進んでいく連作短編形式。ちょうど一巻目と構成が似ていました。
プロローグとエピローグのみが現在(というか黒猫と付き人、言葉通りの関係であった時期)で、エピソードのからみ加減がまた絶妙でした。
美学的要素は、相変わらず初読では正直何のことやら……みたいな部分も多かったのですが、まあ適当に斜め読みしつつ(笑)。やはり一話一話読んだ後の余韻が美しくほんのりしていて、読み進めていくごとに、うっとりでした。ひんやりしているんだけど優しいこの感じが、いいなあ、もう!
もう私はほとんどラブロマンスとして読んでいます(笑)。

ひとまず一話ごとに感想を書いてみます。
『数寄のフモール』
ふたりがはじめて言葉を交わした、とある恋愛騒動に巻き込まれる物語。
杏奈さんがミナモさんとはまた違った風に独特に魅力的な娘さんでした。彼女の想い人は、そちらでしたか……。静かな激しさにぞわっときました。相手の返しがエレガント。
とある脇役の方の意外な(?)秘密も明らかに。

『水と船の戯れ』

「君は、自分の研究対象に愛される自信があるか?」(83頁)

今回の短編集の中でいちばんのお気に入りがこのお話。やっぱり私、シリアスな事件がからんでくるお話よりは、こういう純粋に美学素材メインの謎解きのお話の方が好きだな。
佳代さんと千代さんの付き人の即興の物語、黒猫の解釈で、全然違うように活き活きと描写がうかんできたのが、読んでいてぱあっと鮮やかで、感心してしまいました。
付き人のこと、ある部分では本人以上に深く理解していて本人に的確なアドバイスを与えてしまえるくらいなのに、ほんの一部、付き人の初恋の相手、まったく誤解していてあらぬ想像をしている黒猫が、なんだかちょっとかわいい。(ちなみに私も一読目では誤解していました。)
でも恋のライバルがこっちだと、黒猫は、ある意味とっても苦労しそう……。付き人って彼への愛に関しては、シリーズ通して全然ゆるがないんですもん。
ここの部分だけは、付き人が自分の心のうちだけで、黒猫にささやかに勝ち誇って、ふふふと笑っているみたい。
浅草、お江戸な雰囲気も、このシリーズにしては新鮮でよかったです。
あとは、ぜんざい抹茶パフェに思わず吹き出してしまいました。やっぱり!
「抹茶は日本のエスプレッソです」と返す付き人も良かったです。

『複製は赤く色づく』
鶏も美学講義の対象になるのか……。
まだ付き人の呼び方が「黒猫クン」でなかなか呼び捨てできない微妙な時期で距離感の違いが微笑ましい。
大人の人たちのそれぞれの恋心が印象的でした。
あかね色が美しい。

『追憶と追尾』
付き人が祖母に会いに行くことからはじまる奇妙な物語。
うーん、やっぱり付き人は美人さんなんだと思いました(笑)。
そんな簡単によく知らないひとについていってもいいのかー、と私でも思いましたが、案の定。
助けに来た黒猫がすごく有能で格好いいなと思いました。そして確かに、普通はなかなかそこまでしないですよね……それだけ彼は付き人のことを日頃から気にかけているということですよね。
それにしても普通に黒猫の家にいって普通に食事している付き人ちゃんがこの時点で健在……。たけのこの煮物の場面は、読んでいるこちらがちょっと恥ずかしかったですよ。
ラストの黒猫の洗練しきれていない優しさに、きゅんときました。

『象られた心臓』
さりげなくバスローブ姿をさらしている付き人ちゃんと「バスローブが似合う」とかなんとか言ってる黒猫の距離が……絶妙でたまらない。
事件はちょっと毒が入ってましたが、最後のあたりのふたりの夜の会話の静かな甘さで上手いこと中和されてました。

『最後の一壜』
とある女性をめぐって男性二人、少々不穏な感じになりつつも、最後には友情が残った、というのが、いいな。
「もう少しだけ歩いて帰ろうか、モントレゾール君」なんて、どこまで深読みしていいのやら、黒猫くん(笑)。

『プロローグ&エピローグ』
三年前から黒猫も付き人も成長したと思いましたが、お互いの距離感としては、そう進んではいないかな……まあやっぱりこのくらいの距離感の時期がいい、というのも、分かるんですが!(それでも進展がほしいと思ってしまうのが正直なところです……。)
付き人の振り袖姿をかわいいなあと思っているのであろう黒猫の内心を深読みしては微笑ましくなったり。
「一万分の一くらいは今日の内に叶えておかないと、君の願い全部は年内に成就しそうにないからね」という黒猫の台詞がどういう意味なのか、ずっと考えているんですけれど、どうなんでしょう?

巻末のインタビュー、「好ましい距離にあれば、それが恋なんじゃないでしょうか」(316頁)の一文が、心に残りました。
そしてこのシリーズ、まだ続きが読めるようで、嬉しいなあ!

できれば卒業論文を書いていた学生時代に読めるとよかったのに……とかちょっと残念に思いつつ、ロマンティックな読書のひとときを過ごせて、とても満足でした。


ここ一週間くらいの間にそれぞれの記事に拍手くださった方々、どうもありがとうございました♪

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